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“Wタブ”のフタ裏にネコ、ネタ色濃いめのオンライン商品…成功に導いた日清食品のSNS戦略

 先日フタ止めシール廃止に伴い、開け口を2つにした新形状のフタ“Wタブ” 採用で話題となったカップヌードル。そんな遊び心はオンライン商品でも。カップヌードルの麺に見立てた紙テープと具材の紙吹雪が勢いよく飛び出す『カップヌードルクラッカー』を紹介したSNSユーザーの投稿が11.9万いいねを集め、「天才の発想」「かやく(火薬)とかけているのか、上手い!」などと話題に。同商品は日清食品グループオンラインストアで販売されている商品だが、他にも『カップヌードル食ってる風Tシャツ』『カップヌードルお湯入れとる紙袋』など企業のプロダクトとしては攻めたネタ商品がてんこ盛りだ。なぜ、同社のオンラインストアはこのような“大・大喜利大会”と化したのか。その背景には緻密な戦略があるようだ。

一点120万円の商品も即完売 日清オンラインストアで販売されるアイデア商品たち

『カップヌードルクラッカー』が同オンラインストアで発売されたのは2017年。発売当初はある程度話題にはなったものの、今回のバズりにより大ブレイク。それまでは1日数件の販売だったものが、多い時には1日1000件以上もの注文がある大ヒット商品となった。

 「弊社のスタッフからTwitter上ですごく盛り上がっていると聞いて、それに対応できるほど在庫があるのかと、チーム内がざわつきました。元々すごい騒ぎになることを願って作った商品でしたので3年越しに夢がかなった気分です」(ダイレクトマーケティング課・佐藤真有美氏)

 過去にも同オンラインストアからはヒット商品が生まれていた。例えば『日清焼そばU.F.O.ダム湯切りプレート』。湯切りをダムの放流に見立て、その様子を楽しむプレートで、これが思わぬ大ヒット。「他のダムから『うちのダムのプレートも出して欲しい』との声や、ダムのお土産店に置けないかという問い合わせもありました」(佐藤氏)と、好評のうちに販売を終えた。
 他にも『カップヌードル専用 縄文DOKI★DOKIクッカー』。国宝「火焔型土器」を所蔵する「十日町市博物館」と雑誌『和樂』(小学館)とのコラボで、土器の中にカップヌードルを一つ入れておけるケースとして使える商品。「そんなの無駄じゃない?」とツッコむなかれ。同商品の値段は量産バージョンが一つ6万円、1点ものはなんと120万円。これが即完売したというから驚きだ。

 逆に、話題は盛り上がったものの、売上的には苦戦した商品もある。カップヌードルの具材「謎肉」が絵柄のルービックキューブ『謎肉キューブ』だ。ブロックごとに微妙に謎肉の表情が異なるもので、一見しただけでは揃っているかどうかもわからない。超ウルトラCの難易度で、「あまりにも難し過ぎたかも知れないですね…」(広報部 松尾知直氏)と商品の印象を語った。

フタ止めシール廃止、“Wタブ”採用を自社メディアのみで発信 日本列島を巻き込む効果に

 同オンラインストアにはこのように“真剣にふざけた商品”が目白押しだ。なぜこのようなことをしているのか。「弊社のオンラインストアには常時350以上の商品を1食から買える便利さを持っているのですが、あまり認知されていません。なので認知拡大目的、集客目的の手段として、ネタ勝負で話題になるものを作るようになりました」(佐藤氏)

 同社のオンラインストアがオープンしたのが2000年。売上を追求するような通販サイトではなかったが、2016年に大きく方向展開してリニューアルを敢行。その際に、「当時のオンラインストアの売上を考えたら多額の広告費は使えない」ことから、SNSに着目。ネタ商品を作って話題化させ、SNSやネットメディアを通じて情報が“自走” していくことで、オンラインストアの認知を高めていくことを目指した。リニューアルオープンのこの時、2000円以上購入した客に『生カップヌードル』をプレゼントするというキャンペーンも実施した。缶詰に入ったカップヌードルで麺はこんにゃく麺を専用のマグカップに入れて温めて食べるというものだったが、これが超特大ホームランに。アクセスが殺到し、サーバダウンする事態にまでなった。

 同オンラインストアの商品は、同社のダイレクトマーケティング課のメンバーがアイデア出しをしている。当初4人で何百ものアイデアを出し合い、同オンラインストアを育ててきた。そのいずれもが、情報の“自走”を目指した商品作りだ。「アイデアと工夫次第でコストパフォーマンスは向上させられます。エッジのきいたCMを作れば、出稿量を増やさなくても、SNSでユーザーが盛り上がってくれる。一度見ただけでは理解できないようなCMなら、弊社のYouTubeチャンネルで再視聴する。SNSで話題になれば、ネットニュースやテレビで取り上げてもらえる。情報がどんどん走っていく構造を意識しています」(松尾氏)

 実は日清食品の広告宣伝費はここ10年ほど変わっていない。CM好感度ランキングでも常に上位にいるが、他の上位会社に比べ、出稿量は5分の1あるいは10分の1に抑えられている。限られた予算で認知度や好感度を上げることに成功しているわけだ。

 この代表例が先ごろ発表された「フタ止めシール廃止」のニュースだ。この発表にはTVCMが使われず、公式SNSとプレスリリースのみでの発表になった。だが大きな話題を呼び、SNSで拡散されたほか、何度もネットニュースで取り上げられ、テレビ番組もこぞってこの盛り上がりを放送。自社メディアのみで日本列島を巻き込むその宣伝戦略は、まさに“日清流”と言えるだろう。

“Wタブ”の「ネコ」は社長発 “遊び心”のある“無駄”が企業の真意を明確に伝播

 そしてこの“日清流”の背景には社風もある。大阪が発祥の会社であり、「いかにお客さんに楽しんでもらえるか、喜んでもらえるか、そこに使命感を持っている社員が多い」と松尾氏。同社に中途入社したという佐藤氏も「全員真剣に仕事に取り組んでいるが、何かおかしなことを言ったり、失敗したりするとフロア中の人から一斉にツッコミが入って驚きました」と述懐する。

 このキーマンは日清食品の社長である安藤徳隆氏。実は“Wタブ”のフタ裏に「ネコ」を描くアイデアを提案したのも安藤社長だ。「ネコ」によだれを垂らさせるよう指示したのも社長。また、滋賀県にある関西工場のエントランスの庇の部分を、カップヌードルのフタの形状にしたのもそうだ。上階ののぞき窓や俯瞰から撮った写真ではリアルに再現されたフタが分かるが、普通に工場に入るにはまったく目に入らない。そんなヒネった造りになっている。

 「ネコ」のイラストも、工場の庇でフタを再現するのも、言ってみれば“無くても困らない”ものだ。だがその無駄にこだわった“遊び心”が “粋”であり、ユーザーに好意的に受け入れられる所以に。インターネットで拡散されることによって、莫大な広告効果につながっていく。“遊び心”のある“無駄”があるからこそ、企業の真意も明確なかたちで伝わっていくのだ。

 「当社では、どこかがやっているような、“○○っぽい”ものはご法度。常に“日清らしさ”が求められます。CMやSNSなどのブランドコミュニケーションではどんどん攻めていきますが、食品として美味しいこと、安全・安心な商品であることは絶対にブレないようにしています。」(松尾氏)

 その言葉の下、佐藤氏も「フードロスなどエコロジカルな方向からも今後攻めて行きたい」と前を向く。「当社のマーケッターは社長から毎日のように勉強しろと言われます。昨今は価値観が日々アップデートされていきますので、そうしたことをも常に意識しながら、これからも皆さんに楽しんでもらえるような商品をお届けしていきたいですね」

(取材・文/衣輪晋一)
カップヌードル公式Twitter @cupnoodle_jp
日清食品グループオンラインストア https://store.nissin.com/jp/

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