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暴力団の組長争い? 60年続く『のぼりべつクマ牧場』“歴代ボス”の紹介文が話題「性格が顔に出るのは人間と同じ」
「慰めてやりたいくらい」ボスの座を退くと、数日間ひたすら落ち込むクマも…
吉見さんその年のメンバー・状況により様々なボス争いが繰り広げられます。ボスは、他個体には圧倒的にケンカの強いクマとして認められることで、ケンカを抑制し、争いが減少します。飼育員は、その強さに関連するケンカの勝敗や繁殖期に頻繁に見られる背こすり(マーキング)の頻度、それらに個体の性格を加味してその年のボスを決定しています。ボスグマは、他個体からも飼育員からも認められた存在です。
――ボス不在期間もあるようですが、ボスがいない際の群れはどのような状態に陥るのでしょうか。
鳴海さん力の強い第1位のクマ「ボス」がいると、定期的に牧場内を巡回(みまわり)し、自分の力を誇示します。これは、他のクマを圧倒し不要なケンカをなくす効果もあります。また、ボスにはケンカの仲裁も見られます。仲裁といってもケンカの中に割り込んで行き、今までケンカをしていたクマが、ボスという自分より強いクマが来たことにより、とばっちりを受けたくないためその場から離れ、結果的にボスが仲裁したように見えます。そのため、ボスが不在だと、ケンカが多くざわざわとした不安定な群れとなる傾向にあります。
鳴海さん毎年5月から7月中旬の発情期に、ボス争いに関わる動きがあります。力を付けてきたクマがボスに対して挑み、その多くは1対1の直接対決で行われます。1度の対決で交代する時もあれば、ボス争い期間中に数回の対決がみられることもあります。ここで勝利したクマがボスの座に就きます。まわりのクマたちもそれを感じ取り、ボスとして認めます。ボスを決定する期間中に第1位となったクマは、マーキングの回数も他に比べかなり多くなります。ボスの座から退くと、慰めてやりたいほど数日間ひたすら落ち込むクマもいます。
クマ牧場の始まりは、孤児の小グマを救うため「北海道のヒグマを滅ぼしてはいけない」
吉見さんダイキチは、今年で8年連続ボスの座に輝きました。ボスとなるクマは性格が優しいクマが比較的多いと聞いていますが、ダイキチの性格は優しいという言葉で表すのは難しく、身にまとう雰囲気が他個体とはまるで違います。威厳を放つ風格で、心の奥底に優しさが垣間見えるというような感じでしょうか。体の大きさと他個体の力を借りてボスとなっていると思いますので、力づくでボスの座を維持するのではなく、他の個体から尊敬されるような魅力的なトップになってもらえればなと思います。
――今後、ダイキチ率いるクマたちにどのような群れに成長していってほしいですか。
吉見さんボス争いが行われる第一牧場には、現在5頭のオスグマが生活しています。全て同じ年にのぼりべつクマ牧場で生まれた、14歳(2020年現在)のクマです。同じ年に生まれ、14年間生活を共にし、他の年代が同居していた時には、ボス争いの時期に活発になる行動を皆で封じこめてきました。これまで同年代だけでの展示はなく、現在の群れの絆はどこよりも強いと思います。のぼりべつクマ牧場の顔として、魅力あふれる大人の群れになっていってほしいです。
坂元さんクマ牧場が開園したのは昭和33年です。当時の北海道は、ヒグマを害獣と位置づけて積極的に駆除していました。クマの動きが鈍い冬眠中や冬眠空けを狙っての捕殺(春グマ駆除)も行われていました。ヒグマは冬眠中に出産しますが、春グマ駆除で母グマが捕殺され、孤児となった子グマが全道各地に存在していました。クマ牧場の創業者(故・加森勝男氏)は、ヒグマが絶滅に追い込まれている状況を憂い、北海道のヒグマを滅ぼしてはいけないと全道から孤児の子グマを集めてクマ牧場を作ったのが始まりです。
――ヒグマを飼育する上で、どのようなことが大変ですか。
坂元さんヒグマは特定動物に指定されており、飼育施設や管理方法にも厳しい基準が設けられています。飼育しているヒグマが逃げ出さないように管理することが、大変というかとても気を付けないといけないことです。好きで就いた仕事なので、ヒグマの飼育に関してはあまり大変だと感じる事はありませんが、個人的には歳を取るにつれ体力の衰えを感じ、力仕事(麻酔したクマの体勢を変えたり、引っ張って移動させたり、重い餌を持ったり、などなど)が大変になってきました。