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ハブ化する『有吉の壁』 ブレイクスルーへと導く純度100%の“お笑い番組”の重要性
「くっだらね〜」に価値を見出し“令和の内P”の立ち位置を形成
放送当初から「〇〇の壁を越えろ!」というテーマを設定し、若手芸人とちょいベテランの中堅芸人が多数でわちゃわちゃネタを繰り広げていく…という基本フォーマットは変わらない(正式コンセプトは「次世代を担う若手お笑い芸人たちが、有吉弘行が用意した『お笑いの壁』に挑戦し、壁を越え芸人として成長する」番組)。
多数の若手芸人(中堅も含む)が出演してアドリブ力を問われるバラエティ番組は、過去にも『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)や『内村プロデュース』(テレビ朝日系/以降、内P)などがあり、いわば定番ともいえる企画。そして有吉自身、猿岩石の大ブレイク→人気急下降のどん底時代をたどり、内Pに出演することで転機を迎えた。
内村やさまぁ〜ずといった面々にいじられつつ、有吉は顔をミュージカルのCATSふうにペイントした猫男爵というキャラに扮したり、牛乳を口に含んで爆笑しては吐き出す的な脇っぽい扱いを受けながらも、しっかりと役割を認識し存在感を提示、再ブレイクを果たしていくのである。その後の毒舌キャラの大ブレイク前夜、いわば“助走期間”ともいえる内P出演だったが、有吉は当時起用してくれた内村やさまぁ〜ずに対して感謝のコメントもしている。
壁ならぬ『有吉の恩返し』、自身を救った純度100%“お笑い番組”で後輩芸人に笑いを継承
ただ、内P以降は芸人の活躍の場がひな壇中心となり、芸人が純粋にお笑いで勝負できたのは『エンタの神様』(日本テレビ系)ぐらいか。番組自体もそうだが、そこでブレイクした芸人自体も短命で終わることが多かった。
ほかにも『M‐1グランプリ』(テレビ朝日系)や『キングオブコント』(TBS系)のようなコンテスト系の番組もあるが、出演者も視聴者ももっと肩の力を抜いて楽しめるようなお笑い番組が減少傾向にある。“お試し”的に芸人を起用できるフォーマットを持つ『有吉の壁』の存在は、今や非常に貴重なものとなっている。
ひな壇向きではないコント職人タイプの芸人もたくさんいるだけに、純粋にネタだけで判断される番組は、まさに“芸人冥利に尽きる”。加えて、このコロナ禍においては、つい気持ちが後ろ向きになりがちな視聴者にとっても、「エンタメ(お笑い)っておもしろいんだな」と再認識させてくれる場となった。実際、SNSでは「何も考えずただ笑って見れる有吉の壁に救われた」といったコメントも多数、散見されるのだ。