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奄美大島で「猫を捕獲」 “人間嫌い”になった猫が知った愛、心を開いた姿に感動
奄美大島からやってきた蒼ちゃん、「ノネコ管理計画」を疑問視する保護団体も
奄美市のHPには、「奄美大島の生態系保全を目的に環境省・鹿児島県・奄美大島5市町村が共同で『奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画』を平成30年3月に策定いたしました」とある。計画は、2027年までの予定。実施された理由は、ノネコが希少な野生動物(アマミノクロウサギなど)を捕食しているから。この計画により捕獲された猫は一時的に収容されるが、譲渡先が見つからない場合は殺処分が可能になるという(同時に、飼い猫の遺棄やみだりな繁殖を防止する啓もうも行っている)。
「ウサギを捕食すると言いますが、ウサギの死因の多くは交通事故と言われています。ノネコといっても、Vカット(不妊・去勢手術済)されていたり、人に慣れた捨て猫も多いんです。もしこうした行為が世界に知れわたったら、批判の対象になるのではないでしょうか」
実際、ノネコが希少な野生動物を捕食することはゼロではないだろうし、奄美市のHPの資料には、そうした写真も掲載されている。だが、一方を生かすために一方を大量に捕獲、殺処分することに疑問を感じる人は多い。
ノネコ管理計画に反対する愛護団体が立ち上がり、猫を救うプロジェクトが現在も続いている。捕獲された猫たちを救出し、東京などに輸送して新たな生きる道を見つけるというものだ。ただ、「収容先から引き出すにしても、とてもハードルが高くて。許可を取って引き出せる人が決まっているため、その人を経由して救い出すしかない」と、厳しい実情もあるようだ。
「人間なんて嫌い」捕獲時の恐怖が閉ざした心、懸命なケアで愛情を知る
こうして、メンバー宅で暮らすことになった蒼ちゃん。だが、その愛嬌あるビジュアルに反して、蒼ちゃんは何をしてもシャーシャーと威嚇し、猫パンチを繰り出す。まったく慣れることがなく、まるで「人間なんて嫌い」と言っているようだった。
「おそらく、捕獲されたときの影響もあると思います。捕獲する人は保護ボランティアではないので、猫にとっては怖いこともあったのでしょう」
このまま慣れることはないのではないか…。そんな不安を抱きつつ、威嚇され、手指を引っかかれて流血しながらも、ボランティアメンバーは蒼ちゃんを懸命にケアした。すると、人間嫌いだった蒼ちゃんはだんだん近づいても逃げることがなくなり、キャットタワーの影からも出てきた。そうしていつしか、人がいてもぐっすり眠れるようになり、抱っこをさせてくれるまでに。気が付けば、人間のことが好きな甘えん坊に変貌していた。きっと、これが本来の蒼ちゃんなのだろう。
「人間と一緒に生きて行こうね!」と何度も語りかけたメンバーの努力と愛情が、人間の都合で生活の場を奪われ、捕らわれた蒼ちゃんの心を開いた。多くの人が必死に動き、助け出し、つながった大切な命だ。
蒼ちゃんは今、譲渡会で「家族に迎えたい」と申し出てくれた人の元で、のんびりと暮らしている。故郷の奄美大島から遠くはなれた地で、人間の愛情を知った蒼ちゃん。本当の家族と、これからも末永く、安心して暮らしてほしいものだ。
※7月29日11:45に一部修正しました。
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