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「間(あわい)に寛容じゃないと文化は生まれない」手塚マキが現役引退後もなお、歌舞伎町とホストを支え続ける理由

「クリーンでありながら文化は“壊れている”」都市開発への危惧

 そんな手塚氏は歌舞伎町を「世界から見て、日本の見本になる街だと思う」と考える。「今は壊れてしまった街が多いんじゃないかと思う。どの街も似たような施設やショップなどを並べていたりする光景を見ると、この街の価値は何なのか?と思います。そしてそういう無個性な場所で充足感を得ることが当たり前になってしまったら何の文化も生まれないと思うんです。クリーンでありながら文化は“壊れている”」

 “間(あわい)”がない…手塚氏は、はっきりしないことにこそ意味があると言う。歌舞伎町の魅力は まさにその“間(あわい)”そのものと考える。

「それは、子どもの頃に、絶対に安全な公園で遊べと言われているようなもの。自分で考える能力はますますなくなる。例えば、行政のインバウンドをやっている方々がよく視察に行く場所って、花街があった温泉街が多いと聞きます。なぜかといえば、そういう入り組んだ町は、地上げがうまく行かず昔の町並みが残っていたりするんですね。そういう場所には昔ながらの建築物があったり、長年やっているスナックがあったりする。そんな場所が、海外から来る人たちにとって日本のユニークな観光資源と思われている。皮肉な話じゃありませんか?」

 逆にデベロッパーの好事例とすると、1978年頃、渋谷にパルコ劇場が出来たことで、前衛的でアングラなものも行われた。

「その隙間に入り込んだ若者たちが面白いことを始めて今があると思う。家賃の高い渋谷に住めない若者たちが集まって少し離れた裏原に集まって、そこでも文化が生まれた。そこにはイリーガルな部分もあったかもしれないが、間(あわい)に寛容じゃないと文化なんて生まれない。安全だから好きですという場所では、これが違法なのか、危ない人なのか、そういった自己判断もできない。思考が奪われた遊びに文化があるのか。誰かが旗を振って右に倣えで色付けされた街から何が生まれるというのか」

 用意された街ではなく、路地へ行け。メインストリートではなく隙間で好きなことを見つけよ。規律より混沌を愛せ。カオスから醸成される数多の雑多なカルチャーの突然変異を、キメラを、錬金せよ。…外国人からも観光地として歌舞伎町が愛される理由が、手塚氏の生き方、昨今のホストのあり方、歌舞伎町での25年間に、垣間見られた気がした。

(取材・文/衣輪晋一)

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