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新宿歌舞伎町で「ネズミ捕り」に引っかかった巨猫、呼べば「にゃ〜」と答える安心の保護猫生活
歌舞伎町で働く人々の癒し、8キロの巨猫“ネズミ捕り”の餌食に
「歌舞伎町って、実はすごく猫ちゃんが多いんです。働いている人たちも猫ちゃんを好きな方が多くて、ご飯をあげたり、可愛がってくれる人たちがたくさんいて。そのせいか、すごく繁殖してしまっていたところを『ねこけん』で一斉にTNRを行いました。去勢・避妊手術をして、リリースをするのが基本なのですが、たまちゃんはネズミ捕りに引っかかっていたので、うちで保護したんです」。
歌舞伎町は裏路地も多く、地域猫にとっては隠れるところも多い絶好の住処。麻布十番でもTNR活動を行ったことがあるが、歌舞伎町ほどは多くなかったという。この街は水商売の人も多く、もしかしたら地域猫たちが心の癒しになっていたのかもしれない。「たま」も歌舞伎町の人たちに可愛がられており、ある日突然、姿を見せなくなったことを心配されていたそうだ。
保護された「たま」が引っ掛かったネズミ捕りは粘着力が高く、無理にはがそうとすると肌まで傷つけてしまう可能性がある。ネズミを駆除するためのネズミ捕りだが、実は地域猫にとっても天敵。足にからまれば身動きが取れなくなり、鼻や目に貼り付いてしまえば自力では取れず、呼吸を妨げ視力も奪ってしまう。子猫に貼り付いてしまえば、場合によっては猫の命までからめ取る恐ろしい罠なのである。身体中にネズミ捕りのシートを貼り付けていた「たま」を見つけたボランティアも、この状態でリリースするのは難しいと判断し、保護に至ったという。
“駆除”される地域猫、「殺処分ゼロを目指しても何の解決にもならない」
「どんな命も同じ重さを持っているはずなのに」と現状を憂う溝上氏は、“駆除”への苦い思いを味わった、ある事例を明かしてくれた。
「一人暮らしで4匹の猫を飼っていたおじいさんが、体の自由もきかなくなり、家中、糞尿だらけになってしまったと相談を受けました。おじいさんは保健所に電話をしたそうですが、『元気な猫ならば引き取るのは難しい』と言われたと言っていました」。
最近では、犬猫の殺処分ゼロを掲げる地域も多い。それは素晴らしい取り組みではあるが、市民からの引き取り依頼を拒むことで“殺処分ゼロ”を謳うなら、その動物たちは一体どこへ行くのか。街や野に放されたり、虐待を受けたりするようなことはないのか、疑問が残る。
「いくら行政が殺処分ゼロを目指しても、ゼロにするために引き取らないのであれば、何の解決にもなっていません。その猫ちゃんたちの未来はどうなってしまうのか…。行政には、できれば譲渡会を紹介するなどをして、猫ちゃんたちの未来に繋がる解決策に取り組んで欲しいです」と訴える。
「たま」もまた、こうした生命の危機から救われた地域猫。今では『ねこけん』メンバー宅で、大きな体を揺らしながら呼び声に「にゃ〜」と答える日々を送っている。新たな家族も、絶賛募集中だ。歌舞伎町で暮らしていた「たま」の幸せな未来を願うばかりである。
(文:今 泉)
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