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親からの「置いていくからね」は”恐怖と支配の記憶” 生き抜くために両親と縁を切った作者の心情
「あなたは親の期待のために生まれたわけじゃない」分籍を決意させた心理士の言葉
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? 尾添 椿/『そんな親、捨てていいよ。』毎週水曜更新 (@ozoekkk) January 29, 2021
「意思を持ち始めた2歳頃から、『言うことをきかないと、お父さんとお母さんは海外へ行くからね、もういらない、置いていくよ。』と言われ続けていました。発言することは常に恐怖が付きまとい、考えることも出来なくなりました。
5歳になると泣きもせず喋らない子どもになって、両親はそんな私に満足していて。両親は騒いだり泣いたりしている子どもを見るたびに、嫌な顔をして『椿はあんな風に泣かない子だった、手のかからない本当に良い子だった』と言っていたので『感情を出すことは人間的ではない』と思っていたんだと思います」
ーーその言葉をかけられたとき、尾添さんはどのような気持ちになりましたか?
「担当さんと話していて、『置いていくよ』と言われることは虐待だとは思わなかった。言ったら『なに言ってるんですか!立派な虐待ですよ!』と言われて、そこで初めて『あれって虐待だったんだ』と気づきました。「置いていくよ」は、恐怖と支配の記憶として残っています」
ーー著書では、親と絶縁するまでの過程が実録漫画で描かれています。最後に親と対面する際に付いてくれた友人、縁を断ち切る気力をもらった心理士さんなど、尾添さんをサポートする人の存在も。尾添さんが一番心に沁みた言葉は、誰のどのような言葉でしたか?
「関わってくれた友人全員の言葉をあげたいところですが、一番は心理士・谷瀬さんの言葉です。『あなたは子どもを産むために存在しているんじゃない、親の期待のために産まれたんじゃない。あなたは一人の人間なの」と。両親から人間扱いされず、今までどれだけ悲惨な環境にいたか、その時自覚しました。偶然会った心理士さんが谷瀬さんじゃなかったら、私は家で飼い殺しにされてたな…と今でも思います」
「親ガチャが悪かったから仕方ないと思わないでほしい」
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? 尾添 椿/『そんな親、捨てていいよ。』毎週水曜更新 (@ozoekkk) December 30, 2020
「”ガチャ”は、職場ガチャとか移住ガチャとか、『自分には合わないから変える』という話で使える単語。やり直しができないものはガチャと同等ではないので、親や家庭、一人では築けないものに向きあう言葉にしては投げやりだと思います。しかし、人によっては投げやりなくらいが丁度いい親がいるので、おどけた形で使うなら面白い印象です。
家庭環境は身体能力と同じく産まれ持ったもののひとつです。”親ガチャ失敗!”って言葉だけで片付けていたら自己卑下する一方なので、どうしたら失敗を遠ざけられるかを考える。真剣に考えるときに『親ガチャが悪かったから仕方ない』と思わないでほしいです」
ーーご自身の体験を振り返って発信することは、つらい過去の体験がフラッシュバックすることもあるかと存じますが、いかがですか?
「一度だけ強烈なフラッシュバックを起こしたことがあって、『生きるために毒親から逃げました』の5章中盤で父親と電話をするシーンなんですけど…」
ーー激情した父親に「オレに娘なんていなかった」と言われる部分ですね。
「ネームを見た担当さんも動揺して『こんな酷いことを言う人間が生きてていいのか』と仰ってくれて。気持ちの整理をする面では大事な作業だったので、漫画にすることは『両親から人間として愛されたことがなかった』と認めることでもありました。人生には起きたことしか起きない、エッセイ漫画ってそういうものだと思います」
ーー尾添さんが発信される漫画は、親子関係や家族関係で悩んでいる方の助けや救いになっている側面があるかと思います。ご自身の発信される漫画が、どんな意味や意義を持つものになると良いと考えていらっしゃいますか?
「”分籍や戸籍の閲覧制限の方法”を描きたい私に『一番古い記憶から描けますか?』と担当さんが言ってくれたことが全ての始まりでした。描いていくうちに、漫画という表現で『様々な選択肢を提示したい』と思うようになりました。本が出版されてから、読者の方からお手紙を頂くことがあって。私の漫画で勇気を貰ったと言ってもらえたり、行動に移して平和な生活を手にできた方もいました。
一人ひとりの心の変革って大事なんです。何度も心の中で変革を起こして人は生きていく。つらいことがあっても、次に向かうための道は必ず存在する。性格の問題ではなく、人は何かをきっかけに絶対に変われる。苦しいまま人生を終えることがまかり通ってたまるか。そんな意義を持った漫画を描いていけたら良いなと思っています」