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ドッキリやものまね番組も消滅危機? BPOによる“痛みを伴う笑い”を改めて考える

 今年8月、BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会が、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議対象とすることを決定した。「不快に思う」「いじめを助長する」など視聴者や中高生モニターからの意見を踏まえた結果だが、実際に審議開始された今、テレビ業界とりわけバラエティー番組界隈をザワつかせている。年末恒例だった『笑ってはいけない』シリーズ(日本テレビ系)放送休止が憶測を呼び、さまざまな議論にも発展。そもそも「痛みを伴う笑い」の定義はどのような形で制定されるのか? それに伴い消滅していくコンテンツの可能性も否定できない。

なんでバラエティーだけが標的に…制作側や出演芸人の心境

 今年の『笑ってはいけない』の放送休止だが、当事者である日本テレビの杉山美邦社長は9月27日に行なわれた定例会見で、「休止は前から決まっていたことで、BPOの審議はまったく関係がない」とし、松本人志も9月5日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では「(休止の)判断は3月ぐらいにしてますから」とBPOの影響を否定。続けて「(コロナ禍で)クオリティを下げてまで番組を続けるのは、尻より心が痛い」、「(罰ゲームを)受ける側だから。俺もやめてほしいよ!」と笑いに変換していた。

 一方、東野幸治の代役でMCを務めた田村淳は、「こういうことを話し合う時代が来るなんて、テレビ入ったときには夢にも思ってなかった。でも、そういう声があるということには耳を傾けなければいけない」と主張。松本も「もちろんもちろん」と同調しながらも、「『なんでバラエティーだけ言われるのかな』というのはありますよ。それを言い出したら、プロレスなんかアウトじゃん。ドラマも人が死んだり、食べ物を粗末にしたりするんですけど…」と不公平感も露わにした。

 実際、バラエティー番組の内容を振り返れば、漫才のボケツッコミではツッコミは時にボケの頭をはたくし、いわゆる身体を張った芸や罰ゲームなども“痛み”を伴う。大げさに罵倒されたり、面白おかしく騙されたり、容姿をデフォルメされて表現したり…これらも“精神的な”痛みといえるかもしれない。

 となるとバラエティー番組においては、いわゆる“ドッキリ系”の番組や“ものまね系”の番組が、もっとも「痛みを伴う」番組として対象になるということが想定できるだろう。

危険スレスレ&過激なドッキリ そこから派生し生まれた“お約束芸”

  • 出川哲朗の「ヤバいよヤバいよ!」のいまや名台詞(C)ORICON NewS inc.

    出川哲朗の「ヤバいよヤバいよ!」のいまや名台詞(C)ORICON NewS inc.

 ドッキリ系は1970年代にはじまる『元祖どっきりカメラ』(日本テレビ系)や『スターどっきり(秘)報告』(フジテレビ系)などをルーツとし、バラエティー番組の1ジャンルとしてすっかり定着。現在でも『うわっ!ダマされた大賞』(日本テレビ系)や『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ系)のように“冠番組”もある。

 基本的には、ソフトな“寝起きドッキリ”などから、バズーカ砲や落とし穴といった大掛かりなものまで、騙されている芸能人たちの普段は見せない心の動揺や、周囲への生々しい振る舞い、騙されたことがわかったときのリアクションなどで笑わせる。視聴者にしても、ハラハラドキドキしたり、気の毒に思ったりしながらも、「台本があるんだよね?」「やらせ?」と疑心暗鬼になりつつ楽しむのが定番だ。

 そうした流れから、騙されたり痛い目に遭う過程を専門的な“お約束”として見せて笑わせるという、ドッキリ系の派生型ともいえる“リアクション芸”も誕生する。『お笑いウルトラクイズ』や『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』、『進め!電波少年』など日本テレビ系のバラエティー番組では、出川哲朗の「ヤバいよヤバいよ!」、上島竜平の「殺す気か!」といった“伝統芸能”的な名ゼリフも生まれたのだ。

ものまね番組の強固さ 反面でコンプレックスをデフォルメする芸の難しさ

  • 「ものまね四天王」の一人・コロッケ(C)ORICON NewS inc.

    「ものまね四天王」の一人・コロッケ(C)ORICON NewS inc.

 一方、古くからお笑いのジャンルとして確立していた「ものまね」。1980年代の『ものまね王座決定戦』(フジテレビ系)における清水アキラ、ビジーフォー(グッチ裕三・モト冬樹)、栗田貫一、コロッケの「ものまね四天王」の活躍で大ブレイク。

 当時は、清水アキラのテープ芸による研ナオコや五木ひろし、コロッケの岩崎宏美やちあきなおみ、野口五郎など本人の容姿を過剰にデフォルメして笑いをとるスタイルが大ウケしたが、ともすれば批判の対象になりかねない。しかし、番組内では、「ご本人登場で激怒?」なんて流れが主流化していくうちに、なんとなく受け入れられていった。

 その後、ホリ、原口あきまさ、コージー富田ら「ものまね第三世代」が登場してくると、ものまねされる本人側も認めるという方向へのソフトランディングに成功。ものまねされること自体が人気のバロメーターとなり、“ものまねを公認する=器が大きい”として、好感度がアップするケースも増えていく。

 こうしてみると、笑いのシチュエーションというのは、見る側によってそれが“イジり”なのか“イジめ”なのか、受け取り方が大きく変わってくるようである。過剰なイジりに見えても当の本人が認めていたり、楽しんでいたり、リアクションによっては好感度を上げたりする。となれば、BPOの「痛みをともなう笑い」の適用範囲も明確化しづらい部分があるかもしれない。

 とはいえ、コンプライアンスが叫ばれる中、テレビ局側としても小さな苦情にも敏感にならざるを得ない。今のドッキリ系番組でも、ロッチ・中岡創一やおかずクラブ・オカリナなど、薄めリアクションで独自路線を切り開く芸人が進出しているのも、局側の苦心の自己防衛策の現われなのかもしれない。

 先述のものまね系にしても、近年登場してきた「細かすぎるものまね」系などを見ると、「ご本人公認」の免罪符はあるものの全人格を対象にするのではなく、ワンシチュエーションだけを切り取ることによって、微妙に正面からの批判をかわす“抜け道”の一つとして活用されている感もある。

日本独自の笑いを消さない進化 いい意味で規制回避を模索するお笑い界

 ただ、BPOの規制への対応は、お笑い界を進化させている側面もある。ここ数年、お笑い業界全体に広まった「傷つけない笑い」の流れに乗り、ものまね界でも笑いよりクオリティの高さで人を感動させようという風潮も。

 ドッキリから派生したリアクション芸を売りにしてきた出川や上島には、今回のBPOの規制をどう思っているのか聞きたいものだが、このコロナ禍において芸人たちのリモート出演や距離をとったリアクション芸(ワイプ芸)が必要になってくると、これまでの出川・上島らの芸が参考になるなど、違う形で笑い界への貢献を果たしていることも興味深い。

 いずれにしろ、SNSが普及したことで今ではリアルタイムで視聴者の反応がわかるから、バラエティーの内容やお笑い芸に対する批判に対してもすばやく対応できることは強みだ。ドッキリにしてもものまねにしても日本独特のお笑いであり、多くの視聴者が楽しんでいるコンテンツだけに、これからも規制や批判に沿った内容のアップデートを期待したい。

 かつて、ドリフターズの番組や『おれたちひょうきん族』(フジテレビ系)、『お笑いウルトラクイズ』など、今では放送できないスケールの大きなお笑い番組があった。その流れは年末の『笑ってはいけない』シリーズへと受け継がれたといっていいだろう。しかし、それも今年は休止。となると、最後の砦は総合的には『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)かもしれないし、人間に焦点を当ててドキドキさせる(ドキュメント系)笑いの『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、芸人たちが毒を吐きながら実験的な企画をブチ込んでくる深夜の『ゴッドタン』(テレビ東京系)等々、実はまだまだバラエティーの羅針盤的役割を果たすお笑い番組が健闘しているのだ。今後もさまざまな規制や干渉をかいくぐり、日本の新たなお笑い、そしてバラエティー番組の“しぶとさ”を発揮していってほしい。

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