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ORICON NEWS
「そこに愛はあるんか?」、『アイフル』CMの決めセリフ誕生の背景
キャスティングの要は“やらなそうな人” セリフ少ない今野あってこその大地真央の存在感
「女将さんのキャスティングは、“この役をやらなさそうな人”がやるのがポイントだと考えました。フレンドリーな語り口の方やバラエティタレントの方では、それほどインパクトはない。そこで、凛としたキャラクターでありながら、関西出身でユーモアセンスも高い大地真央さんにお願いすることにしたのです。そして、大地さんとのバランスを考え、相棒役として、今野さんにオファーをしました。今野さんのセリフは少ないのですが、この世界観になくてはならないニュアンスを出せる方だったということが決め手でした」(クリエーティブ・ディレクター・山崎隆明氏/以下同)
キメ台詞である「そこに愛はあるんか?」はどのように生まれたのか。
「まず、アイフルは何を大切にしている企業なのかを探っていく中で、アイフルの“アイ”に注目。そこから“愛”というキーワードを見つけました。“愛”は、人が生きていく上でとても大切なこと。普遍性もあるし、あえて今の時代に世の中に発信する言葉としても悪くない。そこで『愛がいちばん。アイフル』というキャッチフレーズを考えたのですが、このコピーはインナーワードとしても汎用性があるし、どんな状況においても使える言葉だな、と。なおかつ、同業他社と一線を画すメッセージでもあるのでいいなと思いました」
「“面白さ”と“暑苦しさ”は紙一重」絶妙なバランス生み出す、大地真央の即興性
「同CMのようなユーモアのある企画は、無条件に面白がってなんでも演じてくださる方より、こだわりが強く、その交渉が大変でハードルの高い方とご一緒した方が成功の確度が上がることがあるのです」
「他にも、例えば『写真撮影会』篇で大地さんにコスプレ衣装を着用いただいた時、企画そのものが“はしゃいだ”感じに見えるので、『少しおさえ目で、品が良いイメージで演じてください』とお願いをしました。ところが、大地さんの提案で甲高い(萌え)声でキャラ作りをされました。私としては『ちょっとやりすぎかな』とも思ったのですが、撮影した結果、CMの仕上がりとしては、非常に良いものになりました。大地さんは毎回、ご自身の役柄に全力投球ですし、企画を読むセンスが抜群なんですね。真剣にやる中で、お互い意見を出し合いながら、よりよい CMにしようと一体感を持って取り組めているからこそ、企画や演出だけでは生めない楽しさが実現できていると思います。」
「CMを企画するとき、私は打ち合わせでお会いした方のイメージが企画の取っ掛かりになったりもします。アイフルさんの社員の方々は、誠実さと人の良さがあふれていました。これが伝わるのが広告として一番だと考えたのです。もちろん時流ネタなどを活かすこともありますが、そこに乗っかりすぎるとアイフルさん自身が“はしゃいで”見えてしまう。アイフルさんが本来持つ誠実で真面目な姿勢を大切にしつつ、視聴者のみなさまに楽しんでいただくという微妙なバランス。もっとはっちゃけた企画も作れるかもしれませんが、地平線から足が浮いてしまわないように気をつけています」
日常がシリアスな今、CMにもより楽しいもの、笑えるものが求められている実感
「視聴していただくには、何をやれば意外性があるか、ということが大切であり、一発目が当たったからと言って二発目に同じことをやると飽きられてしまいます。そうした“発想”と、先述の“バランス”を持って制作しているのですが、コロナ禍の昨今、企業の一方的なメッセージを込めたCMよりも、楽しんで観られるものの方が受け止められているように思えます。これは現在、日常がコロナ禍などでシリアスであることが無関係だとは思えません」
そんな想いで制作が続いている同CMシリーズの撮影風景についても聞いてみた。
「コスプレの件も含め、毎回驚きの連続ですが、特に印象的だったのが『デリバリー女将』篇の撮影での出来事。女将さんに扮する大地さんがCMで使用する自転車に乗って、ずっと練習をされていたのです。一流の女優が自転車に乗る練習をする光景なんて、なかなか見られる絵ではない。それに現場が和んだことを覚えていますね」(同氏)
今後の制作について「『そこに愛はあるんか?』という言葉がある限り、何をやってもアイフルのCMになる構造になっています。今後も、常に裏切りのある、次はそう来たかと思ってもらえるような女将さんを描いていきたい」と山崎氏は言う。そして、「これまでのような制作側と大地さん側のディスカッションも続けていきたい」と唇を引き結ぶ。“愛”をテーマにした大地真央、アイフル、制作側のセッション。そんな同CMは今後も我々を驚かせてくれそうだ。