• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • 台所用スポンジたわし普及から60年、日本では「研磨なし」が人気 背景にフッ素加工の調理器具
ORICON NEWS

台所用スポンジたわし普及から60年、日本では「研磨なし」が人気 背景にフッ素加工の調理器具

 台所用スポンジたわしが国内に普及したのは1960年代。スリーエム ジャパン(当時は住友スリーエム)からは1963年にナイロン不織布たわし、1966年にウレタンスポンジを貼り合わせたスポンジたわしが登場した。この不織布とウレタンのコンビは、ネットスポンジやマイクロファイバーなど様々な種類が登場している現在でも、市場で最も売れているタイプとなっている。キッチンスポンジの現在地と、今後の展望を発売元に聞いた。

「研磨なし」のソフトタイプが人気なのは日本だけ 海外では「研磨あり」が主流

 米国3M社で家庭用ナイロン不織布たわしが発売されたのは1958年。その後の1963年に、スリーエムジャパンから日本初の家庭用不織布たわしが発売される。それまで主流だった亀の子たわしに代わり、マーケットに登場。1966年には、同社からウレタンスポンジを貼り合わせた現在の形に近いスポンジたわしが発売される。緑と黄色のデザインに、馴染みがある人も多いのではないだろうか。

 一番の売れ筋は、研磨粒子の入っていない「不織布」と「ウレタンスポンジ」のソフトタイプの貼り合わせスポンジで約30%。次がネットスポンジで25%、研磨粒子の入ったハードタイプの貼り合わせスポンジが15%と続き、この3タイプで7割を占めているという。※出典:インテージ社SRI+データ
  • スリーエム ジャパン ホームケア&CHC技術部 原井敬さん

    スリーエム ジャパン ホームケア&CHC技術部 原井敬さん

「特徴的なのは、日本と海外の差ですね。海外ではハードタイプが一般的な国が多いのですが、日本はソフトタイプが主流。背景には調理器具の違いが影響していると見ています。日本の調理器具は、フッ素加工で焦げやこびりつきが少ないタイプがスタンダードになっているため、強い研磨力で汚れを落す研磨粒子タイプが必要ないのだと思います」(スリーエム ジャパン リテールプロダクトマーケティング部・仲井 智亮さん)

 ちなみに韓国では、メッシュネットと呼ばれる布巾のようなタイプが主流。スコッチ・ブライトブランドでも以前よりメッシュネットタイプを販売しており、昨年9月には環境に配慮した素材の新製品の販売を開始している。

「ネットの素材は石油由来のプラスチックを使わず、PLA(植物由来バイオマスプラスチック)で、トウモロコシ成分を使った環境にやさしい素材を使用しています。まだ発売間もないので、これから浸透させていけたらと考えています」(スリーエム ジャパン ホームケア&CHC技術部 原井敬さん)
  • 1963年に発売された「ナイロンたわし」

    1963年に発売された「ナイロンたわし」

  • 1966年に発売された「スポンジたわし」

    1966年に発売された「スポンジたわし」

食洗機の普及進むもスポンジ需要に影響なし「手洗いと併用家庭が大半」

 キッチンスポンジ市場で気になるのは、食洗機の存在だ。2人世帯以上家庭での食洗機の普及率は、2021年時点で34.4%(2021年3月末時点、内閣府消費動向調査より)。手洗いから自動洗浄へと変わることで、スポンジニーズに少なからず影響があるように思うが、マーケットの縮小はないと言う。

「食洗機を使っている方に調査を行うと、汚れが強い物に関しては、スポンジで予洗いしてから入れる方が多いですね。また、傷つきやすい食器や調理器具は変わらずスポンジで洗っていたりと、食洗機と手洗いと併用されている方が多い印象です。食洗機が普及したことによるキッチンスポンジのマーケットや購入金額が下がっているデータはなく、近年に関してはほぼ横ばいの状態です」(スリーエム ジャパン リテールプロダクトマーケティング部・仲井さん)

 そんな家庭用ナイロンたわし、普及から60年経つ現在でも、不織布にウレタンスポンジを貼り合わせたその形状と見た目に大きな進化はないように見える。

「あまり変わってないように見えますが(笑)、ウレタンスポンジに抗菌仕様がされるなど、業界的に大きな変化はありました。食材が中に入り込んでスポンジ内部に残るのを防ぐために、ウレタンに貼り合わせるファブリック部分に加工を施した商品もあるんですよ。汚れが中に入りにくいために水で流すとサッと落ちて、衛生的に使える利点があります。その他にもより握りやすい形状や使い心地の良い硬さなど、見た目からは伝わりにくいですが、アップデートを重ねています」(スリーエム ジャパン ホームケア&CHC技術部 原井敬さん)

 消耗品ゆえについつい安価なものをまとめ買いしてしまいがちなキッチンスポンジ。「ぜひ、最新のスポンジの使い心地も試してほしい」と原井さん。では、実際に家庭でスポンジを選ぶ際は、どのような基準で選んだらよいのだろうか。

スコッチ・ブライト グリーナークリーン PLA メッシュネット

スコッチ・ブライト グリーナークリーン PLA メッシュネット

スポンジを選ぶ基準は? 適度な予洗いも清潔に保つポイントに

 スポンジの種類は、不織布とウレタンスポンジを貼り合わせたタイプ、ネットスポンジ、不織布だけ、ネット素材だけのネットたわし、セルロース素材など様々。選ぶ際の一番大きなポイントは、汚れをこすり落とす研磨粒子が入っているかいないかだ。

「焦げがついた鉄製のフライパンを洗う機会が多かったり、汚れ落とし効果が必要な場合は、パッケージに“研磨粒子入り”と書いてあるタイプのスポンジを選ぶのがよいと思います。反対に、傷つけたくないグラスやお皿は、同じ不織布でも研磨粒子がついていないタイプで。一見、大差ないように思えるスポンジでも、それぞれ違う特性を持っているので、選ぶ用途によって使い分けをお勧めしています」(原井さん)

 油汚れを落とす頻度が高い家庭では、油汚れ用と、その他用を使い分けるとベター。もしくは、油がべったりとついている食器や調理器具は、洗う前にペーパーでぬぐい予洗いをすると、スポンジにも負担が少なく清潔に保つことができる。

 ちなみに、素材でいうと、ウレタンスポンジは泡立てるのがメインで、汚れ落としに関しては不織布部分がメイン。こうした正しいスポンジの使い方の訴求に加え、環境配慮型製品へのシフトが今後の課題だと原井さんは言う。

「サステナビリティはかなり重要視していて、ホームケア商品においてはバージンプラスチックの使用を大きく減らす目標があります。一部貼り合わせスポンジ製品においては不織布部分を、昨年の10月頃からリサイクル繊維100%に変更するなど、環境に配慮した上で、今までと遜色ないパフォーマンスのサステナビリティ実現を目指しています」

 スポンジを使用する用途に加え、世界的な流れである環境への配慮も、商品選びの大きなポイントになりそうだ。

(取材・文/辻内史佳)

あなたにおすすめの記事

 を検索