ORICON NEWS
日清『カレーメシ』試行錯誤で10周年、「水を入れてレンチン」→「お湯を注ぐ」変更で売上2倍に
日清の鬼門だった「カップライス」…発売から半年で改名、ターゲット絞り売上アップ
「発売前の試食会や発表会では好評でしたが、発売から1ヵ月を過ぎた頃に注文が激減しました。スーパーでは、一度買い物かごに入れた『カップライス』を棚に戻して、インスタントラーメンを購入する主婦が多かったのです。その理由を尋ねると、“ご飯なら家で炊けるけど、ラーメンは自分で作れないから”との答えが。検討を重ねた結果、『カップライス』の事業から一時撤退することになりました。この時から、ライス商品での成功は当社の悲願となりました」(日清食品・中村圭佑さん/以下同)
「お米とルゥと具材が直接カップに入っているので、水を入れてレンジでチンするだけで、手軽に“煮込んだカレー”が楽しめると話題になり、売れ行きも決して悪くありませんでした。しかし、一部の消費者から『カレーとライスが最初から混ざっているものはカレーライスとは言えない』との意見が寄せられました。味に対する評価は高かったので、商品のコンセプトや特徴をどう見せていくかというマーケティング的な課題を解決する必要がありました」
これを受け、発売からわずか半年後にブランド名称を『カレーメシ』へと変更し、パッケージデザインも一新。従来のカレーライスとは異なる新しい食べ物=“ルゥでもレトルトでもない、第3のカレー”と位置づけ、ターゲットも全世代向けから若年層に絞って訴求した。
テレビCMは、『理解不能な新しさ』をコンセプトに、ぶっ飛んだ世界観の尖った映像を作り上げた。『カップカレーライス』のときから味はほとんど変えていないにもかかわらず、リブランディング後の売上は前年を大きく上回った。
お湯を沸かす必要ないのに…レンチン即席、定着せず「便利さだけでなく、心理的な障壁」
「多種多様な冷凍食品が発売され、電子レンジ調理は以前と比べて一般的になりましたが、カップ麺の調理方法に慣れ親しんでいる日本の消費者には、やはり『カップヌードル』のような『湯かけ調理』の方が簡便性や利便性を感じてもらえると考えました。わざわざお湯を沸かす必要のない『レンジ調理』でしたが、一度染み付いた習慣は、なかなか抜けないものです。便利さだけでなく、心理的な障壁を取り除く必要がありました」
味のこだわりは「クセの強さ」、中毒性ある“おやつ以上、食事未満”でリピート獲得
「コロナ禍では日常の活動量が低下してお腹が減りにくくなり、1食を0.7食程度に抑えた軽い食事を摂る方が増加しました。“おやつ以上、食事未満”の存在として『カレーメシ』を選ぶ方が増え、客層が広がるきっかけとなりました」
また、リピーターが多いことも同商品の特色だ。開発では、“クセの強さ”を重視している。
「どれだけ美味しくても、繰り返し買ってもらえないと意味がありません。“もう1回食べたい”と思ってもらえるような味を目指しています。そのためには、何かしら引っかかりのある“クセ”が大事です。スプーンでグルグルとかき混ぜる調理方法や、ドロッとしたルゥは『カレーメシ』ならではの特徴です。また、メインフレーバーの『ビーフ』のルゥには酸味を少し利かせるなど、味わいの面でも『カレーメシ』らしい“クセ”にこだわっています」
「レトルトカレー市場と比較すると、『カレーメシ』の売上は10分の1程度。また、ある調査では、『レトルトカレー』を年に1回以上買う方が6割以上いるのに対し、『カレーメシ』を買ったことがある人は圧倒的に少ない。味の評価は高く、リピーターが多いので、まずは『カレーメシ』を食べたことのない人に知ってもらう必要があると感じています」
そこに立ちはだかるのは、やはり最大のライバル『カップヌードル』だ。過去にはCMで「メンよりメシ」というメッセージを打ち出していたし、『カレーメシ』のパッケージには今もさりげなく「カップヌードルよりウマい!(自称)」と書かれている。今後、日清食品内での下剋上はあるのか、『カレーメシ』の伸びしろに期待したい。