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「川底で死を待つだけだった」保護猫が奇跡の復活、イケメンになり会心のウィンク
「ケンカか、故意に落とされたのか…」消防でも救助できなかった猫を保護
そんな緊急の相談が、ある日『ねこけん』に入った。相談者は、猫を助けて地上に放してくれさえすれば良いとのことだったが、それだけでは済まされない。保護した猫がケガをしていた場合は治療をし、不妊去勢手術がされてなかったら手術は必須。そして猫が健やかに暮らせるように、新たな家族を探すのが『ねこけん』の役割だ。「大切なのは命を救うこと」、と溝上氏は言う。
「実はこの川にはよく猫が落ちてしまっていて、これまでも5〜6回救出したことがあります。何かに驚いたのか、ケンカしたのか、もしかしたら故意に落とされた猫もいたかもしれません。2匹同時に落ちていた猫を救出したこともありました」。
連絡があった日、川の水位は低いものの、雨が降れば危険な状態。早速、ボランティアメンバーが集結してレスキューに向かった。
猫は最初、川の下の大きな排水口の中におり、消防署の署員が2度も救出しようとしたが、奥へ奥へと逃げてしまい捕まえることはできなかったという。溝上氏によると、猫を捕まえるためにはコツがあるそうだ。
「消防の方に来ていただけるのはとてもありがたいことなんですが、捕まえることは難しいと思います。やっぱり、消防車のサイレンが鳴ったりすると、猫もおびえてしまうんですね。だから、うちにレスキューの相談があった場合は、消防は呼ばないように伝えています」。
素手や虫取り網のようなもので捕獲を考えても、おびえる猫を捕まえることは容易ではない。『ねこけん』のレスキューで毎度登場する、“捕獲器”は必須。一度は排水溝の奥へ姿を消してしまったが、捕獲器を仕掛けて約1時間後には、メンバーの手で猫は無事に保護された。
“ドボン”と名付けられた猫、顔デカ兄猫と出会い仲良く暮らす
そんなドボンについて、溝上氏は「もしかしたら飼い猫だったかもしれない」と言う。というのも、首輪の跡らしきものがあり、腕にはバリカンで剃られたような跡も見受けられた。さらに、触っても嫌がらず、人慣れしている。「飼われていて逃げ出したか、もしくは川に落とされたのか。我々は想像することしかできず、真相を知っているのはドボンだけなんです」。
保護された当初、おなかはぺちゃんこで鼻の頭にケガもしており、元気がなかったドボン。外での生活の過酷さが伝わってきたが、ボランティアメンバーからの愛情を受け、みるみる本来の姿を取り戻した。しょぼくれた姿からは想像できなかったが、本当のドボンはかなりのイケメン猫だった。
最初はシェルターへ移されたドボンだったが、相性の悪い相手がいたために、預かりボランティアの家へと移動。そこで出会ったのが、姿形も性格も似た猫・虎吉だ。虎吉は、薬品をかけられるという虐待を受けた元地域猫で、『ねこけん』に保護されたことで、こちらもすっかりイケメンになっていた。顔はデカいが気は小さい、虎吉とドボン。蚤の心臓同士気が合ったようで、ドボンと虎吉は兄弟分のように仲良く暮らした。
空腹と喉の渇きに耐えながら、川底で孤独に死を待つだけだったドボン。虎吉との穏やかな生活ののち、今では優しい家族とも出会った。生命の危機におびえることなく、元気いっぱいに生きている。
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