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「同業者からも疎まれている…」手品の“種明かし”に賛否、YouTube続ける想いと業界への提言

 手品師 兼 YouTuberとして活動する男性がいる。スキンヘッドにサングラスと髭。一見、強面ながら、軽快な語り口と華麗な手さばきで“手品の種明かし”をするユジックさんだ。配信を始めたのは3年前。これまでに400本以上の“種明かし動画”を投稿し、中には280万再生を超えるコンテンツもある。人気の一方で、「(種は)知りたくなかった」と否定的な声も届く。それらの声に、「実は、同業者からも“仕事が減る”と疎まれていますね…」と明かす。批判の中、“種明かし”を続ける理由と、コロナ禍以降、激変したという手品業界の現状について話を聞いた。

手品のエンターテイメント性のひとつに、「種明かしまで含めて面白い」がある

――手品の“種明かし”について、視聴者からの批判コメントだけでなく、同業者からもクレームがあるとのことですが。

【ユジック】 もちろん、「いいね」と言われることもあります。ですが、批判も本当に多いですね(笑)。ただ、今これだけ情報があふれている中、“種明かし”はどうしても避けられないと思います。「仕事が減る」と言われても、ネットで検索をかければ、YouTubeだけではなく、個人のブログやInstagramといったSNSにもいっぱい書かれていますからね。それを隠そうとしたって、難しいと思います。

――確かに、現代において何かを隠し通すことは難しいですよね。

【ユジック】 そう、それに、現存しているマジックの大元となるアイデアは、今から100年ほど前には、ほとんどできていたと思います。それ以降、アイデアが全く新しいマジックは、ほぼ出ていません。新しく見えるものでも、素材やアイテム、構成を変えたりした、既存のマジックのバリエーションに過ぎないんです。

――そうなんですね。だとすると、“公然の秘密”と言いますか…

【ユジック】 20年ほど前、Mr.マリックさんが出演された種明かし番組があったんですよ。それまで手品は、どちらかというと“超能力”“摩訶不思議”を全面に出したエンターテイメントで、「種明かしはタブー」とされていたけど、この番組では「種明かしまで含めて面白い」という切り口で。これを見て、僕も「その通りだな」と思って。昔から、“種明かしコンテンツ”は存在していたんです。この番組を見ると、ミステリーを読んだ時の読後感みたいなものを感じられて、感動すら覚えました。“種”の巧妙さ、発想力の豊かさに驚きましたね。

 ベールに包まれたマジックの面白さも当然ありますが、“種明かしまで含めてショー”だと捉えるやり方も面白い。どちらが良い悪いではなく、手品業界において両立できるものだと思います。

種明かし動画の視聴者は8割が40代以上、年配者に好評の手品グッズ

――“手品業界”と言えば、そもそも手品師の方々はどのように収入を得ていらっしゃるんでしょうか。

【ユジック】 マジシャンは企業や商業施設などのイベントに出演したり、“流し”(飲み屋の客などにマジックを見せてチップをもらう)やマジックバーなどで稼ぎます。個人で活動している方もいますし、事務所に所属している人も多いですね。「それで生計が立てられるの?」と思われるかもしれませんが、最初に道具さえ揃えてしまえば、出ていくお金も少ないですし、意外とやっていける職業だと思います。

――コロナ禍でイベント系の仕事は大打撃を受けました。

【ユジック】 そうですね。僕はそれを機会にYouTubeを始め、今は現場ではなくSNS主体で活動しています。

――YouTuberデビューはコロナがきっかけだったんですね。

【ユジック】 コロナ前は、ネットで手品グッズを販売しながら、イベントで手品を披露するのが主な仕事でしたね。

――手品の技術はどのように習得を? 

【ユジック】 独学です。小さい頃からマジックを始めて、社会人になってからも趣味で続けていました。本業では放送作家をやったり、東急ハンズなどで洗剤や家電を売る実演販売の仕事をやっていました。その時、日用品を売るのと同じ流れで手品道具も売っていたんです。これが評判よくて。実演販売の会社を辞めて独立して。

――なるほど…種明かし動画の構成と話術の巧みさは、放送作家と実演販売士というキャリアにあったんですね。『ユジックの手品教室』は登録者数15万人を突破していますが、ファン層はどんな方が多いですか。

【ユジック】 視聴者の80%以上が40歳以上の方です。僕の見た目やキャラクターが関係しているのか、若い人よりもご年配の方に受けやすいですね。「孫に見せたい」とか「ボケ防止のためにやりたい」という声をたくさんいただくので、紙コップやティッシュなど、なるべく身近にあるものでできるマジックを紹介しています。

 ちなみに、僕の運営する手品グッズのネットショップも、ご年配の方々にご利用いただいています。1ヵ月で十数万、何十万も買ってくださる方もいらっしゃって、びっくりしています(笑)。

――えっ!?

【ユジック】 驚きますよね。もしかしたら、そういった方々は、ただ享受するだけのエンターテイメントはもう十分楽しまれていて、「時間をかけて何かを習得する達成感」「周囲と楽しみを共有できるエンタメ」、そんなもの求めていらっしゃるのかな、と思っています。

「“イベント1本”、そんな従来のマジシャンは生き残りが難しい」

――コロナ禍以降、活動の場はSNSを中心にされているとうかがいましたが、“手品業界”全体でそのような動きがありましたか。

【ユジック】 SNSにシフトしたマジシャンは結構いると思います。ですが、やはり、失業した仲間も多いですね。イベントが中止、飲食店での営業もできないとなれば、働く場所がありませんから。

――日常が戻ってきた今、需要は戻りつつありますか? マジシャン自体が減少しているとなると、今後は高需要も期待できるのでは…

【ユジック】 もちろん、一時期に比べれば企業案件やイベントは少しずつ回復してきましたが、高需要となるかどうかは、その人次第な気がします。今の時代、SNSで発信することは(マジシャンとしての)営業活動になっているので、最低限SNSをやっていないとキツいと思いますし、「自分は古い人間だから…」なんて言ってる場合じゃないと思って、僕は始めました。これまでのようにイベント1本でやっていける職業ではないと思っています。

 また、以前はテレビでタレントのように人気を集めるマジシャンもいましたが、近年では、手品にフォーカスしたテレビコンテンツ自体がほとんどありません。そういった流れをみると、手品は“見て楽しむもの”よりも“やって楽しむもの”にエンターテイメントの質が変わってきているのかもしれません。

――確かに、ユジックさんの手品グッズが売れていることもそうですし、“種明かし動画”が人気なのも、どちらも“やるための手品”です。となると、今後、単純に手品を見せるだけのマジシャンは職業として厳しくなるかもしれませんね。

【ユジック】 そうですね。娯楽の種類も増えていますし…。ただ、昔はテレビでしかスターを作ることはできませんでしたが、今はSNSのお陰でいろんな才能がピックアップされるようになりました。これは、マジックに限らず、どの業界にも当てはまることだと思います。そんな中、YouTubeやSNSに出ているマジシャンを見て「自分もなりたい」という人はいるでしょうし、今後SNSから手品界のスターが出てくるのではないか、と期待しています。

(取材・文/水野幸則)
【ユジックさんINFORMATION】
▼YouTube
「ユジックの手品教室」
https://www.youtube.com/@yugic/videos
▼Instagram
@yugic7777

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