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激重ランドセルで“憂うつな通学”心身不調の子どもたち 多様性を認め合う時代「通学カバンに選択肢を…」老舗企業の想い
大人換算で“2Lペットボトル6本”相当の重さ、小学生に増加する「ランドセル症候群」
ある調査では、小学1〜3年生(およそ体重25キログラム)のランドセルの重さ(荷物を含む)は平均3.97キログラム。これは、大人に換算すると2Lのペットボトルを6.4本持った重さに相当するという(フットマークより2021年調査)。これはランドセル工業会などの業界団体や、他メーカーなどの調査でもほぼ同様の傾向となっているようだ。
ランドセルを含む荷物の重さで肩や腰、背中に痛みを感じたり、そもそも登下校が億劫になってしまったりといった心身の不調を訴える子どもも増えている。これらは広く「ランドセル症候群」と呼ばれており、SNSなどではいかに“荷物を軽く感じる”ようになるかのアイデアも飛び交っている。
また、ランドセルメーカー各社をはじめ、素材変更での重さ軽減や別売チェストバンド販売など、さまざまなアイデアで対策は行われている。しかし学校側のルールが変わらない以上、荷物そのものは重いまま。根本的な課題解決には至っていないのが現状だ。
「軽く感じる設計、成長に合わせた買い替えも」スクール水着メーカーが本格参入
「中学生の通学カバンが10kgもあり非常に重く、身体的にも心理的にも負担になっているという内容でした。当時は、中学の指定カバンは横長で、背負い、斜めがけ、手持ちの3通りの持ち方ができる3wayと呼ばれるカバンが主流。ですが、形状や容量の問題から、実は生徒たちに負担となっている可能性が指摘されていました。ならば、容量が大きく、しかも軽く感じられる通学カバンにニーズがあるのでは、と開発をスタートしました」
開発に関しては、人体計測の専門家をはじめ、大学の専門機構での認証実験、プロダクトデザインのディレクターを招き入れるなどして、社内のカバンチームを強化し開発を進めた。そうして、カバン内部で重い教科書類を背中側に密着させるための『ブックストラップ(特許取得済み)』の開発や、子どもたちの平均体型に基づき、3Dパターンで設計した背面パッドや肩ベルト、身体の前で荷物の固定を補強するチェストストラップの採用など、軽く感じるような工夫を構造として詰め込んだ。発売当初より学校側の反響は良好で、指定カバンとして採用する中学、高校も着実に増えているという。
「その後、子どもの小学校入学にあたり、私自身がいわゆる“ラン活”する中で、小学生用のラクサックも必要なのではないかと考えるようになったのです。ちょうどタイミングよく、お客様から小学性向けにもという要望をいただいた事もあり、開発・投入したのが、小学生向けの『ラクサックジュニア』です。比較的に見た目もランドセルに近く、ポリエステル生地を使用し軽量に作られていて、『ブックストラップ』も装備しています。私自身も入学時には革ランドセルを買い与えました(苦笑)…それでも2年生の半ばで教材が増え、タブレットが支給され、とうとうその重さに音を上げるようになりました。以来、4年生の今までずっとラクサックで通学しています」
現在は、女子中学生に徹底的にヒアリングして開発した『ラクサックスタンダード』や、タブレット/PC対応型『ラクサックプレミアム』など、シリーズを続々と展開している。また、『ラクサックジュニア』はすでに2代目で、3代目となるタブレット/PC収納ポケット付きモデルも発売予定。かぶせ蓋に合皮を使い、よりランドセルに近い見た目になった。出費がかさみがちな子育て世代のために、買いやすい価格設定にしていることもこだわったという。
“学校はランドセルで通うもの”同調圧力? 懸念する親の想い
「大人は、何を持ち歩くかを想定してカバンを選びますよね。子どものカバン選びも同じで、入学前にどのくらいの重さのものを毎日持ち運ぶことになりそうなのか。まずは、その情報発信に取り組んでいます」
一方SNSなどでは、ラン活中の保護者から、ランドセルとは異なる通学カバンを持たせることへの不安の声も散見される。“学校はランドセルで通うもの”という同調圧力を懸念する親の想いがうかがえるが、最近はラクサックが少しずつ浸透してきたことで、「それいいね」と共感する子どもが増えたり、利用する子どもを見た保護者の間でクチコミが広がったりして、紹介から購入へ繋がるケースも増えてきたという。
「子どもたちにはそれぞれ違った環境がありますし、ランドセルに憧れる子どもも多いですよね。どんなカバンを持ちたいかという気持ちを大切にしつつ、選択肢のひとつに、ラクサックがあればと考えています。娘は子どもの視点から、ココは改良して欲しいと度々要望を出してくるようになりました。子どもたちが少しでも健やかに日々を過ごしていけるよう、大人ができることを応えていきたいですね」
荷物自体を軽くできないなら、せめて軽く感じられるよう配慮した選択肢を用意すること。それを選択したことで、非難や攻撃を受けない寛容性を持った環境を整えること。より多様性を認め合う方向に進むこれからの社会には、子どもたちだけでなく、大人側の意識改革も重要になってきそうだ。