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『ダブルソフト』発売35周年で初のリニューアル、“食パン購買層の高齢化”に挑む国内最大手メーカーの矜持

 耳まで柔らかい斬新な商品として、平成元年に大ヒットを呼んだ『ダブルソフト』。35周年を迎える今年、発売以来初となる大々的なリニューアルを行った。山崎製パンの調査によれば、同商品のブランド認知度は9割を超えるが、30代以下で購入したことがある人は2割以下だった。食パン購買層の高齢化が進む中、『ロイヤルブレッド』『超芳醇』『新食感宣言 ルヴァン』『ふんわり食パン』しかり、ヤマザキが食パンに注力し続ける理由を聞いた。

「関東は6枚切り、関西は5枚切り」食パンのニーズ地域差超え、全国的に大ヒット

 1989年(平成元年)発売の『ダブルソフト』は、今もなお、ヤマザキの看板商品の1つだ。最大の特徴は、その名の通り、柔らかさ。食パンの唯一とも言える課題を克服する商品として誕生した。

「当時、食パンが敬遠された最大の理由は、“耳の硬さ”でした。召し上がる際にトーストする方がほとんどだと思いますが、耳の香ばしさを感じられる反面、どうしても硬くて食べにくい。特にお子さんはパンの耳を食べ残してしまうことが多く、耳まで柔らかい食パンを作れないかという思いが開発のきっかけでした」(山崎製パン・マーケティング部・早川史朗さん)

 ただ、柔らかいだけでは食べ応えがなくなり、高さが出ずにあまり膨らまないなど、開発には骨を折った。幾度も試作を重ね、独自の製法と発酵技術により、耳までソフトで、2つに分けられて食べやすく、厚みがあるのに軽く食べられるという3つの特徴を持ち合わせた画期的な食パンが完成した。
 発売からすぐにセンセーショナルな商品として大きな反響を呼び、『平成元年度・食品ヒット大賞』にも選ばれた。その後、様々なメーカーから類似品が発売されたが、追随を許さず、オンリーワンの商品として今もなお、ロングセラーを誇っている。

「この厚さで、耳までこの柔らかさを出すことは、技術的に難しい。強さもありながらもふんわりしている生地で、お子様でも簡単にちぎって自分で召し上がることができます。咀嚼力の弱い方でも容易に噛めるため、介護食としてUDF(ユニバーサルデザインフード)にも認定されています」(山崎製パン・パン第一部・原田昌治さん)

 実は食パンは、地域によって厚さの好みが分かれており、関東では1斤6枚切りが主流だが、関西では5枚切りが人気の傾向にある。そんな中、ダブルソフトの厚さは、「4枚切り」に相当し、需要の地域差はないという。

「発売当初から厚さは変わっていません。この厚みだからこそ、『ダブルソフト』の味わい、食べごたえや食感も表現できると考えています。4枚切りメインで食べている地域はあまりないようですが、『ダブルソフト』は幅広い地域に受け入れられました」(早川さん)

購買層の大半が50代以上… 若者離れが進むも、「事業の根幹は食パン」の理由とは

 厚さと柔らかさを兼ね備えた唯一無二の食パンとして、独自の立ち位置を確立したがその後、パンだけでなく、主食の選択肢は年々拡大。現在の『ダブルソフト』の購買層は、当初からのユーザーである50代以上が大半だ。

「弊社の調査では、『ダブルソフト』のブランド認知度は全体で9割を超えるものの、実際に購入したことがある方は、50歳以上では55%ですが、30代以下になるとわずか17%でした。この傾向は、食パン全般に言えることです。若い世代は特に“即食性”や“簡便性”が重視されるようになり、菓子パンの売上は年々高まっていますが、食パンは下がらずとも上がらない状況です」(早川さん)
 こうした状況を受け、『ダブルソフト』は新たに若年層の支持獲得を目指し、1月1日、発売以来初の大々的なリニューアルを実施。これまでも時代の変化に合わせて、食感や風味など細かな改良は重ねてきたが、今回は柔らかさ、歯切れの良さ、くちどけなどを全てデータ化し、緻密に研究した上で、最高品質を極めたという。

「今回は、さらにしっとりしてふわふわに、歯切れ良く、生でもトーストでも美味しく召し上がれるよう、生地改良を行いました。最終的には、100人以上の方々に試食していただき、パネルテストを行いながら開発を進めてきました」(原田さん)
 また、新たに『2枚入り』の食べ切りタイプも登場。単価が落ちるのはメーカーとしては避けたい所だろうが、単身世帯の増加や、高齢者のニーズに合わせたラインナップだ。食パン購買層の高齢化が進む中、ヤマザキがここまで注力する背景には、国内最大手パンメーカーとしての矜持があった。

「パンメーカーにとって、やはり食パンがメインのブランドであり、食パンを食べておいしかったら、そこの菓子パンも買ってみようという流れを作る商品なんですよね。素の状態のおいしさでの勝負となる分、食パンにこそメーカーとしての競争がある。シンプルだからこそ、最も手腕が求められますから。これまでも、食パンを通じて、ヤマザキの信頼を得られてきた面があると思いますし、これからも事業の根幹であることは変わりません」(早川さん)
 1990年代後半から食パン戦国時代に入り、各メーカーから続々と新商品が発売された。2000年代に入ると、全粒粉、グルテンフリー、米粉パン、高級食パンなど、ユーザー層の幅広いパン市場は目まぐるしくトレンドが変化してきた。年々、パンの消費量が増加傾向にある中、早川さんは、食育の観点でも、若い世代に食パンを訴求しようと努めている。

「日本国内の購買金額でいうと、パンが米を上回り、市場自体は活性化していると思います。簡便性という意味では菓子パンの消費が増えていますが、菓子パンだけではどうしても栄養が偏ってしまう。食パンであれば、お米ほど手がかからずに、野菜など、他の食材と組み合わせて栄養バランスを考慮した食事が作れます。ヤマザキでは20年ほど食育にも取り組んでいますが、ぜひ若い世代の方々にも、ぜひ食パンを食事に取り入れてほしいと考えています」(早川さん)

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