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『テニプリ』作者・許斐剛が語る、令和における漫画家の在り方「漫画家が漫画だけを描く時代ではない」

漫画家が漫画だけ描くという時代ではない、「広告塔みたいになってもいい。漫画につなげていきたい」アーティスト活動の真意

  • 劇場版『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』メインビジュアル

    劇場版『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』メインビジュアル

――先生は、今回の劇場版でも全劇中歌を担当されたとのことですが、何曲ほど作成されたのでしょう。

許斐剛新曲としては7曲ですね。連載しながらなので大変でしたが、ロックやラップ、ポップやニューミュージック、バラードなど、いろんな世代に届くよう、すべて違うジャンルで作りました。

――さらには劇場版の制作総指揮も。先生自ら作品の盛り上げに、漫画家の枠から飛び出て携わる原動力とは?

許斐剛とにかく、ファンの皆様に喜んでもらいたい、それだけですね。それに漫画家が漫画だけを描くとか、そういう時代ではないんじゃないかと思っていて。野球の大谷翔平選手の二刀流のように漫画家だけど、ミュージシャンとして活動してもいい。何をやってもいい。ですが、中途半端ではいけません。漫画家が歌を作るとなったら、皆様は「どういう曲? 聞いてやろうじゃないか」ってなりますよね。そこで「意外といけるじゃないか」と思ってもらわないと失敗なんです。「何だこの程度か」と思われたら元も子もないので、毎回が勝負です。

――漫画も音楽もイベントも、すべて全力なんですね。

許斐剛イベントも企画からすべてやっていますけど、せっかく皆さん足を運んでくださるわけじゃないですか。映画もそう。わざわざ時間を割いて観てくださる。ですから「来てよかった」「観てよかった」と思ってもらえるように手を抜けない。“普通”じゃ嫌なんです。サプライズや新情報、お土産グッズなど、様々なおもてなしをしたい。

――だからこそ、先生ご自身にも注目が集まっているわけですね。

許斐剛漫画を宣伝するためにいろんなことをやって話題を作って。漫画を読んでもらうための広告塔みたいになってしまっても、何を言われてもいい。いろんなことに挑戦して、漫画につなげていきたいです。

「新しいものを作りたい気持ちは捨てた」 『テニプリ』と生きる覚悟決めた今、「一番ノっている」

劇場版『リョーマ!』場面カット

劇場版『リョーマ!』場面カット

――先生からは、エンタメに対する激しい情熱を感じます。

許斐剛漫画で出来る面白いこと、誰もやってないこと、挑戦をどこまで出来るか…。実は『テニプリ』が連載終了した後、別のファンタジー作品を描きたかったんですよ。『新テニ』を連載しながらこっそり、一年半ぐらい描き進めていたこともありました。ですがなかなかそちらは形にならず。同時連載を始めるためにアシスタントも人を増やしたり、育てたりしていたのですが(笑)。

――別作品の構想は、今も温めているのでしょうか。

許斐剛…今思うと、両方をやっていたとしたらどちらかがおろそかになっていたでしょう。それに『テニプリ』を100年後も遺る作品にしたかった。そのためにも、読者のためにも、失礼なことをしてはいけない。結局、新しいものを作りたいという気持ちは捨てました。諦めるまでに3年ほどかかりましたが(笑)。でも『新テニ』に集中したことで、映画の話をいただけたなど、自分的にはこの22年間で今が一番ノっているな、という印象があります。

――これからも『テニスの王子様』の展開が楽しみです。

許斐剛少年にももっと読んでもらえる作品にしていきたいです。そんな想いから、今回の映画の劇中歌にラップを入れました。構想当時、中高生の間でラップバトルが流行っていて、リョーマくんがラップを歌いながら、アメリカのギャングをやっつけたら格好いいぞと思ったからです。今回の映画には、皆さんがまだ観たことのないものがたくさん詰まっていると思います。音楽もそうですが、驚くような仕掛けも施してあります。『テニプリ』を知らなかった人でも楽しめるよう作っていますので、原作ともども楽しんでくれるとうれしく思います。


(取材・文/衣輪晋一)

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