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年賀はがき減少と反比例?『文具女子博』に見る“アナログ文具”需要、手書きグリーティングカードも注目集める
“インスタ映え”流行から注目集まるアナログ文具、インバウンド需要も拡大
「『文具女子博』がスタートしたのは2017年なのですが、ちょうど“インスタ映え”という言葉が流行っていた時期。“普段使っているノートをデコってみた”といった投稿も増え、文具を“単なる事務用品”ではなく、“気分が上がるもの”として捉えている方を多く目にしていたこともあり、『文具女子博』は企画されました。デジタルメディアを便利に使う一方で、アナログを愛でるという現象はとても現代的だなと思います」(文具女子博実行委員会・大山真央さん)
主な来場者層は20〜40代の女性。“文具女子”と銘打っているが、男性の来場者も多く、可愛い文具にときめく心に性差はなくなっているようだ。また海外からも毎年来場するファンが増えており、問い合わせの多さから、今年は初めてインバウンド向けのチケットを販売した。
「マスキングテープをまとめ買いする姿もよく見ますね。ただ、いわゆるお土産物屋さんにあるような和柄が人気というわけではありません。日本の文具は作りが精巧で、豊富な柄やカラーバリエーションも、海外の文具好きさんに刺さっているようです」(大山さん)
見直された「ちょっと手間がかかるアイテム」、箔押しやシーリングスタンプも人気
「毎年トレンドは少しずつ変わるのですが、コロナ禍以降に人気が高まっているのが、“ちょっと手間がかかるアイテム”です。たとえばガラスペンとインク。文字を書くだけならボールペンでいいはずですが、わざわざペン先にインクをつけて書くという過程も含めて楽しまれているようです」(大山さん)
「紙に手書きする」という行為に関連したアイテムでは、こうしたトレンドも見られるという。
「ポストカードなどの紙物に、模様やラメでデコレーションする“箔押し”を楽しむ方も増えています。またここ数年、急激に人気となっているのがシーリングスタンプ。熱で溶かした蝋の上からスタンプを押して、手紙に封をするアレですね。シーリングスタンプ専門店の出店も増えていて、昨年は2社でしたが、今年は5〜6社が出店します。個人で楽しむほか、結婚式の招待状など“贈り物としての特別なカード”に使用される方は多いようです」(大山さん)
メールやSNSなどのコミュニケーションが当たり前になり、年賀はがきの発行枚数は過去最少を更新し続けている。一方、それと反比例するようにグリーティングカードへの注目は高まっているようだ。
「ここ数年で目立つのが、印刷会社さんの出店です。その多くが、特殊な印刷技術や紙の加工技術を活用したグリーティングカードをお作りになっています。もしかしたら、出版不況の影響で新たな市場を開拓する狙いがあるのかもしれませんが、実際、グリーティングカードの売上は伸びています。大量の年賀状を一斉に送る文化が廃れつつある一方、贈る相手のことを思いながら1枚のカードを選び、気持ちを込めた言葉を綴るという行為が特別なものになっているのだと思います」(大山さん)
コロナ禍で感じた潮目の変化、売上伸ばすグリーティングカード
「コロナ禍にはさまざまな生活必需品ではない商品に打撃を与えましたが、グリーティングカードに関しては落ち込み幅はさほど大きくありませんでした。コロナ禍で気軽に人と会えなかったためコミュニケーション手段の一つとして、手書きで気持ちを伝える文化が改めて見直され、潮目の変化を感じました。今、インバウンドの回復や市場の再編成もあり、グリーティングカードの売上は伸びています」(サンリオ グリーティングカード企画課・安友伸吾さん)
キャラクターグッズで知られるサンリオだが、グリーティングカードの9割はキャラクターをあしらわない商品だ。今年の『女子文具博』には、新商品として“文具好きさん”に向けたイラストレーターとのコラボカードや、フレッシュな生花が立体的に浮かび上がる「フラワーボックスカード」を出展する。
「グリーティングカードが見直されているとは言え、従来の顧客だけをターゲットにしていては市場も縮小していくでしょう。未来を見据えたときに、同様の価値観を持っているであろう“アナログ好きさん”や“お花好きさん”に訴求する商品として開発したのが、フラワーボックスカードでした。発売から2ヵ月が経った今では、売れ筋の定番カードとなっています」(安友さん)
グリーティングカードの魅力を担当者はこのように語る。
「グリーティングカードは人との出会いや別れの象徴で、そこには“時間”の経過が刻まれます。紙やインクの退色、懐かしい人の筆跡を見ながら、当時の気持ちにタイムスリップする奥深い体験はアナログでしか味わえないものです」(安友さん)
クリスマスから年末にかけては、多彩なグリーティングカードが店頭に並ぶ。久しく年賀状を書いていないという人も多いだろうが、特別な1枚を大切な人に贈ってみてはいかがだろうか。
(文:児玉澄子)
■『文具女子博2023』 (外部サイト)
■サンリオ グリーティングカード(外部サイト)