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台所用スポンジたわし普及から60年、日本では「研磨なし」が人気 背景にフッ素加工の調理器具
「研磨なし」のソフトタイプが人気なのは日本だけ 海外では「研磨あり」が主流
一番の売れ筋は、研磨粒子の入っていない「不織布」と「ウレタンスポンジ」のソフトタイプの貼り合わせスポンジで約30%。次がネットスポンジで25%、研磨粒子の入ったハードタイプの貼り合わせスポンジが15%と続き、この3タイプで7割を占めているという。※出典:インテージ社SRI+データ
ちなみに韓国では、メッシュネットと呼ばれる布巾のようなタイプが主流。スコッチ・ブライトブランドでも以前よりメッシュネットタイプを販売しており、昨年9月には環境に配慮した素材の新製品の販売を開始している。
「ネットの素材は石油由来のプラスチックを使わず、PLA(植物由来バイオマスプラスチック)で、トウモロコシ成分を使った環境にやさしい素材を使用しています。まだ発売間もないので、これから浸透させていけたらと考えています」(スリーエム ジャパン ホームケア&CHC技術部 原井敬さん)
食洗機の普及進むもスポンジ需要に影響なし「手洗いと併用家庭が大半」
「食洗機を使っている方に調査を行うと、汚れが強い物に関しては、スポンジで予洗いしてから入れる方が多いですね。また、傷つきやすい食器や調理器具は変わらずスポンジで洗っていたりと、食洗機と手洗いと併用されている方が多い印象です。食洗機が普及したことによるキッチンスポンジのマーケットや購入金額が下がっているデータはなく、近年に関してはほぼ横ばいの状態です」(スリーエム ジャパン リテールプロダクトマーケティング部・仲井さん)
そんな家庭用ナイロンたわし、普及から60年経つ現在でも、不織布にウレタンスポンジを貼り合わせたその形状と見た目に大きな進化はないように見える。
「あまり変わってないように見えますが(笑)、ウレタンスポンジに抗菌仕様がされるなど、業界的に大きな変化はありました。食材が中に入り込んでスポンジ内部に残るのを防ぐために、ウレタンに貼り合わせるファブリック部分に加工を施した商品もあるんですよ。汚れが中に入りにくいために水で流すとサッと落ちて、衛生的に使える利点があります。その他にもより握りやすい形状や使い心地の良い硬さなど、見た目からは伝わりにくいですが、アップデートを重ねています」(スリーエム ジャパン ホームケア&CHC技術部 原井敬さん)
消耗品ゆえについつい安価なものをまとめ買いしてしまいがちなキッチンスポンジ。「ぜひ、最新のスポンジの使い心地も試してほしい」と原井さん。では、実際に家庭でスポンジを選ぶ際は、どのような基準で選んだらよいのだろうか。
スポンジを選ぶ基準は? 適度な予洗いも清潔に保つポイントに
「焦げがついた鉄製のフライパンを洗う機会が多かったり、汚れ落とし効果が必要な場合は、パッケージに“研磨粒子入り”と書いてあるタイプのスポンジを選ぶのがよいと思います。反対に、傷つけたくないグラスやお皿は、同じ不織布でも研磨粒子がついていないタイプで。一見、大差ないように思えるスポンジでも、それぞれ違う特性を持っているので、選ぶ用途によって使い分けをお勧めしています」(原井さん)
油汚れを落とす頻度が高い家庭では、油汚れ用と、その他用を使い分けるとベター。もしくは、油がべったりとついている食器や調理器具は、洗う前にペーパーでぬぐい予洗いをすると、スポンジにも負担が少なく清潔に保つことができる。
ちなみに、素材でいうと、ウレタンスポンジは泡立てるのがメインで、汚れ落としに関しては不織布部分がメイン。こうした正しいスポンジの使い方の訴求に加え、環境配慮型製品へのシフトが今後の課題だと原井さんは言う。
「サステナビリティはかなり重要視していて、ホームケア商品においてはバージンプラスチックの使用を大きく減らす目標があります。一部貼り合わせスポンジ製品においては不織布部分を、昨年の10月頃からリサイクル繊維100%に変更するなど、環境に配慮した上で、今までと遜色ないパフォーマンスのサステナビリティ実現を目指しています」
スポンジを使用する用途に加え、世界的な流れである環境への配慮も、商品選びの大きなポイントになりそうだ。
(取材・文/辻内史佳)