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「致死率ほぼ100%」コロナウイルス原因の死の病…乗り越えた子猫が完全復活、“悲壮感ゼロ”のイケメンに
100頭に1頭の確率で発症するFIP、『ねこけん』に出戻ったP太郎
FIPとは、多くの日本の猫が持っている猫腸コロナウイルスが突然変異を起こし、強毒化したもの。「FIPは、100頭に1頭という確率で発症すると言われています。このウイルスは腸内にいる限り、悪さはしないんです。もっと言ってしまえば、食道から肛門にいるときは悪さはしません。だけど、そこから体内に入り込むことで変異を起こし、FIPという恐ろしい病気になってしまうんです」と溝上氏は語る。
P太郎の家族と相談した結果、P太郎は再び『ねこけん』に戻ることとなった。なぜなら、FIPは致死率がほぼ100%の病であり、しかも、それを治療するためには未承認薬を使わなくてはならず、簡単に手に入るものではないから。家族もショックを受けていただろうが、「諦めずに必ず治す」という溝上氏の力強い言葉を頼り、P太郎を託した。
「P太郎を救うためには、海外で販売されている未承認薬を取り寄せ、84日間、飲ませ続けなければなりません。もちろんお金はかかりますが、この未承認薬によってFIPは死に至る病ではなくなる可能性が高くなるんです」
P太郎救った未承認薬、「すべての病院が取り寄せているわけではない」
長期間の投薬は猫にとってもケアをする人にとっても大変なことだったが、早く治療が始められたことが幸いしたようで、P太郎はみるみる元気を取り戻していった。毎日同じ時間に1日も欠かさず投薬を重ね、細かく体調を見守られたP太郎は、既定の期間投薬を終えると、病状はほぼ寛解。こうなると、根っから能天気で明るい性格のP太郎は、もはや悲壮感ゼロ。すっかり元気な若猫となり、かかった経費も時間も心労も、すべてを吹き飛ばしてくれたようだ。
「基本的に、猫腸コロナウイルスが腸から体内に入り込んでも、ウイルスを叩ける免疫力があればFIPになることはありません。ただ、自己免疫がしっかりしていないと、猫腸コロナウイルスが強い病原性をもつ強毒株に体内で突然変異、結果としてFIPになってしまいます。そのため、自己免疫がまだ形成されていない子猫や、衰えている老猫が発症する事が多いんですね。まれに大人の猫がかかることもありますが、それはストレスによる自己免疫の低下が影響しているようです。例えば多頭飼育崩壊でストレスが溜まってしまったとき、不妊去勢手術やワクチン接種で自己免疫が落ちてしまったとき。そういったことがきっかけで、FIPを発症することがあります」
猫にとって“死の病”とも言えるFIPだが、P太郎が寛解できたように、投薬治療によって生存率は極めて高くなる。ただ、前述のように未承認薬であるため、海外から新薬を取り寄せる必要があるのだ。
「すべての動物病院が、FIPの未承認薬を取り寄せているわけではありません。飼い主さんはネットなどでよく調べて、病院に連れていくことをお勧めします」と溝上氏。『ねこけん動物病院』では未承認の輸入代行を行い、現在では10以上の動物病院と契約。FIPについて相談に来るたくさんの人たちに、病院を紹介しているそうだ。
“死の病”に苦しみ、投薬治療を乗り越え、FIPに打ち勝ったおかっぱP太郎。その後、すべての事情を知り、受け入れてくれる新しい家族との出会いもあった。今、P太郎は新たな場所で、のんびりと幸せな時間を過ごしている。
(文:今 泉)
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