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『聖☆おにいさん』中村光、育休中は「ものすごく不安だった…」乗り越えた商業漫画家の原動力
『聖☆おにいさん』のギャグに加え、“能力バトル”にも挑戦した新作
中村光さんそうですね。普段はわりとコマゴマした絵を描くタイプですし、漫画で見開き絵を描くのも本作が初めてです。もともとバトルを描く予定はなかったんですよ。ところが物語を進めていくなかで、キャラクターたちが、自分が思っていたのとは違う行動をするようになりまして、これはもう相手を倒さないことには先に進まないなと、慌ててバトルの描き方を勉強したりしました(笑)。
──それってよく言う「キャラが一人歩きする」という現象ですか?
中村さんもちろん物語の大筋やゴールは決めた上で連載を始めるわけですが、ゴールに向かう道筋で起こったイベントで主人公が、思わぬ成長をしたりする。そこがストーリー物の少年・青年誌的な漫画を描いていて面白いところですね。『聖☆おにいさん』みたいな漫画だと、キャラクターの成長はあり得ないですから。描いていてとても新鮮です。
──ブッダやイエスが成長したら変ですね(笑)、ある意味、大いなるマンネリの面白さです。
中村さん私は作品ごとに違う漫画家が描いているのかな? と思われるくらい作風を変えたい願望があるんです。『聖☆おにいさん』も、私の中で「この2人が成長しないことに耐えられない!」と感じたときには連載を終了すると思います。
──ギャグの要素で人気を保ち続けることはすごいことです。
中村さん『聖☆おにいさん』は日常系の物語で、“ゴリゴリのギャグ”ではないんですよね。ギャグ漫画家さんって、毎回コントのようにいろんなギミックで笑わせてくれますが、それってかなり大変そう…。私の場合、キャラの性格は決め込まず、前のストーリーを受けた印象からキャラ性をつけ足していくという作業です。そうすると、自分のなかでのキャラが新鮮さを保っていられるんですよね。
育児で自由が利かない状態、「周囲に協力を求める」勇気も
中村さんものすごく怖かったし、前のようには描けないだろうなって気持ちになりました。未来が見えない状態といいますか…。今まで自分のことだけにフォーカスして書いてきましたが、育児で自由が利かなくなった状態で書けるのか、という恐怖です。
──その恐怖を、どうやって乗り越えたんですか?
中村さんどうしても時間が取れなくて、描けない時間が続いたときに、一方で「すごく描きたい」っていう願望がどんどん膨らんでいったんです。あとは、それを実現させるために人に頼ったり、スケジュールを変えてもらったり。描きたいんだからやるしかないという…。不安でしたけどね。
──さすが、それも商業作家として成功されてきた秘訣ですね。これまでにスランプに陥ったことは?
中村さんものすごくありますよ、毎回「描けない」って思うタイプです(笑)。でも、スランプって精神的な余裕のなさから来るものだって気づいたんです。自己評価が低くなると、過去の作品がよく見えて何を描いても納得いかなくなる。でも、身体と精神が元気だと何を描いても楽しめるんですよ。