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子どもが虫眼鏡で見た疑問にAIが回答 アナログとデジタルを融合した知育サービス『おとるーぺ』の可能性

 世界最大規模の総合印刷会社である大日本印刷(DNP)が、AIを搭載したスマートデバイス『魔法の虫めがね』を開発した。この虫めがねを絵本や図鑑にかざすと、AIが印刷された文字や画像を認識し、文章の読み上げや内容の説明を音声で伝えてくれる、まさに魔法のようなアイテムだ。DNPでは、このデバイスを活用した未就学児童を対象とした知育サービス『おとるーぺ』の本格運用に向けてクラウドファンディングを実施している。デジタル化が進む一方で問題視される“活字離れ”に同サービスが、どのように機能するのだろうか? 子育てにどのような利点があるのか、開発担当者に聞いた。

【動画】子どもの興味関心を育むAIデバイス『魔法の虫めがね』

身近にあるすべての絵本や図鑑の疑問に『魔法の虫めがね』がそくざに回答

 夫婦共働きが当たり前になった昨今、子どもに絵本の読み聞かせをせがまれたり、図鑑を持ってきて「これって何?」と聞かれたりしても、忙しくてなかなか対応してあげられない親も多いだろう。DNPのエンジニアである阿部友和さんもそんな悩みを抱えた1人だった。

「私のほかにも弊社のエンジニアには子を持つ親が多く、仕事をしている時間に子どもの興味や関心を伸ばすサポートがしてあげられない悩みを共有していました。弊社の強みである印刷技術とテクノロジーを組み合わせて、子どもたちに何かをしたい、何かを残したい。そんな思いから開発されたのが、スマートAIデバイス『魔法の虫めがね』です」(阿部さん)
 『魔法の虫めがね』には、絵本や図鑑などの子ども向け書籍などに対して、認識精度の高いAIが搭載されており、AIが印刷された文字や画像を認識し、文章の読み上げや内容の説明を音声でしてくれる機能が備わっている。それを活用したサービスとして、DNPが本格提供を目指しているのが3〜6歳の未就学児向け知育AIサービス『おとるーぺ』だ。

 このサービスでは、主に絵本や図鑑に『魔法の虫めがね』をかざして使うことを想定している。「朗読モード」では絵本の読み聞かせのほかに、文章に合わせた最適なBGMを再生する機能も。また、かざした写真や絵の名称を教えてくれる「発見モード」や、認識したモノの豆知識を教えてくれる「説明モード」と、子どもの興味関心や学びを促進する機能が盛り込まれている。『魔法の虫めがね』さえあれば、身近にある絵本や図鑑がすべて教材になるのがこのサービスの特徴だ。

万が一、暴力描写などに『魔法の虫めがね』をかざしたら?

 子どもが『魔法の虫めがね』で調べたモノは、ライフログとして親のスマホアプリに記録・蓄積されていく。また子どもの興味関心の変化や推移を見える化する「興味関心分析機能」も搭載されている。

「子どもが今どんなことに興味関心を持っているのかを、つぶさに理解することができます。たとえば『先月まで電車ばかり見ていたのに、最近は動物に興味があるみたいだ』ということがわかったら、動物園に連れて行ってあげるのもいいですよね。親子の時間が減少するなか、『おとるーぺ』によって会話のきっかけが生まれたり、コミュニケーションの質が高まることを期待しています」(阿部さん)
 子どもが自主的に使うデバイスとして気になるのが、子どもに触れさせたくない情報にまでアクセスしてしまうことだが、阿部さんはこのように説明する。

「『おとるーぺ』のAIは3〜6歳の子どもが興味を持ったことを学習し、成長していくモデルとして設計しています。私たちもこの年代の子どもが何に興味を持っているか100%把握しているわけではないので、まずは一般的な図鑑に掲載されている動物や植物の絵や写真を認識できる状態でリリースします。さらに子どもたちの興味関心をAIが学習していくことで、認識できるモノの種類が増え、認識精度も向上していきます」(阿部さん)

 では万が一、暴力描写など子どもに見せたくない情報に『魔法の虫めがね』をかざしたら、どのようになるのだろうか?

「まず現段階では世間一般で考えられるNGワードの排除といった対策を考えています。また、プライバシーの配慮から実在の人物の写真は認識できないように制限をかけているのですが、著名人や歴史上の人物については議論が必要かもしれません。『おとるーぺ』のAIに学習させる・させないモノの判定については、社会課題を見据えつつ、柔軟に対策をしていきたいと思います」(阿部さん)

本格的な一般向け提供に先駆けたクラファン実施のワケ

 『魔法の虫めがね』の開発にあたっては約1年をかけて、細かな実証実験を重ねてきた。現在は本格的な一般向け提供に先駆けて、クラウドファンディングを実施している。

「このクラウドファンディングは、製品を開発するための支援金を募るものではありません。弊社は、主に顧客企業に向けてビジネスを展開してきており、一般ユーザー向けのサービスを提供する経験が浅いことから、テストマーケティングの意味合いで行っています」(DNP・西川渉さん)

 クラウドファンディングでは『魔法の虫めがね』の提供に加えて、『おとるーぺ』のプレミアム機能(縦書き文章対応の朗読モード、ライフログ閲覧機能、興味関心分析機能など)が3ヵ月利用できる。目標金額はすでに達成しているが、クラウドファンディングは3月15日まで実施される。
 なお、『魔法の虫めがね』はあくまでスマートAIデバイスであり、目的に合わせたクラウドAIサービスが付随してその機能を発揮する。例えば、新聞の文字が小さく見え辛いといった場合、『魔法の虫めがね』にかざすと音声で読み上げてくれる機能を開発することで、高齢者向けサービスとして提供できる。年齢問わず利用でき、活用範囲は広く、汎用性が高い。『おとるーぺ』は知育サービスだが、今後は「美術館向け」や「英語学習向け」など、『魔法の虫めがね』を活用したさまざまなサービスを展開したい意向だ。また立体物の認識など、『魔法の虫めがね』の性能強化も視野に入れている。

 あらゆる情報がデジタル化され、活字離れが止まない。しかし実証実験で多くの子どもたちと触れ合ってきた阿部さんが次のように語る。

「『魔法の虫めがね』を使って見せたところ、子どもたちが『この本も読めるの?』『じゃあこの本は?』と次々と図鑑や絵本に興味を持ってくれました。私たちが目指すのは、テクノロジーを活用することで、子どもの主体的な学びをサポートし、子どもたちが自分の可能性を最大化できる世界です。このサービスとデバイスが本に触れるきっかけになったらうれしいですね」(阿部さん)

 今後は書店の店頭で絵本や図鑑と並べて販売することも検討しているという。『魔法の虫めがね』は、活字とデジタルの幸せな関係を築いてくれるデバイスになるかもしれない。

(文/児玉澄子)
◆『魔法の虫めがね』製品サイト(外部サイト)
◆大日本印刷紹介ページ(外部サイト)
◆「おとるーぺ」クラウドファンディング出展ページ(外部サイト)

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