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「こんなに可愛いのに…」譲渡会で縁が結ばれない、猫エイズ陽性のナナがつかんだ赤い糸
新たな家族が見つからない、猫エイズ陽性と診断された猫
「獣医師さんが検査した結果、ナナは猫エイズ陽性だったんです」
猫を飼ったことのある人なら聞いたことがあるかもしれないが、正しい知識を持っている人は意外と少ない。正式名は、猫免疫不全ウイルス感染症、または猫後天性免疫不全症候群。感染した猫は、猫エイズの菌を持つ「キャリア」という状態になり、感染直後は「急性期」として、約2ヵ月ほど猫風邪のような症状が続く。この「急性期」が過ぎると、猫エイズとはわからない元気な猫として普通の生活を送ることができる。
しかし、猫エイズは感染症だ。すでに飼っている自分の猫に、他の猫から感染してしまったら…。そう考え、キャリアの猫を新たに受け入れようという家族は少ない。だが溝上氏は、「猫エイズは基本的には、ほぼ移りません。猫エイズにかかっても、ほとんどの子は命をまっとうできるので、猫エイズのワクチンは需要がなくなってしまったぐらいです」と断言する。
「多頭飼育でも、猫エイズの猫と一緒に飼養することは可能」
「猫同士が血を見るようなケンカをしたり、噛まれてしまうと感染してしまうこともあります。そのため、外猫だと交尾やケンカで感染してしまうことが多いんです。でも、室内で飼い、小さいうちに去勢・避妊手術をすれば、そのようなことはほとんど起こらない。感染する可能性は極めて低いと言えます」
つまり、必ず発症するわけでもなく、ほとんどの猫が寿命をまっとうできる猫エイズは、決して過度に恐れるべき病気ではないということ。「たとえ多頭飼育でも、猫エイズの猫と一緒に飼養することは可能です。免疫の病気なので歯肉炎になったりしますが、それはキャリアでなくてもそうなる子はたくさんいるので、ねこけんでは特に心配することもありません」。
ようやくナナがつかんだ“赤い糸”、正しい知識があれば恐れる病気ではない
しかし最近、ナナを「家族に迎えたい」と申し出る人が現れた。猫エイズ陽性と伝えても、その人は「何か問題ありますか?」と聞き返す。ナナに、やっと“赤い糸”がつながった瞬間だった。
100%、感染・発症しないわけではないが、正しい知識があれば、猫エイズは決して恐れる病気ではないことがわかる。発症させないためにはストレスをかけないこと。つまり家族の愛情により発症を遅らせることもできるのだ。猫エイズと知っても、新しい家族は丸ごとナナを受け入れてくれた。ようやく幸せが訪れたナナに祝福を送りたい。
(文:今 泉)
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