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“即戦力”ではなく“育成”がカギ? 「東宝シンデレラ」が上白石姉妹、浜辺美波ら人気女優を輩出し続ける理由
選定基準は「クラスによくいるかわいい子」ではなく“原石であり、磨けば光るダイヤモンド”
やみくもにゴリ押しはせずじっくりとした育成が「東宝シンデレラ」の価値を強固に
その同期の浜辺美波は、第7回で新設されたニュージェネレーション賞の受賞者。受賞4年後の2015年のSPドラマ『あの日見た花の名前を君はまだ知らない』で本間芽衣子(通称めんま)を演じて「この可愛い子は誰だ」と話題に。アニメの実写化は、その再現度で炎上することが多々あるが、あまりにもハマっていたために、原作アニメファンの多くから喝采を浴びた。その後の活躍は皆、ご存知のとおりだろう。
「かように東宝シンデレラ出身者は、コンテスト入賞してもすぐに事務所が“席”に入れないのが特徴」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「東宝配給の映画で主演・ヒロインを張れる人材を見つけよう、育てようとしている印象が強い。そのために、いきなり過剰なメディア露出やゴリ押しをすることもない。第一優先は女優としての土壌をしっかりと作り上げること。ブレイク後も安定して活躍できるように、ブレイクの先も見越して経験を積ませていっている。…実はゴリ押しにも利点があり、ベテラン俳優との共演や場数を多く踏むことから多くを学べます。ただし、妙な“クセ”がついてしまう恐れもある。そんな意味でも、東宝はお芝居において“箱入り娘”的な育て方をしている印象」(同氏)
どちらの育て方が正解かはわからない。だが彼女たちの活躍を見るに、すぐに過度な露出をさせない東宝のやり方が、「東宝シンデレラ」の価値をより高める結果につながっているとだけは確かだ。
一貫性あるスタイルは「東宝」だから? 銀幕時代に総称された“東宝顔”
「正統派美人という言葉に、美人に正統派も個性派もあるのかという疑問が浮かぶ人もいるでしょう。過去、銀幕時代には“東宝顔”という言葉が存在しました。加山雄三さんがその典型例ですが、簡単に言えば、好き化嫌いかが分かれることが少ない、オーソドックスな、強いクセのない顔のことです。この“東宝顔”が今で言う“正統派”であり、これは、東宝が歩んできた映画作りとも一致します。ここがリンクしているため、東宝シンデレラは正統派美人が多い。またクセというものは、それが好まれる時代で大きく左右される。東宝シンデレラの方たちはクセがなく、選出方法が昔から貫かれているため、“昔ながら”、“昭和っぽい”という世間一般の評価にもつながります」(衣輪氏)
ネットでも「東宝芸能は長く活躍できる女優さんを大切に育てているイメージ。気品があって、発言を見ていてもとてもしっかり教育されている」「最近感じるのは可愛い、綺麗だけで過剰評価されてる人多いなと。その中で東宝の選ばれたメンバーは逸材だと思う」などの声も挙がる。概ね高評価であり、ときにはこれが重圧になることもあるだろう。実際、浜辺美波は2015年のインタビューで「迷惑はかけたくないです。名前に負けないように頑張りたいと思います。(中略)これからも構えないで、求められたことを全力でやっていきたいです」と答えている。
“東宝色”を失わないようじっくり育てられ、時期を見て、さまざまな役柄に挑む「東宝シンデレラ」オーディションの受賞者たち。少数精鋭でもあり、彼女たちがしっかり活躍することでオーディションの価値も上がる好循環を生んでいる。「自らの手でじっくり育てて自社を牽引するような存在にしていく」。この“古き良き昭和”は、即戦力重視のこのご時世、今一度、見直されても良いのではないかとも思う。
(文/西島亨)