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「お猫様、素敵…」木彫り猫に大反響、元教師が感動した国内外の反応の差「日本には学校の美術教育が根付いてる」

 スマホを見る猫の木彫りの置物があまりにも美しいと、Twitterで34.4万件のいいねを集め反響を呼んでいる。角材に下絵を描いた写真と完成した木彫り猫の写真が投稿されると、「お猫様素敵です…」と称賛の声に加え、海外からも購入を希望する多くの声が寄せられた。美術教師の経験もある制作者の鑄さん(@CopperAndHammer)は、コメントを読む中で海外の人から度々質問される「あること」が日本人からはないことに気づき感動したという。作品に込めた想いや、Twitterに寄せられたコメントから着想を得て制作したという新たな作品について話を聞いた。

「日本人から“道具”や“作り方”の質問はほとんどない」、元美術教師の制作者が感動した学校教育への希望

――作品には、海外からも賞賛の声がたくさん寄せられていました。

鑄さん海外の方からは、道具や作り方について聞かれることが大変多くて驚きました。日本の方からはそのような質問はほとんどありませんでしたが、それは小中学校の授業で学んだからなのだと実感して、美術の教師をしていた経験もあるため、少し感動しましたね。

――そんな差が出てくるのですね。

鑄さん木彫りの作品のツイートには、海外の方々から道具や材料や作り方に関する質問がたくさん届きます。私のツイートは角材に下絵を描き込んだ状態の画像と、彫り上がった際の画像が並べてあるのですが、これは日本では、小中学校の図画工作と美術で多くの人が学んだことのある題材だと思います。

――たしかに、授業で習ったので作り方はだいたい想像がつきます

鑄さん小中学校で学んだことは、大人になったら使わないし役に立たないものだと大人は言っていたし、自分もそう思っていました。だけど、役に立たないと思っていたことこそが、まさに今学びたい内容で、学び直したいと思ったときに、どう取り組んだらいいのかを想像できるのは、あのときに興味のないまま、意味もわからずに基礎を教えてもらっていたからだ、という実感から作った作品です。

――子どものころの図工や美術が、実はしっかり根付いていると。

鑄さんだから、日本の方からは使用している木の種類を聞かれることはあっても、作り方や道具についての質問はほとんどありません。日本では多くの人が一度は学んだことがあって、もし学び直したいと思えば、私に聞かなくたって知っているんだと気づいて、感動しました。

――猫の次に、望遠鏡を抱えた犬の木彫りを制作しています。

鑄さん鳥に興味はないのに、「鳥を見ましょう」と望遠鏡を持たされた犬の姿です。興味がないのに望遠鏡を持たされても、荷物になるだけと思うかもしれないし、嫌になって捨ててしまうかもしれない。でも、望遠鏡を持っていれば、遠くの鳥が見たくなったときには見ることができる。もし捨ててしまったとしても、手にしたことがあるから、どんなものを再び手に入れたらいいかがわかる、といった想いを込めています。

「作品をみた人が、前向きなメッセージを受け取れるように」 制作活動で心がけていること

――木彫りの制作を始めたきっかけは?

鑄さんもともとは金属の作品を作っていたのですが、2020年の夏くらいに、作業の手休めに近くにあった木切れを彫ったのが始めです。

――どのようにして制作しているのでしょうか?

鑄さんのこぎりで大まかな形を切り出し、小刀で角を落として、彫刻刀で表面を均します。制作時間は、猫の作品に関しては2日ですね。

――スマホを見る猫の作品でこだわった点は?

鑄さん見た人が自分の感情と重ねて見られるよう、表情を付けないようにしました。その上で、できるだけ前向きなメッセージを受け取れる印象になるよう心掛けました。

――制作する際には大切にされている点は?

鑄さん言葉や実物では受け入れてもらえないものを、形にすることで受け入れてもらえるものにできないだろうか、と思って作っています。

小さな世界で苦しまずに外の世界と繋がりを作ってほしい スマホを見る猫に込めた想い

――スマホを見る猫の作品には、どのような想いが込められているのですか?

鑄さん身近な現実世界に受け入れてもらえない者が、スマホやインターネットを介して受け入れてもらえる方法を探す姿です。人は集団で生活する生き物なので、そのとき自分が所属している集団に合わないと、どうしても生きるのが辛くなります。

――それはすごくわかります。

鑄さんだけど、それは多くの場合、その個人に何か間違いがあるわけではなく、単に見た目や能力や価値観に違いがあるだけのことだろうと思います。それならば、そんな小さな世界の中で自分が間違いなのかと苦しみ続けるのではなく、自分を信じられるように、その外にある世界と繋がりを作った方がいい、という想いを込めた作品です。

――作品のモデルとなった猫にも意味が込められているのでしょうか?

鑄さんモチーフになっているのはシャム猫の雑種です。シャム猫は遺伝的に内斜視(寄り目)になりやすく、内斜視の猫は視野が通常の猫よりも狭く、奥行きや立体感を捉えることが難しいとされているそうです。身近な現実の世界(狭い視野に映る世界)に受け入れられないことを苦しんで、小さなスマホの中にひしめく判断しづらい情報(奥行きや立体感を捉えづらい)の中から自分の生き方を探す者として、モチーフに選びました。

――鑄さんにとって、木彫りの魅力とは?

鑄さん私の作っているような小さな木彫りであれば、誰でも始めようと思えばすぐに始められるところです。使っている木も道具も、すぐに手に入ります。もしかしたら、道具は小中学校で買ったものを持っている場合もあるかもしれません。音も出ませんし、特別な設備も必要ありません。

――今後、制作していきたい作品や、やってみたい活動について教えてください。

鑄さん穏やかにマイペースに作品を作り続けられたらいいなと思っています。

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