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“女性アナ”が拡大解釈、NGナシの鷲見玲奈アナに見るフリーアナとしての勝機
鷲見玲奈 (C)ORICON NewS inc.
バラエティ、ドラマ、競馬番組…フリー転身後に目を見張る鷲見アナの活躍
例えば“ドラマ型バラエティ番組”『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)。鷲見アナは番組のお決まりとなっている“悪役キャラ”を演じて話題に。これに若槻千夏が「今私鷲見さんがライバルなんで」とコメント。「(鷲見の演技が)イラっとするけどかわいさがめっちゃ残るんで私そこ目指します」とまで言わしめた。
またドラマ『アプリで恋する20の条件』(日本テレビ系)では、本格演技に初挑戦。思わせぶりな態度で男性を振りまわすミステリアスな女性を演じて、「ほんとにアナウンサーだったの?」「これだけの俳優のなかで埋もれないのがすごい」などの反応が挙がったほか、体を張ったキスシーンにも反響が。
さらには昨年12月29日に放送された競馬番組『東京大賞典』生中継(BSフジ)では、井森美幸、ゴルゴ松本、麒麟川島…など、各局の競馬中継経験者が出演するなかで、鷲見アナはメインMCとして登場。局アナ時代に『ウイニング競馬』(テレビ東京系)のアシスタントを担当しており、番組卒業後に「競馬界の損失」「彼女のおかげで土曜の地味なレースも見るようになったのに」など惜しんでいたファンからすればかなり胸アツな展開となった。
女性アナ界に革命をもたらした田中みな実と弘中綾香、共通点は“同性からの嫌悪感”を有益に活用
(左から)弘中綾香、田中みな実 photo:田中達晃(パッシュ)(C)oricon ME inc.
田中アナは写真集を出版したほか、バラエティでも司会進行ではなく“ゲスト”のポジションで登場。美容誌・ファッション誌で特集が組まれるなど、男女共に親しまれる存在になったと言える。またドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)での怪演も話題に。アナウンサーとしての職務を全うしなくても、批判を超える支持を得る仕事をこなしてきた。これにより、アナウンサーという仕事の選択の幅が広がり、アナウンサーでも“やりたいことをやれる”という流れに。田中アナがフリーアナという職業が拡大解釈される昨今の素地を作られたと言うわけだ。
一方で“局アナ”の立ち位置でアナウンサーの定義を拡大解釈しているのが弘中綾香アナ。タレント的立ち位置で局アナがゲストとして登場する手法は最近よく見られるが(水卜麻美アナなど)、引くところは引いてアナウンサーとしての立場を守るパターンが多い。だが弘中アナはどの番組にも“毒舌キャラ”という自分の色を出しながら登場するし、地上波では原稿読みする姿はほぼ見ない。“局アナ”でもっとも“タレント色”が強いキャラクターと言えないだろうか。
「上記2人と鷲見アナには共通点も見られます。鷲見アナの出演番組を見ると、オファーされたものを全力でやってみるという田中みな実アナの文脈を受け継いでいることが伺えます。田中さんの振り切った怪演がなければ、鷲見アナのキスシーンも世間にここまで受け入れられなかったかもしれません」(衣輪氏)
もう一つは好感度だ。田中アナは局アナ時代、いわゆる“女子アナ”代表格のぶりっ子キャラで「女性が嫌いな女性」というイメージだった。弘中アナも同様、入社当時はロリキャラで男性ウケは高かったが女性からは不評。現在の鷲見アナも露出が増えたことでニュース記事が増え、局アナ時代の田中アナほどではないが、批判や嫌悪のコメントが人気と比例するように散見される。「“女子アナ”として抱かれていた嫌悪感は、後々大きな振り幅になる可能性を秘めています。嫌われていたら嫌われていた分だけ、後々大きくイメージアップすることができるのは上記2人を見ても分かる通り。鷲見アナにはその伸びしろが感じられます」(同氏)
本懐を目指すのもいばらの道、鷲見アナの“NGナシ”は女性アナとしての勝機にもなる
有働由美子アナ (C)ORICON NewS inc.
局アナ時代に“アナウンサーとして”人気を獲得し、フリーに転身した女性アナのなかで、満足いく活躍ができている人がどれだけいるだろう。また『news zero』(日本テレビ系)の有働由美子、『NEWS23』(TBS系)の小川彩佳、『Live News イット!』(フジ系)の加藤綾子などのように、帯番組のメインキャスターを張るとなれば、常に視聴率との戦いがある。
扱うニュースひとつひとつにどれだけ切り込めるのか、どのくらいの割合で自分の主張をコメントに織り交ぜるか。様々な場面でアナウンサーとしての本質を常に視聴者に見極められているのが現状だ。もちろん本懐を貫くことは大事。なればこそ、NGなしで様々なジャンルに手を出す鷲見アナの仕事の選び方に女性アナウンサーとしての勝機はないだろうか。
「フリーアナ&局アナの選択肢が増えた背景として、昨今の働き方改革などの意識変化も無関係ではありません。元々アナウンサーの仕事には“一般人だから身の程をわきまえなければならない”という無言の相互圧力があった。どれだけカメラの前で良いパフォーマンスをしても制作側の“身内”扱いで“お客様”であるタレントより評価も待遇も低かった」
「だが局を飛び越えて出演したり、番組タイトルに自身の名が冠されたり、またブログなどで自らをプロデュースもする弘中アナを見れば分かるように、その不文律が崩れ始めている。古い価値観が見直され始め、結果が正当に評価されるようになる兆しが見える昨今、鷲見アナ、田中アナ、弘中アナの動向はますます重要になる」(衣輪氏)
一部から“体制が古い”と批判を受け続けていたテレビ業界に見え始めた“新たな波”。その“波”の一旦を担っているのは鷲見アナかもしれない。女性アナたちのさらなる躍進に期待したい。
(文/西島亨)