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低年齢化する脱毛ケア、小学生の施術に美容外科医が警鐘「大人より火傷や毛根に刺激を与えるリスクは高い」

 美容意識の高まりにより、一般化するとともに低年齢化が進んでいる脱毛ケア。昨今では小学生を対象としたサロンやクリニックも増え、第二次性徴前の子どもの脱毛を考える親も多い。一方、男性でも身だしなみのひとつとして脱毛への意識が高まるなか、高齢層による介護脱毛も増えつつある。共立美容外科の副総括院長・磯野智崇さんに、それぞれの年代の脱毛の現状について聞いた。

小学生を対象とする施術は慎重に…火傷や毛根に刺激を与えるリスクは高い

――低価格で施術が受けれるようになり、脱毛がカジュアル化するなか、小学生も対象としたクリニックやサロンもあります。若年層の脱毛も増えていますが、何歳くらいから来院されていますか?

磯野智崇さん 当院では、中学生が少しいるかもしれませんが、ほぼ高校生以上です。希望者がいればできないことはありませんが、小学生には基本的に施術していません。脱毛のレーザー照射は痛みを伴うので、そもそも小学生で我慢できるかという心配もあります。また、逆に産毛が多くなってしまうリスクもあります。

――やはり小学生だと、成長過程の身体の問題があるのでしょうか。

磯野智崇さん 健康面や身体の成長に関して、やってはいけないということではありませんが、皮膚にレーザーを照射する際の火傷や毛根に刺激を与えるリスクは、大人に比べて高い気はします。大人より念入りに説明が必要になります。ただ、刃で剃っていると皮膚に細かい傷を作ってしまい、色素が沈着して黒ずんでしまうことがあります。それを毎日やっている以上はよくならない。そういうケースであれば、中学生くらいで脱毛するのも良いと思います。

――思春期には「毛が濃い」「剛毛」などを理由にいじめの対象になってしまう場合もあります。そうした理由で来院される方もいると思いますがいかがでしょうか?

磯野智崇さん 周りの子よりも体毛が濃かったり、産毛が多いことに悩んでいる人もいます。高校生であれば、ムダ毛処理をしたいと思う人は多いでしょう。一方では、中学生くらいから親が先回りして、「子どもが毛深いことで悩んでいたらかわいそうだから」と連れてこられるケースもあります。

紫外線にあたる機会が多い子どもは、大人より肌トラブルに繋がりやすい

――小学生からの脱毛をアピールしているサロンもあります。トラブルは起きていないのでしょうか?

磯野智崇さん 子どもでも医療やレーザー脱毛ができると売りにしているところもありますが、実情は明確にはわかりません。大人でも肌のトラブルが起こることはあるので、子どもも同様にいえるでしょう。レーザー照射の直後は、皮膚にダメージがあり軽い火傷の状態なので、紫外線が禁物です。強い紫外線があたると、毛穴に色素が沈着したり、シミになったりします。子どもは、体育の授業やプールなど紫外線にあたる機会が多いので、大人よりトラブルは多いかもしれません。

――第二次性徴を迎える前の年齢では、大人になってから再度脱毛をするケースもあるのでしょうか?

磯野智崇さん レーザー脱毛は、いまある毛にしか反応しないので、毛が生えていない毛根には効きません。それがたくさんあれば、脱毛したはいいが、後からまた生えてくるなんてこともあります。

――男性専用のクリニックも多数ありますが、需要はいかがでしょうか?

磯野智崇さん 30代以上の男性も増えています。特にヒゲの脱毛が多いのですが、脇やすね毛、下半身のVIOも増えている傾向にあります。いまは男性にもつるんとした肌が好まれている印象です。

――新たな脱毛トレンドはありますか?

磯野智崇さん 昔はあまりなかったのですが、VIOを全てなくす人が増えました。以前は温泉などに入る時に、「毛が全くないのはと恥ずかしい」という声が多かったのですが、いまは「なぜ毛を残すのかわからない」という感覚の人が増えました。

――全身をツルツルにするまでにはどのくらいかかるのでしょうか?

磯野智崇さん 毛の濃さは人それぞれですが、毛周期は個人でそれほど違うことはありません。ただ顔まわりは短かったり、陰部は長かったり、部位によって違います。なので、部位によって照射する間隔を調整することもあります。もともとの毛量によって多少の個人差はありますが、1年経つ頃には概ね毛がなくなっています。

――毛量が多い人は、毛根の数が多いのでしょうか?

磯野智崇さん それもありますが、目覚めている毛根の数が多いということもあります。レーザー脱毛は刺激をともなう処置なので、極端なことをやれば眠っている毛根を目覚めさせるリスクはあります。セルフ脱毛をする人は前提として知っておく必要があるでしょう。

介護者の手間だけでなく、清潔さの観点からも介護脱毛は必要

――“介護脱毛”という言葉もよく聞くようになりました。

磯野智崇さん 10年ほど前から「介護者になるべく手間をかけさせず、清潔さの観点から脱毛したい」という高齢層の需要が増えました。特に寝たきりになると、Oラインはそうキレイに拭きとれるものではない。脱毛した方が清潔さを保てます。ご本人の考え方次第ですが、本来の介護脱毛の目的からすれば、VIOすべて脱毛した方が良いと思います。

――介護脱毛の必要性はどう考えていますか?

磯野智崇さん 介護をする人の問題でもありますが、現実問題で言えば、なるべく清潔に保つためにはした方が良いでしょう。また黒い毛でないと反応しないので、白い毛が増える前に施術することをおすすめします。

――介護脱毛をすることへの悩みや不安は聞きますか?

磯野智崇さん 不安というより、恥ずかしいといった脱毛への抵抗があるようです。若い世代に比べると一大決心をしたという方が多く、自分ひとりでは勇気が出ないからと、娘さんと一緒に脱毛するケースもあります。

――最近はファッションタトゥーを入れている若い人も増えています。その部分は脱毛できるのでしょうか?

磯野智崇さん タトゥーを入れていても毛は生えますが、レーザー脱毛はやらないほうがいい。黒に近い色ほどレーザーが反応するので、火傷のリスクが上がります。カラフルな色であっても控えた方がいいでしょう。

――さまざまなクリニックやサロンがあるなか、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか?

磯野智崇さん 体質は人それぞれなので、肌へのレーザー照射が不安な人もいると思います。湿疹などのトラブルがあったとしても、医療機関ではその場で医師が対応し、薬の処方もできます。基本的には、脱毛機械の違いに大差はありません。ただ低料金だと予約が取りづらいなどのシステム面でのデメリットもあります。カウンセリングなど、複数試してみた方が良いでしょう。

(文/武井保之)

磯野智崇先生 プロフィール

  • 磯野智崇先生

    磯野智崇先生

共立美容外科の副総括院長・磯野智崇先生

1995年、聖マリアンナ医科大学を卒業。
1995年、聖マリアンナ医科大学形成外科に入局。
1999年、東大宮総合病院整形・形成外科に入職。
2002年、共立美容外科に入職。
2009年、共立美容外科浜松院院長に就任。
2020年、共立美容グループ総括副院長に就任。

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