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納言・薄幸、「今の賞レースは売れるための方法」 『M-1』優勝しなくても“格は上がる”天下取りへの想い
飲酒ロケでは記憶をなくし…「趣味で仕事をしている感じ」
【薄幸】人気あるんですかね(苦笑)。ライブのチケットは売れないですし、実感はないですね。それなのに、なんでこんなにテレビには出られるんだろう…というのが正直なところです。3年前ぐらいからギャラがそれなりの額になって、でも月に3〜4日ぐらいはちゃんと休みがある。ドカーンと売れた時期もないと自分では思ってるし、今みたいな「なんかテレビつけたらいるな」という存在で居続けられたらいいなって思っています。それこそフジモン(藤本敏史)さんみたいな(笑)。
――随分と肩の力が抜けたお答えですね。
【薄】すごくいいサイクルでお仕事させていただいてますし、自然体でいられる感じでめっちゃ楽なんですよ。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)のおかげで酒とたばこ好きというのが浸透したので、趣味で仕事をしている感じになっているから楽しいですね。
――実際に飲酒をするロケも多いですよね。
【薄】そうですね。飲酒ロケって、他の芸人さんはちゃんと抑えるんですよね。でも私は全然普通のペースで飲んじゃいます(笑)。以前も、『かみひとえ』(同系)という番組で5軒くらい回ったんですけど、3軒目ぐらいから記憶がまったくありませんでした。
――仕事で普通にお酒を飲んで記憶を飛ばす…? まさに仕事を楽しんでますね(笑)。
【薄】『水曜日のダウンタウン』(TBS系)でも飲み仲間のオズワルドの伊藤(俊介)ちゃんを、お酒呑ませて遅刻させるっていう“仕掛け人”の立場だったんですけど、話にならないぐらい私が酔っ払っちゃって、伊藤ちゃんが帰った後も1人で飲んでました(笑)。じつは昨日も朝まで飲んでいたんですけど、途中から記憶がないですね。
【薄】安定すぎるぐらい安定してますよ。お腹がすけば出前がとれるし、スーパーで値段を見ずに買い物できるようになりました。エアコンだって電気代を気にせず設定温度18度にできますしね(笑)。私は趣味がお酒ぐらいしかないので、お金を使う機会が他にないんです。後輩芸人にごちそうすると言っても、付き合いはピン芸人のやす子くらいしかいませんし、酔っ払うと先輩におごっていて…記憶がないんですよ(笑)。この前、トレンディエンジェルのたかしさんと鬼越トマホークの坂井(良多)さんにもおごってたらしいです。たかしさんに「ごちそうさまです」ってLINEしたら、「俺おごってないよ」と言われて。酔っ払うとめちゃくちゃお金払っちゃうみたいですね(笑)。
薄幸のブレイクに相方は“嫉妬ゼロ”、ネタも書かず5連勤にブチギレも…「甘やかしすぎました」
【薄】私、本は読まないんですけど文章を書くのは好きなのでうれしかったですね。コロナ禍で芸人の周りでも『note』が流行って私もコラムを書いていたんです。その流れで書くお仕事もいただけるようになって。書籍の発売はめちゃめちゃうれしかったですね。
――さまざまな飲み仲間の芸人さんが登場しています。みなさんの酒癖を暴露(?)もされていますね(笑)。
【薄】一応みんなには「(書いても)いいですか?」って聞いて許可を取っていますよ。だって全部本当のことですから。あ、でもトレエンのたかしさんには言ってません(笑)。BKB(バイク川崎バイク)さんについては、頭に来ることがあって完全に悪口になってるから、全文送りました(笑)。
――相方の安部(紀克)さんについても書かれています。正直、幸さんだけがこれほど売れていることについて、安部さんはどう思っているんでしょうか?
【薄】なーんにも感じてないと思いますよ、悔しがってもいませんし。安部って本当に変なヤツで、この前も安部が珍しく5連勤することがあったんですけど、マネージャーに「働かせ過ぎだ」って当たってましたもん(笑)。でも私としては、安部のヤバさがもっと世間にバレてほしいなって想いはあります。何が変わっているのか、言語化は難しいんですけど…強いて言えば、野性爆弾のロッシーさんみたいな…? 世間は「納言といえば薄幸」という印象かもしれませんが、安部もそう思ってますからね。私が生み出したモンスターですよ…ちょっと甘やかしすぎました(笑)。
――元々は安部さんが薄幸さんを誘って、以前はネタも書いていたんですよね。
【薄】今はネタすら書きませんけどね。そのくせ『M-1グランプリ』は出たい出たいって騒ぐし。どうやら、『M-1』を通じて売れることによって『情熱大陸』(TBS系)とか『セブンルール』(関西テレビ・フジテレビ系)とかで密着されて、自分を多くの人に見せたいみたいです。SNSもそういう発信ばかりで、野心はそこか、と(笑)。たまに解散しないの? と言われますが、解散する理由もないんですよね(笑)。
『M-1』優勝で「忙しくなりすぎるのもどうかと…」 仕事より優先したい“飲み時間”
【薄】昔は「優勝したい」みたいな感じでしたけど、今は『M-1』決勝まで進めなくてもテレビに出られている状況がすごいことなので、正直、別にそこまではって感じですかね。賞レースって、売れるための方法だと思ってるんです。今の『M-1』や『キングオブコント』、『R-1グランプリ』や『THE W』も、たとえ優勝しなくても、決勝までいったらみんな注目されて格が上がる気がするんですね。私がテレビに出られるようになったのも、2018年の『M-1』予選が『GYAO!』で話題になったおかげですし、全体的に注目度は上がっているように思います。
――今は『M-1』優勝にそこまでこだわってない?
【薄】どうかな。優勝したらめちゃうれしいでしょうけど、ほかの仕事と並行して死ぬほど練習しないといけないですし、そんなに簡単なことではないですよね。他のコンビと比べたらうちは…。もちろん出演時は本当に緊張します。体をバンバン叩いて肋骨を折った過去もあるのですが、それぐらいの意気込みで挑みます。でも一方で、優勝して忙しくなりすぎるのもどうかと(笑)。錦鯉さんなんて、今売れて疲れ過ぎちゃって、喋れてないぐらいゆっくりすぎるペースで話しながら飲んでますよ。飲む時間がなくなったら、私はストレスで死んでしまうと思います(笑)。
――では幸さんにとっての「天下を獲る」とは?
【薄】芸人としては冠番組を持つとかかもしれませんけど…、私はずっとテレビに出ていることかな。だから、とにかく天狗にならないように気を付けていますよ。薄い座布団のお店でずっと飲んで、調子に乗らないようにして生きていたいんです。ウーロンハイばっかり飲んでるし、高級なお酒もいらない。夢は、大好きな平井堅さんにお会いすること。サインをもらったり一緒に写真を撮ったり…。だから、「平井堅と酒飲み友達」までいったら、私の「天下を獲った」ことだと思います(笑)。
(取材・文/衣輪晋一)
著/薄幸(納言)
9月10日発売/1300 円(税別)/幻冬舎
大酒飲み、ヘビースモーカーなやさぐれキャラとして注目を集めているお笑い男女コンビ納言・薄幸による初のエッセイ。彼女の日常に欠かせない「芸人×お酒」の2つを合わせた酔いどれエピソード12を収録している。作中エピソードは、オズワルド、インディアンス、ジェラードン、空気階段といった同じ第7世代との酒場交流。さらに、カズレーザー、尼神インター・渚、バイク川崎バイク、トレンディエンジェル・たかしら、愛すべき先輩芸人との抱腹絶倒飲みトークも収録。その一方で、本人がかつて挫折した役者の夢、今は会えないあの人への想い、普段は口にしない相方への想いなど、酔いにまかせた意外な本音も綴っている。
■薄幸(すすき・みゆき)
1993年生まれ、千葉県出身のお笑い芸人。小学5年生から子役養成事務所に入るも、17歳のときに女優の夢を断念。以後、芸人を目指し、2015年テレビ番組内でビートたけしより現在の芸名を拝受。2017年に安部紀克と『納言』を結成。「三茶の女は返事が小せえな」、「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など、街のディスりネタで人気に。令和の時代に珍しいほどのヘビースモーカーな様子や、大酒飲みのやさぐれキャラクターでも注目を集める。