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『鬼から電話』しつけアプリの是非 開発者が語る子育て論「大人に叱られた経験が、感情を育成する」

 節分の行事を楽しむ人が増えているこの時期。子どもにとって「鬼」といえば怖い存在で、そのイメージを大人が「鬼が来て叱られるよ」などとしつけに活用する風習は今でも続いている。しかし、子育てに対する意識や環境が変化している現代では、そうしたしつけ方について「怖がらせるなんて子どもの心に悪影響では?」「子どもを叱らなくてすむしつけをすべき」などと、さまざまな声が上がっているようだ。「言うことをきかないと鬼から電話がかかってくるよ」という演出で人気の子育てアプリ『鬼から電話』を例に、「子どもに叱る」というしつけについて改めて考える。

「叱る=悪」ではない、子どもが感じる「怖い存在」は先人の知恵

「言うことをきかないと、鬼から電話がかかってきちゃうよ」こんな親の誘導文句で子どもをたしなめる子育てアプリ『鬼から電話』は、シリーズ累計2400万ダウンロードを突破。配信開始から9年が経ついまも子育てに奮闘する多くの親から、言うことをきかない子どもをしつける方法のひとつとして重宝されている。

 まるで本当に鬼から電話がかかってきているかのような演出は、子どもに効果てきめんだ。しかしあまりに鬼を怖がって怯える様子から、叱ることを「悪い」ととらえて罪悪感を抱く親もおり、「子どもがかわいそう」「怯える姿を見るとつらい気持ちになる」などという声も上がった。アプリを開発したメディアアクティブの佐々木孝樹社長は、ユーザーの反響に対して次のように語る。

「たしかにアプリに登場する鬼は、怖い表情を演出しています。けれど鬼の話を聞くと、ただ怖がらせているわけではなく、なぜ大人が叱っているのか、なぜそれをやらなければいけないか、という理由をしっかり説明しています。危険を理解したり正しい生活ができたりするように言い聞かせることがしつけだと思いますが、現代の親は日々忙しく過ごすことが多く、そうした時間を取ることが難しい場合があります。大人の都合で『やって』と言っても、子どもがうまく理解できなかったり、いじけて泣き出したりしてしまい、余計に時間を費やすことも…。そんなとき、親子のコミュニケーションをより円滑にするためのツールとして、このアプリが重宝されていると思います」(同社代表取締役・佐々木孝樹さん/以下同)

 つまり、ものは使いよう。子どもは、親がどんなにきつく叱っても聞かないのに、第三者から叱られてすんなり聞く場合もある。子どものことを一番よく知る親がしっかりハンドリングして、様子を見守ることが重要だという。

「はるか昔から日本では、子どもがあぶない場所に行かないように、悪い行いをしないようにと、鬼や妖怪、お化けといった“怖いもの”を見立てて語り継がれてきました。まさに先人の知恵だと思います。しつけや教育はナイーブな部分ですが、叱られて学ぶこともあるし、褒められて伸びることもある。その場の状況や子どもの性格によるので、正解はありません。時と場合によって、しつけの仕方は変わるのではないでしょうか」
 そもそも企画のいきさつは、秋田出身という佐々木さんの自身の実体験が元となっている。幼少期にたくさん叱られたという「なまはげ」を通して、両親がさまざまなことを教えてくれたという。

「アプリの開発意図としては、2歳から6歳児の子育てをしている親を対象に、子どもの行動を促進させるためにご利用いただくことを最重要視しています。そのためには、怖い鬼のシチュエーションだけではなくて、かわいくて優しいキャラクターが“応援する”かたちでもよくて、そうしたコンテンツも用意しています。子どもが聞き耳を立てて、なぜそれをしなければならないのかを考える。そのきっかけづくりのツールであり続けなければなりません」

家族以外から叱られる機会も激減、“ヤワな大人にならない”ためのしつけ

 ひと昔前までは、地域のコミュニティが子育てを担っている面もあり、日常のなかで子どもが他人から叱られることも多々あっただろう。それが今では、家族以外の大人から叱られる、という機会が極端に少なくなった。現代の子どもたちのなかには、本気で大人に怒られる経験がないまま大人になっていく人も少なくないだろう。同アプリに登場する鬼たちは、そんな“近所の怖いおじさん”的な役割も担っているのかもしれない。

「仕事をしていても、あまり叱られた経験がない人間はすごく弱いと感じます。ちょっとしたミスですぐへこんでしまい、自分の感情をコントロールできないから、それを無意味にずっと引きずってしまうんです。叱られない状況で育ってきた子どもたちがいきなり社会に放出されると、会社で上司に怒られたりしたら、きっとそれだけでプレッシャーになってしまうでしょう。大人から本気で怒鳴られたり叱られたりした体験は、感情の育成という部分でとても重要だと思います」

 本格的な少子高齢化時代に突入するとともに、グローバル化の波が一気に押し寄せるこの先の日本社会は、これまでとは景色が一変するだろう。アプリを通して子どものしつけと日本の未来を考える佐々木さんは、親の世代は子育てに関する意識を変えていくことも必要だと語る。

「今後の日本会社には、年齢も国籍も人種も違うさまざまな社員が入ってくると思います。そういう場所では、教育も教科書通りでは役に立たない。多様な文化を受け入れて、柔軟に対応できる人材が活躍するでしょう。そのために、子育てももっと柔軟性をもって、その場の状況に合わせて指導方法を変化させていかないといけないと思います。そうした社会に向けて、役立つコンテンツをこれからも作っていきます」

 時代の流れによって、また家庭によっても子育てに対する考え方はさまざまだ。しかしどんな方法であれ、子どもが豊かな心を持ち、すくすくと成長することこそが、一番の親の想いだろう。親子のコミュニケーションのあり方も考えさせられる同アプリに対する考え方は、一方通行にならない子育てに奮闘する現代の親の悩みに直結すると言えるだろう。
■アプリ『鬼から電話』(外部サイト)
子どもの言い聞かせに鬼や妖怪、昔ながらの言い伝えを、スマートフォンに応用した子育て応援アプリ。仮想電話による第三者の呼びかけが子どもの気を引き付ける。現在シリーズ累計で2400万ダウンロードを突破した。現在は節分にちなんだ企画や、以前実施したお笑いコンビ、オードリーの春日とコラボ企画などを展開する。

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