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1日に何十回も手洗いを…強迫性障害の漫画家が語るコロナとの向き合い方
鍵を閉めたのだろうか…几帳面で心配性な性格だと思っていたら強迫性障害だった
菊晴さん 強迫性障害だと知ったのは、6年ほど前のことです。カウンセリングを受け振り返ってみると、その4年ほど前からすでに症状が出始めていたことに気がつきました。今では10年が過ぎ、そのうち強く悩まされた期間は、7年ほどだと思っています。
――病気だとわかるまではいかがでしたか?
菊晴さん 当初は、人付き合いがあまりうまくなかったため、人間関係に悩んでカウンセリングを受けようと思いました。ところが、カウンセリングの回を重ねるごとに、私が感じている「不安」が浮き彫りになり、医師から「強迫性障害」と告げられました。不器用な人付き合いだけでなく、アルバイト先などで「なぜ書類を何度も確認しているのか、変だ」と言われたこともありました。強迫性障害の症状により、周囲との関係がぎくしゃくしていたようです。
――異変を感じた時、どのようなの状況だったのでしょうか?
菊晴さん “鍵を閉めたのだろうか?”と不安になり、きちんと閉まっているか確認することは、皆さんも普通にあることだと思います。もともと几帳面な性格で、心配性なのだろう…と思う程度のことで、それがまさか病気だという考えに至りませんでした。次第に戸締まりの確認に多くの時間を費やし、自分でも「おかしい」と感じるようになりました。「病気」であることを医師に告げられた時は、驚きもありませんでした。
――強迫性障害とは、どのような病気なのでしょうか?
菊晴さん 基本的には、何らかの「強迫観念」が浮かび、それを打ち消すために「強迫行為」を行い、それをやめたくてもなかなかやめられなくなる。例えば私の場合、「鍵を閉めたかな?(強迫観念)」と不安になり、「何度も確認(強迫行為)」することで時間を浪費し、日常生活に支障が出ました。誰しも不安になることはありますが、その不安を過剰に感じ始めると生活に支障が出てくることもあり、問題になる可能性があるということです。
誰かに迷惑をかけてしまう…病気をうつすかもしれないという強迫観念
菊晴さん 自分のせいで誰かに迷惑をかけてしまうことがとても怖かったです。「何らかの菌に感染し、人に病気をうつして、相手は命の危機に陥り、自分が犯罪者になってしまう。いや、もう知らずして誰かにうつしてしまったかもしれない…大変だ!」と不安でたまらなくなり、生きた心地がしませんでした。
――では、コロナ禍ではどのように過ごしていたのでしょうか?
菊晴さん 新型コロナウイルスがテレビで報道され始めた時、せっかく改善した症状をぶり返しかねないと焦りの気持ちがわきました。具体的には、手洗いが過剰にならないよう気をつけています。そのほか、厚生労働省や行政のサイトなどを見て、どう対処していけば良いのか、必要な情報を得ることもあります。ですが私の場合、ウイルスの画像を見たり、それに関する情報を検索し、多くの情報を得ると不安が増す可能性があるので、過剰に調べないようにしています。
――漫画では「すれ違った人にも危害を加えたかもしれない…」という話もありました。
菊晴さん その「人に対する加害の不安」から引きこもりがちになったのですが、それが改善して、外出する際の過度な緊張がなくなったというのに、今度は新型コロナウイルスで外出自粛と緊急事態宣言が出されて、「まさかこんな時代が来るなんて…」とその時は複雑な心境でした。
――実生活ではいかがでしたか?
菊晴さん コロナ禍においては、人とすれ違う時に、強迫性障害の症状で悩んでいた当時と同じ行動をとれば、人と距離を取ることができます。例えば、人が多い時間帯に買い物は避ける、店内では人がいる通路の買い物は後回しにする。それがかつて当たり前だった私にはソーシャルディスタンスと言われ始めても、特に抵抗はありませんでした。これまた、複雑な心境です。