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有効成分は“ウソ”? 『偽薬』が人気の理由「効かないことに価値がある」

子どもの緊張抑制や自分の薬の飲みすぎ防止のために買う人も 偽薬のデメリットは?

――偽薬の原材料は、どのようにして選ばれたのでしょうか?

水口さん主成分は還元麦芽糖です。製造を委託している健康食品の会社が他の食品でも使っているものになります。糖質なので少し甘みがありますが、感じる人もいれば、感じない人もいるようです。

――実際に発売されてみて、反響はいかがですか?

水口さん大々的に告知をしていない時から見つけて買っていただいたり、リピートしていただいたりして、需要がある感触はありました。介護施設などから「実際に使ってみて有用だと思った」「思いつかなかったアイデア」など、様々な声をいただきました。
――購入されているのは、どのような方が多いのでしょうか?

水口さん病院や介護施設などで、介護用途で使っていただいている印象はあります。あとは、お子さんの酔い止めや、習い事の発表会で緊張しないように使われている方もいて、様々な使われ方があるなと思いました。それから、自分で飲むために買う方もいらっしゃいます。オーバードーズと言われる薬の過剰摂取をしてしまう方や薬依存に悩む方は、辞めようと思っても辞められないケースもあります。であれば害のない物を飲もうと、選んでいただいている方もいるようです。

――偽薬を使うことで、抑えられることがあるんですね。

水口さん“握薬”と言って、薬があるから気持ちが落ち着くことがあるんです。パニック発作があるけれど、手元に偽薬があることで安心して発作がおさまっているという方もいらっしゃいました。
――たとえば、ラムネやタブレットを「薬」だとするよりも『プラセプラス』を利用するメリットはどのような点でしょうか?

水口さん問題が解消されるなら、何でもいいと思うんです。ただ、包装が本物っぽい方がよかったり、使っていることを気づかれたくなかったりする場合もあります。あとは、物自体よりも、情報と言う観点で重要かなと。介護で薬を飲みたがることに困っていて、ラムネ等で代用しようという発想がない場合、「介護用の偽薬です」というものがあれば、困っている人に届きやすくなる。困っている人は、同じような方がどうやって対処しているかという情報を求めていますよね。そういった意味で、Amazonなどでレビューが見られるのは、利点かなと思います。

――では逆に、偽薬を使うことによるデメリットやリスクは?

水口さん偽物だと分かった時に信頼関係が壊れる可能性があります。“いつも飲んでるこの薬”に対して強い依存がある方もいるので。その薬にそっくりなものを作って欲しいというリクエストもありますが、そのままはできないので。ある程度似たものを、いろいろなバリエーションで出せるのが理想です。

これまでの“だますもの”から、きちんと「偽薬」と伝える“オープンラベルプラシーボ”へ

――偽薬の開発や販売を通して、新たな発見はありましたか。

水口さん今7年目で商品としての偽薬は珍しいものとして扱われていますが、古くから医療業界や介護業界で偽薬的に使われてきたものはたくさんありました。ただ、今までは“表に出せないもの”という認識だったのが、最近になって『プラシーボ効果』を科学的に解明しよう、偽薬を医療に活用しよう、という話が出てきている動きがあります。

――業界内でも偽薬の受け入れ方が変わってきているのでしょうか?

水口さんそれは感じますね。『病は気からを科学する』という本がプラシーボ効果をポジティブに捉えていたり、医療応用を視野に入れていて、イメージはかなり変化していると思います。今までプラシーボ効果は、患者さんに本物を飲んでいると思い込ませるという考え方でしたが、今はラベルを隠さずに偽薬だと伝えるオープンラベルプラシーボも出てきています。これまでは“だます”という倫理的な課題がありましたが、表に出すきっかけになりましたし、良い方向に変わってきていると思います。
――「偽薬」という響きだけだとネガティブなイメージを持たれているように感じます。偽薬の意義をどのようにお考えですか?

水口さんそこはすごくナイーブな問題でもありますね。他社が持っている医薬品を模倣した「偽造医薬品」を「偽薬」と称することもあって、それも間違いではないので難しいところではあります。「偽薬」という字だけ見たら確かに印象が悪いのですが、変えることは難しいので、プラセボ製薬という社名にしている部分はあります。

――今後、偽薬の課題をどのように考えていらっしゃいますか?

水口さん偽薬を知らない人がパッと見た時に受けるイメージが悪すぎるという問題はありますよね。偽薬ではなく「喜薬」と呼ぼうと提案している教授もいますし、中国語では「安慰剤」と呼ばれているんですよね。違った観点からだと、米津玄師さんの最新アルバムで「プラシーボ」という曲があって。そこで初めてプラシーボ効果や偽薬を知る方もいらっしゃいます。海外でも「プラシーボ」というイギリスの人気ロックバンドがいて、そういった表現する立場の方が題材にしてくださることで、いろいろ変えていただけることもあるのかなと思っています。

――今後、偽薬をどのように利用してほしいですか?

水口さん今は物珍しい商品として取り上げられていると思いますがが、もっと普通なものとして、どのドラッグストアでも売っているようになればいいなと思っています。例えば、数字のゼロって何もないことを表す数字ですよね。大昔はゼロを使わない社会で、そこにゼロを持ちこんだら大きな反発があったそうです。でも今は普通にあって、なくてはないものとして受け入れられ広まっている。それと同じことが偽薬にも起こると良いなと思っています。


(文=辻内史佳)

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