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浪川大輔の声優人生を築いた人気キャラクターたち…アルやイタリア、及川徹、そして石川五ェ門

この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。
⇒この記事をオリジナルページで読む(10月12日掲載)

浪川大輔

今年アニメ化50周年を迎える『ルパン三世』シリーズの最新TVアニメ『ルパン三世 PART6』が10月から放送されます。小説界やアニメ界を賑わす豪華なメンバーが脚本家として参加することや、声優の小林清志さんが次元大介役を勇退することなど、話題を集めています。そこでFanthology!では、石川五ェ門を演じる浪川大輔さん、峰不二子を演じる沢城みゆきさん、そして新たに次元大介を演じる大塚明夫さんら“ルパン一味”にインタビューを敢行。今回は浪川さんに、五ェ門の魅力はもちろん、次元役に就任する大塚さんについて聞くとともに、「自分を築き上げたキャラクター」というテーマで、ご自身の代表作やファンから愛されている役について振り返っていただきました。

撮影:田中達晃(Pash) 取材・文:遠藤政樹

作品を愛し続けてくれるファンがいることに気づかせてくれた:『機動戦士ガンダム0080』アル

――まずは浪川さんが12歳の時に演じ、代表作の一つにも挙げられる『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の主人公アルフレッド・イズルハ(アル)についてお聞きしたいと思います。
僕の“全盛期”の時ですね(笑)。

――だいぶ早い時期ですが(笑)。振り返ってみて、特に印象に残っている出来事はありますか。
実はアルはオーディションではなかったので、当時の音響監督の話によると、12歳で小学6年生だったのに5歳とか小学1年生ぐらいの声に聞こえて、「ちょっと若すぎる」と最初はスタッフさんも戸惑ったらしいです。そのころの僕は、そういったことはよくわからず、粛々とやらせてもらっていました。

30歳のころにもう一回アルをやったのですが、その時には「もう限界です。ちょっと降ろさせてもらえませんか」とお願いするほど、思い出あるキャラクターです。その時には当時のディレクターと同じ方にそっと肩を叩かれ、「今までありがとう」って言われましたが、僕も「こちらこそありがとうございます」と肩の荷が下りました(笑)。ファンの皆さんが好きなキャラクターですし、作品のストーリーもいいのですが、さすがにあの声はもう出ません。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』
アニメーション制作:サンライズ。『機動戦士ガンダム』シリーズ初のOVA作品(1989年発売)であり、富野由悠季総監督以外の手で初めて制作された作品である。地球連邦軍とジオン公国軍の戦いが激化する宇宙世紀0079年末期を舞台とし、アル少年とジオン公国軍新兵のバーニィという2人の主人公を軸に、ガンダムを操る側ではなく「ガンダムを倒す」側の視点で描かれている。

アルフレッド・イズルハ(アル)
中立のコロニーに住み、戦争の実際を知らずモビルスーツや軍人に憧れを抱く11歳の少年。彼の退屈な日常は、不時着したザクのパイロット・バーニィと出会ったことで一変する。
――成長して声変わりをしてしまうと、アルの声を再現するのは大変そうですね。同作ではバーナード・ワイズマン(バーニィ)役を故・辻谷耕史さん、クリスチーナ・マッケンジー(クリス)役を林原めぐみさんが演じられていましたが、当時の現場はどのような雰囲気だったのでしょうか。
辻谷さんは、キャラクターとしての関係もそうでしたが、やんちゃなイメージも含めて本当に“良いお兄ちゃん”みたいな感じでした。アフレコ現場では「先にNG出した方が負け」みたいなこともやっていましたね。林原さんは当時からシャキッとしていて、まさにクリスっぽい雰囲気でした。お二方もまだアニメに慣れていない頃だったことを思うと、なかなか味わえない空気感だったのかなって。あの2人の新人の頃なんて今では想像できないですけど(笑)。最初から“仕上がっている”感じがあると思いますが、当時は若手として緊張されていたみたいです。

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』Blu-rayメモリアルボックス

――たしかに想像はつかないですね。ちなみに浪川さんは、近年では『機動戦士ガンダムUC』のリディ・マーセナス役など、ガンダム作品に多数出演されていますが、乗り手になるまでは長かったですよね?
パイロットになるまでは、おそらく20年ぐらいかかっているのでは。全然モビルスーツ(MS)に乗れなかったですね。

――お気に入りや思い入れのあるMSはありますか?
やっぱり自分が乗ったMSは思い入れがあって、バンシィ(『機動戦士ガンダムUC』)や(ガンダム)スローネツヴァイ(『機動戦士ガンダム00』)は好きだし気になります。あと僕の場合、ガンプラを極めたマイスター役やSDガンダム役など役どころも多く、8〜9作出させていただいていて、とてもありがたいです。アルについては、よく「ガンダム史上最年少主役」とか言われますけど、ザクの手のひらにしか乗っていません(笑)。
――そんなアルですが、声優人生においてはどんな役になりましたか?
気づかされた、気づかせてくれたキャラクターかなと思います。何もわからず思った通りに、感じたままにしか演じていなかった当時は、小学生だったので、作品がどうなるとかそういう考えには至りませんでした。よくネタでイジられますが、その頃に書いたアンケートは、例えば「収録した感想は」といった質問には「大変だった」とか、「終わった後どうでしたか」には「楽しかったです」とか、本当5文字ぐらいしか書いていませんでした(苦笑)。

――年齢を考えると、そうした質問に回答するのは難しそうですね。
大人になってから「泣ける」や「感動した」などと言ってもらったことで、もう30年前の作品だと思いますが、そうやって誰かの心に残り続けるものなのだなというのを気づかせてくれた作品とキャラクターだと思います。ただ、もう自分じゃできないので“過去の栄光”なのですが。

演じるキャラクターの路線に変化を生んでくれた:『ヘタリア』イタリア

――続いては、『ヘタリア』のイタリアについてお聞きします。今春には新シリーズ『ヘタリア World★Stars』もありましたが、印象に残っているエピソードを教えてください。
これはもう思い出深く。エピソードはいっぱいあります。Webアニメや、海外人気といったものの“はしり”とも言える作品で、キャラ人気があそこまで出るというのは、それまであまり感じたことがなかったです。

それと、キャラクターソングというものが全盛期に向かう過程にあった印象で、当時の『COUNT DOWN TV』などのランキングに、毎回キャラクター名が入ってくるというのは、良い意味で違和感がありました。

(C)日丸屋秀和/集英社・ヘタリアW★S製作委員会

(C)日丸屋秀和/集英社・ヘタリアW★S製作委員会

『ヘタリア』シリーズ
原作は、「ジャンプ+」にて連載中、シリーズ累計60万部を突破した日丸屋秀和による人気コミック。2008年にドラマCDが発売、2009年にアニメ化され、ミュージカルも上演されている。登場キャラクターによる主題歌のほか多数のソロキャラクターソングが発表され、CD売上ランキングで上位に登場するなど人気を博す。2021年4月に最新作となるアニメ『ヘタリア World★Stars』が公開された。

イタリア
おちゃめで陽気、泣き虫なラテンボーイ。絵や歌といった美的センスが抜群で、パスタやピッツァ、女の子が大好き。
――たしかに『ヘタリア』のキャラソンはインパクトありましたね。キャラクターに関してはいかがでしょうか。
あの声でやったのも、今思うと「なぜだ」と思うところもありますが、時間が短い作品なので一瞬でも声を聞いて覚えてもらおうという意図を持ってやらせてもらい、それがキャラクターの性格と合っていたのでOKが出ました。

――イタリアのどんなところが好きですか?
アホなところでしょうか。天然というか底抜けの明るい部分や、何か言われても落ち込んでいるようであまり落ち込んでいない。ちょっと失礼なことを言っているという。あの声でガンガン辛らつなことを言うので、どのキャラクターもそうですけど、掛け合いが楽しかったです。

アニメ『ヘタリア World★Stars』60秒PV

――では、苦労したことはありましたか?
歌ですね。僕が初めて歌った主題歌で、しかも初めてのキャラクターソング。キャラクターの声で歌わなきゃいけないというのは、非常に苦労したなというのを覚えています。キャラソンは声や喉のコンディションが良くないとしんどくて、体調管理も含めてなかなか苦労したキャラクターでした。

――そんな『ヘタリア』は一大ブームを巻き起こしましたが、そのころの周囲からの反響はどれぐらいあったのでしょうか。
当時はすごかったです。僕はそれまで地方や海外に行くほうではなかったのですけど、海外イベントにも初めて行った作品だったと思います。海外からすごくお呼びがかかる作品で、イベントもそうですけど現地のショップもすごく盛り上がっていて、びっくりしたことが印象に残っています。
――それでは、イタリアは声優人生においてどのような役になったのでしょうか。
イタリアをやるまでは、アルも含めて真っ直ぐなキャラクターが多くて、爽やかな青春ものであったりとか熱血でとにかく叫んだりとか、そういうキャラクターを多く演じていました。

当時イタリアを「史上最強のヘタレ」という風に言っていましたが、そういうちょっと良くも悪くも“キワモノ”的なキャラクターをやらせてもらったことで、自分の声優人生の中では「ここまでやっていいんだ」と、すごく扉が開いた気がしました。そこからそういったキャラクターは増えていった気がします。そういう意味では、『スター・ウォーズ』(アナキン・スカイウォーカー)の吹き替え、リディ・マーセナスときて、そこから“闇落ちキャラ”が増えたという流れもあります。

学生役に再挑戦する気持ちに火をつけた:『ハイキュー!!』及川徹

――そういった“流れ”のようなものもあるのですね。続いてお聞きするのは、『ハイキュー!!』の及川徹です。キャラクターについては、当時どのようにアプローチされたのでしょうか。
五ェ門やイタリアなどいろんなキャラクターをやらせてもらい、自分の中で「ここまでやっていいだろう」「ここまで出しちゃダメなんだろう」という“線引き”を持った上で取り組んだキャラクターです。僕はディレクターさんや監督の意見を聞いてから細かく役作りをしていくスタイルなのですが、「とにかくスターで、とにかく輝いてください」「スーパースターでお願いします」と言われた時は、さすがに「どうやろう」と悩んだのをよく覚えています。
『ハイキュー!!』
原作:古舘春一 アニメーション制作:Production I.G。かつて強豪校だった宮城県立烏野高校バレーボール部に、稀有な瞬発力と跳躍力を持つ日向翔陽、中学時代からセッターとして活躍していた影山飛雄が入部し、チームメイトとともに全国大会への出場を目指す。

及川徹(おいかわ・とおる)
烏野高校の宿敵・青葉城西高校バレーボール部で主将を務め、宮城県のNo.1セッターとして名高い実力者。影山の中学時代の先輩にあたり、強大な敵として烏野メンバーの前に立ちはだかる。
――なかなかハードルの高い演出ですが、どのように役を作り上げていったのでしょうか。
原作も素晴らしいし、キャラクターもそこで完成されていたので、それを損なわないようにというやり方で取り組みました。ふざけているように見えて実はふざけていない、天才のようで実は努力もしているとか、及川の“裏面”を表現してあげることを意識しつつも、それを見せないのが及川らしさでもある。アホっぽく聞こえる時はアホっぽいし、真剣なところは真剣にという風に、すごくバランスが難しいキャラクターという印象は強かったです。

及川徹がメインとなっているTVアニメ『ハイキュー!!』ベストエピソード第2位

――そんな及川は、強豪校のエースとしてチームを引っ張りますが、『ハイキュー!!』のキャスト陣は若手も多く、浪川さんが及川のように引っ張る現場だったと思います。また現在は声優事務所の社長として後進の育成にも当たられていますが、先輩として後輩たちに伝えたいこと、こう考えて行動してほしいという持論などを聞かせてください。
たくさんありますが、『ハイキュー!!』になぞらえて言うならば、例えば「バレーは“6人”で強い方が強い」といったセリフがあるように、烏野はいわゆる個性みたいなものが際立っていて、青葉城西は1人のカリスマがいながらも全員が同じ目線でチームワークを形成していくのが良いところです。声優業界では、青葉城西の考え方を持ちながら個性が強い人じゃないと残らないと思います。「右へならえ」でやっている子や、逆に個性が強くても「自分はこうだから」と曲げない子も残らない。両方の良いところを取り入れ、「無理です」ではなく「わかりました。やります」というぐらいの強さがないと残れないと思います。

僕はどちらかというと、ディレクションに対して、あまりにもわからない場合に質問することを除けば、まずは「はい」と言うタイプ。やってみて「違う」と言われたら「僕はこう思っています」と意見を伝え、相手の意図や狙いを聞いた上でもう一度やる。それが仮に10回20回続いたとしても、何とも思わないです。僕は監督や音響監督が“最初の視聴者”だと思っているので、その人たちがOKを出さないものを視聴者に観てもらうのは違うと考えています。そういうやり取りで、役者だけでなくスタッフも含めたチームワークになっていくんです。前面に出るのは役者かもしれませんが、みんなでOK出したものであるのだから、みんなで受け止めて、みんなで発信していくべき。それがチームワークだと思うし、そこに個性がないとなって思っています。

――熱くて深い意見をありがとうございます。では及川というキャラクターは、声優人生においてどのような役でしょうか。
高校生役をやらせてもらえる機会も減ってきたので、そういう意味では焚きつけてくれたというか、中学生や高校生は若い子たちがやればいいと思っていたなかで、及川に出会ったことにより、「もう一回やらせてもらってもいいですか」という欲が出てきたようなキャラクターです。

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