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「好きなアナ」ランク圏外だからこそ? 本懐で本領発揮するTBS女性アナの大器晩成力
“潜伏期間”がTBSアナの醍醐味 “女子アナ”ではなく、いちアナウンサーとして育成
同氏によれば、「ランクインしてない“潜伏期間”ではタレント性ばかりが注目されず、本懐の部分で評価される利点がある。第一印象では話題性が少なく見えるTBS女性アナは立場としては有利な面もある。そして同社にはアナウンス力をしっかり上げていく土壌もある」という。ちなみにかつて(2012年〜2014年)2006年以降に入社した若手女性アナを様々な企画に挑ませ、最も成績の悪い人に罰ゲームを課す『女子アナの罰』もあったが3年で終了。TBSではフジやテレ東のような女性アナをアイドル化することが難しかったこともあるかもしれない。
TBSラジオと“直結”していることが最大の強みであり他局には無いアドバンテージに
ラジオは情報が声のみ。リスナーを飽きさせず軽快に進める進行力やゲストとの対話力、ほかにも、フリートークをしなければならないため、原稿を読む以外の“喋り”だけで場を繋げる力を身につける場となり得る。実際、過去のインタビューでは笹川友里アナが「TBSアナウンサーはみんな、何かひとつでもいいからラジオに関わりたいと思っているんじゃないでしょうか」とも発言している。
こうしてTBSアナウンサーは、全方位的に「言葉を伝える」技術を習得しようとしている。自分の持ち味(個性)を磨くこともでき、そんな意味で、アナウンサーの“本懐”を築きやすい土壌がある。
田中みな実、宇垣美里、吉田明世…相次ぐフリー転身 “局アナ”で居続けた江藤愛らの奮闘
その代表例が江藤愛アナの現在の無双ぶり。女性アナとしては遅咲きであり、『ひるおび』のアシスタント、『CDTV ライブ!ライブ!』、朝の情報番組『THE TIME,』の木・金サブキャスターを務めるなど快進撃が止まらない。これまでは同期の田中みな実の存在によって、あまり注目されることはなかったが、今年はエキスパート特任職トップスペシャリスト(課長に相当する役職)にも昇進。“表に出ずとも”実直にアナウンサーとしての研鑽を積んできた結果が現れてきている。また入社早々結婚、出産を経て、30代からはナレーション技術を磨き、ジェーン・スーとのPodcast『over the sun』で注目される堀井美香アナの存在もある。
江藤アナについてTBSアナウンスセンター室長の利根川展氏はこう評価している。「努力をいとわない。地味な努力が出演者やスタッフとの信頼関係を築き、番組オファーにつながる」「表に出たがるアナウンサーも多いですが、彼女の場合は、どんな番組でも『あくまでもタレントさんが主役で、その主役を引き立てるためにどうしたらいいか』を考えるタイプ。アナウンサーといえどもサラリーマンで、彼女は会社員としての事務作業、例えば勤務表を記入したり、必要な書類をいち早く提出するなど本当にきちんとしています。そういうことが、後輩にもいい影響を及ぼしていると思います」(ORICON NEWS 2019年掲載)。
“花形職業”を目指して入社した以上、早く活躍したい気持ちは理解できる。だが「早秀は晩成にしかず」という言葉もある。定年退職後も一線でメディア出演する元TBSアナウンサー・吉川美代子氏の活躍もやはり、アナウンス能力(機転・伝播力・間の取り方)の土台あってこそ。江藤愛アナはかつてORICON NEWSのインタビューで「最近は本当に“女版・安住アナ”になりたいと思うようになりました」とも語っていた。華やかさ・キャラ・話題性に依存せず、着実に堅実にあくまでアナウンサーとしての能力を築くTBS女性アナウンサーたち。“いぶし銀”な彼女たちを応援する人も決して少なくない。
(文/西島亨)