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朝ドラ相手役がヒロイン化?「#俺たちの菅波」坂口健太郎に見る、“見守られキャラ”の重要性
ヒロインよりも視聴者との距離感が近い? 坂口本人も「僕だけ菅波。面白いですね」
さらに、9月24日放送の『あさイチ』に坂口健太郎が出演した際には、坂口自身が“菅波人気”について言及する場面も見られた。「#俺たちの菅波」をはじめ、「ドヤ波」「デレ波」「ポヤ波」「菅波砲」「休菅日(菅波が登場しない回)」など、Twitter上で数多くのバリエーションのハッシュタグが生まれていることが紹介されると、「こんなに種類があるとは…」と驚きつつ、「ここまで大きくなるとは思っていなかったです」としみじみと語っていた。また、視聴者から大きな反響を集めたのは、同番組にVTR出演したヒロイン・永浦百音役の清原果耶とのやりとり。坂口健太郎について語るなかで、役名に関しては清原も「菅波」と呼び捨てに。これを受けて坂口は「ほかの役名は『さん』付けなのに、僕だけ菅波。面白いですね」と笑顔をのぞかせ、このエピソードにはSNSで大きな反響が集まった。
どこかヘタレっぽさを感じさせるキャラで、ヒロイン・百音との関係性も視聴者が驚くほど“ゆっくり”と進んでいく。だからこそ、じれったい思いを抱きながらも、菅波の行動を視聴者はついつい応援したくなる。先日放送された、ヒロインが父親に菅波との関係性を聞かれ「いずれちゃんとします」と堂々と答えたシーンでは「菅波がヒロイン説あるんじゃないか」「百音と出会って世界が変わったと言っていたし…」と、視聴者にはヒロインよりも丁重に(!?)扱われている節がある。放送後に同作の関連ワードが次々とトレンド入りするなど、ムーブメントを起こしているのは、紛れもなく坂口健太郎演じる菅波の影響によるところが大きいといえる。
本来は“味方”であるはずの身内キャラとの対峙 だからこそ一層輝いて見える菅波の存在
蒔田彩珠が演じるヒロインの妹・未知は、常にヒロインと立場を比較されることにイラ立ちを感じ、姉につらくあたることもある。姉のモネだけではなく、菅波に対しても容赦のない言葉を放ってしまうキャラクターだ。
菅波とヒロイン・百音、そして、幼馴染の亮と妹の未知、この複雑な四角関係で物語は展開していく。これまでの朝ドラであれば、ヒロインを完璧に理解して受け入れて助ける幼馴染や家族といった“身内キャラ”だが、本作では身内だからこそ抱く不安や不満をリアルに描いている。視聴者が客観的に見た際、きれいごとでは済ませられないヒロインの言動や行動を強調する彼らの存在と菅波・百音の比較があるからこそ、ストーリーが伝わってくる。そして、ヘタレっぽいところがありつつも懸命にヒロインを理解しようとする菅波のキャラは、視聴者の目により一層輝いて映るのだろう。
清く美しい『朝ドラ』に生々しさも 菅波は物語を受け入れる緩和剤としての役割に
そんななかで菅波は、もっとも人間味に溢れ、誰もが感情移入をしやすい“リアル”なキャラクターだ。これまでのヒロインの相手役といえば、ヒロインを陰で支えながら救う“ヒーロー”的な側面があったが、菅波はいまいちヒーローにはなりきれずに、弱さや苦悩もたくさん見せてヒロインとともにステップアップしていく役柄だ。
カッコよくて最強なキャラばかりが登場するのでは物語は成り立たない。弱さや情けなさが目立つキャラだからこそ、ここぞという大事な場面で見せる“カッコよさ”がより引き立つ。それを体現しているのが『おかえりモネ』における菅波だ。実際の社会においても同様で、カッコよくは立ち振る舞えないと自覚しながらも、自分なりに行動して最善を尽くすような人生こそが、もっとも多くの共感を生むのではないだろうか。ヒロインをどこまでも実直に想い続け、見栄を張らずに自分の役割に徹しきる菅波のキャラが、今までにはない新たな朝ドラという壮大な物語を作っていく一助になっているのは間違いない。