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「こんなに可愛いのに…」譲渡会で縁が結ばれない、猫エイズ陽性のナナがつかんだ赤い糸

  • 猫エイズ陽性のナナ(写真:ねこけんブログより)

    猫エイズ陽性のナナ(写真:ねこけんブログより)

 「猫エイズ」という病気をご存じだろうか? FIV(猫免疫不全ウイルス)というウイルスにより、猫が免疫不全になる感染症だ。エイズというと、HIVを思い起こし不安を覚える人もいるかもしれないが、人に感染することはない。今回、そんな猫エイズと診断された猫「ナナ」について、NPO法人『ねこけん』代表理事・溝上奈緒子氏に話を聞いた。譲渡会でも猫エイズ陽性がネックになり、縁が結ばれなかったナナ。その行く末は――。

新たな家族が見つからない、猫エイズ陽性と診断された猫

  • (写真:ねこけんブログより)

    (写真:ねこけんブログより)

 白黒のぶち猫ナナは、目がまん丸でとってもチャーミング。「獣医師さんが往診に行った際、その家のおじいちゃんがご飯をあげていた地域猫を見つけました。それがナナちゃんです。猫が大好きな獣医師さんで、ナナちゃんを保護して『ねこけん』に託してくれました」と、溝上氏はナナを保護したときの状況を語る。可愛くて、お転婆で、とてもキュートなナナ。しかし、なかなか譲渡会で新しい家族が見つからなかった。

 「獣医師さんが検査した結果、ナナは猫エイズ陽性だったんです」

 猫を飼ったことのある人なら聞いたことがあるかもしれないが、正しい知識を持っている人は意外と少ない。正式名は、猫免疫不全ウイルス感染症、または猫後天性免疫不全症候群。感染した猫は、猫エイズの菌を持つ「キャリア」という状態になり、感染直後は「急性期」として、約2ヵ月ほど猫風邪のような症状が続く。この「急性期」が過ぎると、猫エイズとはわからない元気な猫として普通の生活を送ることができる。

 しかし、猫エイズは感染症だ。すでに飼っている自分の猫に、他の猫から感染してしまったら…。そう考え、キャリアの猫を新たに受け入れようという家族は少ない。だが溝上氏は、「猫エイズは基本的には、ほぼ移りません。猫エイズにかかっても、ほとんどの子は命をまっとうできるので、猫エイズのワクチンは需要がなくなってしまったぐらいです」と断言する。

「多頭飼育でも、猫エイズの猫と一緒に飼養することは可能」

  • (写真:ねこけんブログより)

    (写真:ねこけんブログより)

 唯一怖いのは猫エイズが「発症」した場合。発症すると免疫機能が低下し、通常ではかからないような病原体に感染する。ただし、必ず発症するわけでもなく、感染力が弱いために空気感染や接触感染もしない。

 「猫同士が血を見るようなケンカをしたり、噛まれてしまうと感染してしまうこともあります。そのため、外猫だと交尾やケンカで感染してしまうことが多いんです。でも、室内で飼い、小さいうちに去勢・避妊手術をすれば、そのようなことはほとんど起こらない。感染する可能性は極めて低いと言えます」

 つまり、必ず発症するわけでもなく、ほとんどの猫が寿命をまっとうできる猫エイズは、決して過度に恐れるべき病気ではないということ。「たとえ多頭飼育でも、猫エイズの猫と一緒に飼養することは可能です。免疫の病気なので歯肉炎になったりしますが、それはキャリアでなくてもそうなる子はたくさんいるので、ねこけんでは特に心配することもありません」。

ようやくナナがつかんだ“赤い糸”、正しい知識があれば恐れる病気ではない

 猫エイズと診断されたナナは、しばらく『ねこけん』で暮らすこととなった。面倒見の良い賢い女の子で、少し人見知りだが、慣れるとベタベタの甘えん坊に変ぼうする。そのチャーミングさから、すぐに家族が決まるかと思いきや、猫エイズ陽性ということが引っ掛かり、譲渡会でもなかなか新しい家族が見つからなかった。それから数年。時折、譲渡の問い合わせがくるものの、猫エイズ陽性と聞いて尻ごみしてしまう人もおり、縁は結ばれないままだった。

 しかし最近、ナナを「家族に迎えたい」と申し出る人が現れた。猫エイズ陽性と伝えても、その人は「何か問題ありますか?」と聞き返す。ナナに、やっと“赤い糸”がつながった瞬間だった。

 100%、感染・発症しないわけではないが、正しい知識があれば、猫エイズは決して恐れる病気ではないことがわかる。発症させないためにはストレスをかけないこと。つまり家族の愛情により発症を遅らせることもできるのだ。猫エイズと知っても、新しい家族は丸ごとナナを受け入れてくれた。ようやく幸せが訪れたナナに祝福を送りたい。

(文:今 泉)
■NPO法人『ねこけん』(外部サイト)

■『ねこけん』オフィシャルブログ(外部サイト)

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