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乱立する「漫画賞」は“悪”なのか? 権威や大手だけの“狭き門”は今…電子コミックの浸透で広がる門戸

新人発掘でも多様な応募スタイルに、“登竜門”は大手だけではない

LINEマンガ『LINEマンガ インディーズ大賞』

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  • 第1回で佳作を受賞した『ル・ナフィア (Le Nymph?a)』

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  • トライアル連載から生まれた人気作『先輩はおとこのこ』

    トライアル連載から生まれた人気作『先輩はおとこのこ』

 一方で、功労賞やネクストブレイク賞以外の、新人発掘の面ではどうだろうか。

 新人賞には、『手塚賞』、『赤塚賞』、『JUMP新世界漫画賞』、『小学館新人コミック大賞』、『週刊少年マガジン新人漫画賞』、『なかよし新人まんが賞』、『角川マンガ新人大賞』など、出版社や編集部によるものが多数存在する。だが、前述の功労賞と同様に、従来はこれら大手の賞に漏れてしまうと、デビューに時間がかかる、インディーズでコツコツ活動する…などしか選択肢はなかった。

 だが、電子コミックプラットフォームやアプリが新人賞を創設している現在では、門戸はより広がっている。これらの賞では作品応募の自由度は増し、横読みのほかWEBTOON形式も対象になるなど、応募スタイルも多様化の一途。この10年の電子コミック、アプリの発展がより広く、新たな才能を発掘する仕掛けになっている。

 電子コミックサービス「LINEマンガ」が主催する『LINEマンガ インディーズ大賞』(外部サイト)は、自由な作品発表の場「LINEマンガ インディーズ」上で、プロ・アマ、ジャンル、過去作・新規作を問わない、1ページから応募可能なコンテスト。名だたる出版社やコミック誌編集部がすでに多くの新人賞を設けているなか、その名のとおり「完成度や高い技術という面よりも、多少粗削りでも“面白い”と感じられる作品であれば選出するように意識しています」(LINEマンガ 取締役COO 森 啓さん)とのこと。「一般的に新人漫画賞というものは、“連載への最初の入口(そこから時間をかけて連載を目指す)”タイプの賞と、“高い賞金額や主催企業のブランド力をもって即戦力を集める”タイプの2つの形が多いのではないかと感じていました。本賞は“連載への最初の入口”と“即戦力を集める”という間の、今までになかったポジションをイメージしています」

 こうした性質の賞であるだけに、従来の新人賞では拾いきれなかった才能を発掘することも期待されている。『LINEマンガ インディーズ大賞』として開催されたのはまだ1度だが、インディーズ作品投稿から選出されて実施されるトライアル連載では、多数の人気作を輩出。国内のみならず海外でも人気となり、アニメ化も発表された『先輩はおとこのこ』などがそれだ。

 「トライアル連載では、一般的な企画会議では通りにくい性質の作品でも可能性を感じれば連載しますし、その中からいくつも人気作が出ています。『LINEマンガ インディーズ大賞』で“大賞は即、トライアル連載”という形で募集することにしたのも、“この作品の反応を読者に問うてみたい”という作品を選びやすくするため。型にはまったものであってもそうでなくても、読んで面白い、と思えるものを選ぶつもりで読ませていただいています。この仕組みを生かし、多様な才能と出会えることを楽しみにしています。現在は集英社さんと一緒に実施する『第4回 集英社少女・女性マンガグランプリ』 という賞の募集も始まっているので、もっと多くの才能と出会えるものにしていきたいです」

ユニークな漫画賞も続々、そこから新たな注目作が見つかることも

ブックライブ『マガデミー賞』

ブックライブ『マガデミー賞』

ブックライブ 話題作の試し読みはこちら!!(外部サイト)
  • 『マガデミー賞』

    『マガデミー賞2023』開催決定

 また、差別化という意味では、同じ漫画賞ながら非常にユニークなものも出てきている。それが、総合電子書籍ストア「ブックライブ」による『マガデミー賞』(外部サイト)だ。これは作品だけではなく、マンガのキャラクターを称えるアワード。「勇気や感動をくれるマンガのキャラクターに感謝の気持ちを贈りたい」と、2021年に創設された。「近年、”推し活”の高まりに見られるように、漫画のキャラクターから日々の活力をもらっている人がたくさんいることがわかりました。キャラクターへの感謝を伝える機会を定常的に設けることで、従来とは違った視点で漫画の面白さを広げていきたい、という思いから“キャラクターを讃える賞”としました」(BookLive マーケティング部 堰合さん)

 ノミネートキャラクターは一般推薦で決定するが、推薦者からはリアルで熱いコメントも寄せられている。「それだけ熱量があるのは、相手が漫画のキャラクターとはいえ、“人”を讃える賞だからこそ」。また、だからこそ「その年に支持される、求められるキャラクター像の傾向が少しずつ違ってくるという気づきがあった」と明かす。例えば、昨年は主演男優賞に『BLUE GIANT EXPLORER』宮本大、主演女優賞に『メダリスト』結束いのりが選ばれ、「必ずしも才能やカリスマ性があったりするわけではない、でもその一生懸命な姿に心打たれ、応援したい、報われてほしいという温かく強い気持ちが推薦から感じられました」。一方で、コロナの渦中に開催した一昨年は、主演男優賞を『ミステリと言う勿れ』の久能整、主演女優賞を『暁のヨナ』のヨナが受賞。「“新しい気づきを与えてくれる”存在や、“覚悟があり、ついていきたいと思わせてくれる”キャラクターが求められていると思いました。今年のノミネート発表は2月の予定ですが、過去2回よりも“地道に頑張る”タイプの、より共感度の高いキャラクターに注目が集まっていると感じています」

 このように、一味違った性質を持つマガデミー賞だが、乱立とも言える漫画賞についても「それだけ作品数が増え、読む人の好みも多様化しているということ」と好意的に見ている。「どの漫画賞も様々な切り口やコンセプトで、それぞれ思いを込めて運営されています。漫画賞をきっかけに作品に興味を持つ人が増えたり、時には作家さんのモチベーションになったりしていると思うので、マガデミー賞に限らず、各賞をきっかけに一人でも多く漫画を読む人、漫画が好きな人が増えたら嬉しいです」

 ほかにも、『ピッコマAWARD』は「売上」「読者数」「いいね数」を主軸に受賞作品を選出。掲載作品数に制限がないからこそ、いま流行の作品と共に旧作『静かなるドン』が選出(2022年版)されるなど、アプリならではの面白い展開を見せている。

 このように、漫画が多様化するなかで、同じく評価の基準と幅を拡大している漫画賞。乱立して差別化が難しいように見えて、実はそれが読者が求めるネクストブレイク発見や新人発掘に繋がり、ひいては漫画界全体の発展に繋がっているのではないか。さまざまなジャンルの漫画賞受賞作を眺めて、未知の作品との遭遇を楽しみたい。


■コミックシーモア『電子コミック大賞』(外部サイト) 
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■ブックライブ『マガデミー賞』(外部サイト) 

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