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来たるべき代替肉が”主役”となる日、黒子企業が実現した技術改革
不二製油が開発した新タイプの大豆ミート「プライムソイミート」。これまで再現困難と言われてきた“肉のような繊維感”や“噛み応え”がある
業務用に特化することが、最後発企業の“伸びしろ”だった
同社は創業が1950年、それでも油脂の業界で見ると最後発の企業だ。終戦から5年、当時はキャノーラ油・大豆・菜種といった原料が主流で、同社は割当制によりそれらを確保することができなかった。「ではどうするかと考えて、当時工業レベルで生産されていなかったヤシやパームを使って油脂を絞り売っていきました。工業レベルでの生産は、規格さえ合えばブランドを気にせず使ってくれたからです。特にパーム油は安定性が高いので、油も悪くなりにくい。お菓子のフライ油としてよく採用いただきました。従来の原料だと差別化が難しいですが、なんとか伸びていける道を見つけていった。そうして業務用に特化してお客様への販売に注力した結果、今の形があります」。(同社担当者、以下同)
肉の邪魔をしないものから“主役の味”に、今後の大豆ミートに求められる技術変革
プライムテクスチャー製法を用いた『プライムソイミート』 乾燥タイプ(水戻し後・写真左)、冷凍タイプ(解凍後・写真右)
「増量材や機能材としての大豆ミートは、商品で主役となる“肉”よりも味や食感が前に出てはいけない。これが今まで当社に求められてきた技術だったのです。しかし今は大豆ミートが“主役”となる商品が次々に出てきて、大豆自体の味を美味しいと言っていただく機会も増えました。そうすると以前の技術のままでは、無味無臭すぎて美味しくないという感覚になる。大豆ミートが主役となった時にどうするのか。これは今後さらなる定着をさせていくなかで、当社が変えていかなければならない課題なのです」
調理された「プライムソイミート」
危惧されるのは、環境面への配慮や将来的な食資源不足だ。牛を飼育する場合、大豆ミート生産時の8倍もの水を消費することになる。今後世界人口が増え続けるなかで、食肉が手に入らなくなるほど食資源がひっ迫することも懸念される。大豆ミートはそういった未来の課題に応える食品だからこそ、急務として“広く受け入れられる食べ物”になる必要がある。「広く受け入れられるためには、“おいしさ”が重要」。同社が時間をかけて取り組んだ技術の真価が企業との取り組みにも表れている。
「いかに消費者の皆様と接点を増やせるか」toBで終わらせない取り組み
豚骨スープには、MIRACORE(TM)(ミラコア)という同社の新技術を使用。豆乳を用いて、豚骨の濃厚感を出すことに成功した
2021年には豚骨ラーメン店グローバルチェーンの『一風堂』とともに、プラントベースのラーメンを開発。植物性の油脂とタンパクの加工技術とタンパクの加工技術を掛け合わせ、豆乳を含む植物性の原料から豚骨のような濃厚感を生み出した。「当社の事業は“植物油脂”と“タンパク”にありますが、今回の取り組みは異なる事業の独自技術がしっかり融合された事例でした。それにより今まで植物性では出せなかった“動物的なコク味”を実現することができました」。
『SOVEシリアル』。1食分(30g)でタンパク質15.1g、食物繊維6.7gをとることができる。糖質は4.1gで、一般的なコーンフレークの約8分の1までおさえられている
「プラントベースフードの浸透度は、実際まだまだというのが正直なところです。どうしたらプラントベースフードが売れていくのか、難しい問題であり、その答えをもっているのは消費者の方々ではないかと思っています。だからこそ消費者との接点をどう持つのかが今後さらに重要になります。BtoBの企業であっても、目線は消費者にも向いている企業でありたい。消費者の方に向けた情報発信、プラントベースフードを手に取っていただける環境を引き続き整えていきたいと思います」