• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • セブンの“マシンで仕上げるスムージー”がひそかに話題、「セルフひと手間」でセブンカフェに次ぐブームなるか
ORICON NEWS

セブンの“マシンで仕上げるスムージー”がひそかに話題、「セルフひと手間」でセブンカフェに次ぐブームなるか

 セブン‐イレブンが、東京と千葉の一部の店舗で販売している『セブンカフェスムージー』がひそかに話題を呼んでいる。コーヒーマシンの横にスムージーマシンが設備されており、凍った野菜やフルーツが入ったカップをセットすると、高速でかき混ぜ、スムージーを作ってくれるという商品だ。これまでもパッケージされた市販品スムージーは多種扱っていたセブンだが、なぜこのサービスをスタートしたのか。そこからは、SNSの普及による“体験”を重視する傾向、また全国の農家にとっても有益な“未来像”も含まれていた。

デリバリー拡充により“専門店品質”の需要増、ちょっと高くても「出来立て」望む傾向に

 セブン‐イレブンといえば、『セブンカフェ』の大ヒットによりコンビニコーヒーブームを作った実績がある。身近なコンビニで、安価ながら専門店顔負けのコーヒーが飲める。こうした背景にコロナ禍が合わさって、デリバリーやテイクアウトというサービスが拡大。結果、選択肢が増えた消費者は“専門店品質”をより求めるようになり、またセブンカフェのように“淹れたて”、“出来たて”を好む傾向が増えていることも同社リサーチで分かってきた。

「コロナ禍によって、お客様の健康意識、食への関心も変わってきたように思います。素材の美味しさはもちろん、それが“出来たて”であることのうれしさ。こうした価値が高まっている中、たとえば駅構内ではジューススタンドが増えており、値段はペットボトルの何倍もするものの支持されている。“出来たて”だけでなく、目の前で調理してくれる安心感、安全感の需要は増えていると感じていました」(セブン‐イレブン・ジャパン 商品部 斎藤曜介氏/以下同)
 だが、スムージーをはじめ、フレッシュジュースなど、“出来たて”のものは専門店へ行かなければ手に入らない。目の前で素材がミキサーの中でクラッシュされ、それを自分の目で感じたい需要――それをコンビニで提供できれば、新たなセブンの使われ方が生まれるのではないかと考えた。

 その中で意識したのは、見た目や商品名。消費者が初めてセブンで見る商品になるため、馴染みがある素材を明確に使用したほか、商品名も、『ストロベリーバナナソイ』、『パインケールグリーン』、『ブルーベリーバナナヨーグルト』などと、聞いただけで味が想像できるものを開発した。歴代の担当者含め、「苦労したのはマシンの開発。歯の回転速度、歯の強度、歯の位置、回転時間にこだわり、ミキシングしすぎない絶妙な塩梅を追求しました。商品ごとに素材が異なるので、その度合いもすべて商品ごとに変えるようにしてあります。それぞれに氷の食感や繊維感を感じられるよう飲みごたえを重視しました」

全国展開で生産者と連携、“規格外品”の活用でフードロス削減・SDGsにも寄与目指す

 使うフルーツや野菜に関しては、普段使いで人気度が高いものを使用。専門店であれば特殊なフルーツを利用している場合もあるが、セブンとしては「日常的に使っていただきたい」という想いから、親しみのある果実野菜を選択した。現在一番人気は『いちごバナナソイスムージー』。使用する原材料はギャップ認証等を取得した原材料を中心に使用しているものの、SDGS視点から、今後更なる取組みを検討中だ。

「まずは都心から同サービスをスタートさせていただいており、最初は昨年3月に40店舗ほどで試験販売を開始。今は住宅の中の店舗、ロードサイドの都市型店舗など、さまざまな立地でテストしている状態です。現在は、東京と千葉の一部で700店舗ほどに展開。目標は今後1〜2ヵ月で1000店舗、今年度も順次拡大予定。当然、地方展開も検討中であり、テスト結果を踏まえた上で、マシンの数も確保し、全国に拡大したく考えております」
 実はこのサービス、単に“新しい”だけではない。これが地方に広まった場合、セブンが考えているのは、各地域の果物・野菜生産者との連携だ。通常、スーパーに並ぶ生鮮食品は形が良いものが多い。そこに並ばなかった規格外品を活用。つまり、フードロス削減にもつながる上、今後発売地域を拡大した際には、例えば「北海道限定」「東北限定」など、その地方の特産品を利用することで“ご当地感”も演出できる。そのためにも、収穫時と同等の栄養・食感を維持できる手法を研究。また、急速冷凍により素材の栄養や味が損なわれない工夫もされている。

「実は2017年に1度、冷凍ではなくチルド状態の野菜を詰めたスムージー商品をテスト販売していました。ですが、レギュラー化は叶いませんでした。その理由は、チルドだと保存期間が2〜3日と短いこと。また、商品自体は5℃で保存されているのですが、店内で撹拌される際に摩擦熱が発生してしまい、飲む時には10℃近くになってしまっていました。そうするとやはりぬるく、お客様からの支持は得られませんでした」。当時は専門マシンではなく、市販のマシンを用いていた。そうした失敗も含め、現在の『セブンカフェスムージー』の姿がある。

「自らの手で作ることの安心感」“モノ”より“コト”に価値置く若年層の獲得にも期待

 そもそも本商品は朝帯、サラダ代わりに購入してもらおうというイメージで研究されていた。だが、蓋を開けてみれば昼から夕方にかけても売れており、スイーツの代替として利用する客が多いことに気づいた。「同じ甘い食品でも、健康そうでギルティフリーの感覚があったのかもしれません。そのほか、自らの手で作ることの安心感もあるのでしょうか。お子さんと分けて飲むのか、ご家族で飲み比べをするのか、複数購入される方もいらっしゃいます。購入層は女性や若い方が多く、セブンカフェは男性が1人1杯で購入されることが多いので、スムージーの導入でカフェの売上が下がったということもなく、完全に差別化されています」
 商品ごとに売れる時間帯にばらつきもある。例えば朝はグリーン、ブルーベリーバナナヨーグルト。これにパンやおにぎりを同時購入する客が多い。昼〜夕はいちごバナナソイ。これに焼き菓子を合わせて購入、などなど。セブンカフェとは使われ方も購入層も違い、オリジナルスムージーの導入により、新たな顧客層の獲得、全体売上の上乗せが期待される。

「また若い方は、モノではなく“体験価値”に関心がある人が増えている印象です。スムージーができるまでの様子を動画に撮ったり、実際に飲んだ体験をSNSに投稿したり。お客様のニーズは目まぐるしく変化しています。またこのご時世、フレッシュ感など素材を目で確認できるのも安心材料。パッケージ系のスムージーはサラサラしているものが多いですが、こちらは食感や見た目にもこだわっているので、そういった感想をいただいています」

 実際、TikTokやリールで「やっと見つけた!」「これ近くで買えたら良いよね」「うちのエリアも欲しい」などと投稿されていた。同商品に限らず、“モノ”より“コト”を求める傾向は、コンビニでも強まってくるのかもしれない。

 まったく新しい価値を実現した『セブンカフェ』の経験が同社にはある。その成功ノウハウを生かした『セブンカフェスムージー』も、しっかり品質は担保。それながら“美味しくお手頃価格”というコンビニプライベートブランドのイメージ改革にもつながっていきそうだ。


(文=衣輪晋一)

あなたにおすすめの記事

 を検索