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「ふるさと納税」寄付額トップクラスの宮崎県、返礼品“宮崎牛”はなぜ人気? 担当者に聞く

ふるさと納税の自治体別寄付受入額ランキングで、都城市が全国1位を3度も獲得している宮崎県。近年、同県は都道府県別ランキングでも常に上位にランクインする人気ぶりだ。そんな宮崎県の返礼品の中で、多額の寄付を集めているのが“宮崎牛”。ブランド牛としての歴史は浅く、松阪牛・神戸牛・近江牛のいわゆる三大和牛にくらべると知名度も“あと一歩”という印象もあるが、なぜ宮崎牛はこれほど多くの支持を集めているのか。そもそも宮崎牛とはどんな牛? 宮崎県庁・畜産振興課の担当者に話を聞いた。

優勝力士にまるごと1頭、ハリウッドスターも賞味 宮崎牛の広報戦略

 和牛界には5年に1度開かれ「和牛のオリンピック」とも呼ばれる「全国和牛能力共進会」(通称:全共)という全国規模の和牛品評会がある。50年以上の歴史を持つ権威ある品評会で、開催県の観光や文化、食も合わせてPRできるイベントとなっているため、宮城県で開催された前回大会では来場者40万人以上、経済波及効果は100億円を越えた。実は宮崎牛、この大会で最高位となる内閣総理大臣賞を3大会連続で受賞し、今、業界で最注目されている和牛のひとつだ。

「食べていただければ、宮崎牛の美味しさはすぐにわかっていただけます。きめ細かなサシと、甘く芳醇な香り、口いっぱいに広がるほのかな旨味が特徴で、どの部位も本当に美味しいんです。ふるさと納税で人気の理由はもちろん味わいにもあると思いますが、これまでのブランディングの効果が大きいのではないかと思っています」(宮崎県庁畜産振興課・中武誠司さん)

きめ細かなサシでとろけるような食感と甘さが特徴の宮崎牛。(写真提供/宮崎県)

きめ細かなサシでとろけるような食感と甘さが特徴の宮崎牛。(写真提供/宮崎県)

 “宮崎牛”というブランドが誕生したのは昭和61年10月。ブランド牛としては、かなり後発だ。近江や松阪のように長い歴史を持ったブランド牛に競い負けないため、立ち上げ当初から、徹底したブランディングを行っていたという。

「宮崎牛にしか描けない“物語”を作りながら、知名度を上げていく必要がありました。そこで手始めに、ブランドが誕生した昭和61年の大相撲11月場所から、優勝力士へ宮崎牛特選肉一頭分を贈呈することにしたんです」

 その後、大相撲だけでなく、ゴルフのダンロップフェニックストーナメントの優勝選手や、サッカーJリーグアウォーズの最優秀育成クラブ賞受賞クラブ、さらには宮崎県内で開催される大きなスポーツ大会や県内でスプリングキャンプを実施するスポーツクラブ等に宮崎牛を進呈。知名度アップを図ってきた。

「宮崎牛を知っていただくための地道なブランディングが功を奏し、平成30年にはアメリカ映画界最高峰の第90回アカデミー賞アフターパーティの食材に、宮崎牛が特定産地の和牛として初めて選ばれました。都城市にある霧島酒造株式会社の本格焼酎と共に、第92回まで3年連続で採用されたのですが、ハリウッドのスターや監督たちにも大好評だったと聞いています」

 さらに今年の4月には、世界的なゴルフの祭典「マスターズ・トーナメント」のチャンピオンズ・ディナー(マスターズクラブディナー)で、ホストを務めた松山英樹選手が歴代の優勝者たちに振る舞ったメニューでも、宮崎牛が選ばれ話題となった。

 ふるさと納税の返礼品は還元率やコスパを重視する人がいる一方で、「特別感のあるもの」を選ぶ人も多い。宮崎牛は戦略的な広報活動によって、そんな「特別感」のイメージ付けに成功した。

某ブランド牛も実は宮崎生まれ? 素牛としても評価される高品質の宮崎牛

 現在、和牛の飼養頭数では全国第3位の宮崎県だが、戦前までは馬、戦後後もしばらくは使役牛の飼育が中心だったという。その後、国や県の政策転換によって肉牛作りに取り組み出したのが昭和46年頃。中国地方から種雄牛を導入し、肉質が良くなるよう15年かけて品種改良を重ねた結果、ブランドとして胸を張って世に出せる宮崎牛が誕生した。

「宮崎牛の定義は、まず、宮崎生まれ、宮崎育ちの黒毛和牛種であること。お父さんとなる種雄牛も宮崎県産で、肉質等級が4等級以上。これらの基準を全てクリアできなければ、宮崎牛というブランドを名乗ることはできません」

宮崎県内で生まれ育った黒毛和種の宮崎牛。写真提供/宮崎県

宮崎県内で生まれ育った黒毛和種の宮崎牛。写真提供/宮崎県

 縛りの多さは、消費者に対して安心・安全かつクオリティの高い牛肉を提供しようと努める生産者の誠実さの表れでもある。中武さんによると、生まれた場所はもちろん、種雄牛まで縛りがあるブランド牛は全国的にも珍しいという。

「別の地域で生まれた子牛でも、その地域で一番長く肥育していれば、ブランド牛を名乗ることができるんです。みなさんよくご存知のあのブランド牛も、実は宮崎生まれだった…なんていうケースも。県外の方にも認められて買われていくほど、宮崎の子牛の質は高いといえます」

 そんな宮崎牛の味は「ひとことで言えば『極上』」なんだとか。

「県内には宮崎牛を食べられるレストランや焼肉屋が身近にありますが、気軽に食べられるテーブルミートというよりは、特別な日のご馳走として召し上がる方が多いですね。宮崎牛のおいしさをしっかり味わうためには、できるだけシンプルに味付けするのがおすすめですが、プロモーションサイト(『より良き宮崎牛づくり対策協議会』の公式HP)では宮崎牛を使った新しい料理や食べ方も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください」

海外輸出量は右肩上がりも円安の影響で生産コストが上昇 苦境の中、4連覇に挑む

 国内で着実にシェアを伸ばす宮崎牛だが、アメリカ、香港、台湾、シンガポール、カナダ、EUなどにも輸出され、その量は毎年、右肩あがりで伸びているそうだ。昨年度は、過去最高の約949トンを輸出した。

「去年から今年にかけては、アメリカ向けが特によく伸びています。輸出量もアメリカが一番多い。赤身のお肉を好む方が多い国にも関わらず、霜降り肉の宮崎牛はとても人気で、よく売れています」(宮崎県庁畜産振興課・原田晋平さん)

 輸出に関しては円安が追い風になっているのでは? と思いきや、現時点では円安による恩恵よりも、マイナスの影響の方が大きいという。

「肉用牛をはじめとした家畜の餌は、そのほとんどが輸入品なんです。ウクライナ情勢の影響で、ただでさえ手に入りづらくなっているうえ、円安で値上がり。生産コストもお肉を作るのが厳しい状態に陥るほどに上昇し、宮崎だけでなく、畜産業界全体の大きな問題になっています」

 そんな苦境の中、来月10月、5年に1度の「和牛のオリンピック」が鹿児島県で開催される(「第12回全国和牛能力共進会 鹿児島大会」)。

「この大会の結果が、その後のブランドの発信に大きく影響することから、どの県もかなり力を入れて取り組んできます。3大会連続で内閣総理大臣賞を受賞しているのは宮崎牛だけ。品質面ではどこにも負けない自信を持っていますが、近江や松坂と肩を並べるためには、まだまだ知名度やブランド力が足りません。今回も、かなり厳しい戦いになるとは思いますが、ぜひ4連覇を達成して、新たな物語を作りたいですね」

 国内はもちろん、全世界にむけて宮崎牛の品質の高さと美味しさを発信したいと話す原田さん。今後もEC販売などを活用しながら、さらなるブランド強化を図りたいという。今や世界でも人気の「WAGYU」。近い将来、外国人の食べてみたい日本食として「Miyazaki Wagyu」の名が上がる日がくるかもしれない。

(取材・文/今井洋子)

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