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年配女性の御用達だった『フェイラー』のファンが若返り コラボ&リブランディングで再注目
“富裕層の女性”がターゲットだった上陸当初 リブランディングの鍵は“ファンマーケティング”
同ブランドの起源は、1928年。伝統工芸織物であるシュニール織を使った製品を作る工房がドイツに誕生し、1948年からは「フェイラー」という名のブランドに。日本で本格的に展開されるようになったのは、1972年。創業者の山川和子氏がベルギーを旅行中に同ブランドの製品に出会い、「ぜひ日本でも紹介したい」と交渉したことが始まりだった。
「最初は、ドイツで作っていたタオルやハンカチを日本の百貨店で取り扱っていただいていました。当時はフェイラーの商品だけでなく、オーストリッチのバッグなど、ヨーロッパの輸入雑貨を販売する中の一つという形でしたが、山川さんが開花させ、たくさんの方から愛していただけるブランドになりました」(フェイラー・ジャパン マーケティング部 PR 吉野陽子さん)
発売当時のターゲットは、富裕層の女性。当初は30〜50代ぐらいまでが中心だったが、年を追うごとに年齢層が高齢化。2012年には、平均が65歳を超えるという結果に。「このままお客様が年を重ねたら、店舗に足を運ぶのも難しくなるだろう」という危機感から、2014年からリブランディングに着手する。
「ご自身の購入したものをアップした“#フェイラー”の投稿が、1日に150件以上あって。それに対してコメントさせていただくことでお客様とつながることでき、交流を深めていきました。フェイラーでは、『ハイジ』という人気の柄があるのですが、8月12日が語呂合わせでハイジと読めることから、“#ハイジの日2022“のハッシュタグをつけて商品を投稿してお祝いするイベントがあります。こちらもファンの発案によるもので、一緒に楽しませていただいています」(吉野さん)
対面でのパーティーなどを開催することで購入者同士がつながり、さらに発信していくという効果も。現在ではインスタグラムのフォロワーは18万人を超え、2020年からはファンと一緒に作り上げた商品も発売している。また、インスタによるライブ配信では、新商品のアイデアを募る場を設け、一緒に作り上げる試みも行なっている。3月に発売したアイフォンケースは、まさに消費者の声から生まれた商品だ。
また、カラフルなデザインで真四角なフェイラーのハンカチは、インスタとの相性も抜群。ハンカチの投稿が並ぶと“映え効果”にもつながり、ターゲット層の若返りに大きな効果をもたらしている。
ファストファッションと対極の存在 人気ブランドとのコラボが若返りに起因
「フェイラーでは染色された糸を約130色保有しています。ただ、織機の都合で一つのデザインに使うのは18色までと決められているので、その中で美しいグラデーションなどをどのように表現するかをデザイナーが思案しながら柄を制作しています」(吉野さん)
ドイツにある小さな街で、200人ほどの職人が手作業も交え作っており、量産が難しいというデメリットも。織るのに時間を要し、1年以上前から企画しデザインを考案する。そのためトレンドを読むことが難しく、ある意味ファストファッションと対極にある。しかし同社・八木直久社長は、「大量に生産することよりも、クラフトマンシップでしっかりと製品を作り上げることも一つの価値だと思うので、大事にしたい」と、信念を語る。
「『LOVERARY BY FEILER(ラブラリー バイ フェイラー)』では、イチゴなどのフルーツや、フルーツサンド、クマやバンビなどの動物の柄は特に人気です。宝石の柄や、女の子が身につけるようなワードローブやネイルボトルの柄もありますし、お寿司やおすもうさんなどクスッと笑えるデザインも取り入れています」(吉野さん)
また、サンリオやドラえもん、スヌーピーなどの人気キャラクターを始め、企業や人気ブランドとのコラボを次々と展開。争奪戦、即完になることも珍しくなく、毎回注目を集めている。
「コラボアイテムに関しては、大前提に先方の企業の考えがあります。また、商品の先にいらっしゃるお客様がどういう方なのか、どういう思いでそのブランドを愛しているのか、そしてその企業はどのようにお客様と向き合いっているのかという企業同士のDNAの相性を大事にしています」(八木社長)
コラボはフェイラー側から依頼する場合もあるが、先方からの声がけが多いそう。コラボによる相乗効果で、それまでターゲットではなかった層の認知も上がり、ブランド購買層の広がりのひとつの要因にもなっている。
“おばあちゃんが推薦者”世代を超えて家庭内で受け継がれる魅力
商品を開発する上で一番大切にしているのは、「目に見えない価値」だと八木社長は語る。
「もちろんデザイン性も大切ですが、社内に意識させているのは、目に見えない情緒的な価値です。フェイラーのハンカチを持った時に、パワーやエネルギーを感じてもらえるようなプラスアルファの価値。たとえば大事なプレゼンがあって不安になっている時、お守り代わりにハンカチを持つことで頑張れるとか。そういったものを感じていただくために何が表現できるかを、最初に考えています」
また、フェイラーの強みは世代を超えて受け継がれている点だとも。もともと使っていた母から子へと受け継がれることで、おばあちゃん、母、子、さらにその子どもと3世代、4世代伝わることが可能なのだ。実際に、自分が使ったフェイラーのおくるみを3世代受け継いでいるという家庭もあると言う。競争が激化し、消費者の選択肢が増える市場において、家庭内で自然と受け継がれていくのは大きな強みと言えるだろう。
近年では、教育機関とコラボし、在校生や卒業生等に向けオリジナルデザインのハンカチを製作。学校と同窓とのつながりを感じさせるインナーブランディングの契機となることも期待される。
“悲しい時も、楽しい時も、そっと心に寄り添える存在でいたい”というのが、フェイラーが変わらず大切にする普遍的な姿勢。より幅広い層へ向けた新たな試みにも意欲的だ。
「日本に上陸して50年。時代と共にお客様と一緒に変わっていくことと、変えてはいけないことがあると思います。世代を超えて、ブランドの価値をお伝えできるよう、次の50年もアップデートしていこうと考えています」(八木社長)
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