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「YouTubeはTVから覇権を奪ったのか?」同社No.2がその問いに回答 日本人クリエイターの更なる可能性にも言及
日本のクリエイターは世界の規範、“新たな才能”が続々と参入している
ロバート・キンセル 客観的に見て、目覚ましい成長を見せていると言って良いでしょう。特にアジア太平洋地域では、登録者数100万人以上のチャンネルは3,000以上に増加。これは、2018年から2019年にかけて180%以上の成長を見せています(2019年6月現在)。また、投稿されたコンテンツの時間総数も、2018年6月から2019年6月の間に40%以上増加しています。
――日本国内のYouTube市場については如何でしょう?
ロバート・キンセル 素晴らしい!の一言です。視聴時間や収益、そしてクリエイター(YouTuber)のエコシステムという点でも日本は非常に規範となる動きを見せています。私自身も日本が大好きなんです。コロナの影響でスムーズに行けないのが残念ですよ。
――現状、YouTube全体の視聴時間ですが、ジャンル別での内訳はどのような割合になっているのでしょうか?
ロバート・キンセル 総視聴時間については、全体の50%がクリエイター(YouTuber)によるコンテンツ、25%は各種メディアによるコンテンツ。残りの25%がミュージックアーティストによるコンテンツとなっています。メディアやミュージシャンは、YouTubeが普及する以前からコンテンツを発表していましたがYouTubeにより更に活動の幅と、新たな可能性を見出したと言えるでしょう。プラットフォームの飛躍的な拡大により、クリエイターにも多くの収益をもたらすことで、“新たな才能”が続々と参入する環境が整いました。
日本人YouTuberの飛躍は、単に“楽しむ”だけでなく“学ぶ”コンテンツに価値を見出した点にある
ロバート・キンセル 非常に興味深い例が日本から幾つか出ています。そのひとつに挙げられるのが、日本のM.S.S Projectです。3月にLIVEストリームでコンサートを行いました。当時、自力でライブを行えなかった彼らにために、ファンがスーパーチャット、スーパースティッカーを介して、約1憶2000万円の支援を受けました。これは世界中で活動をする方にとっても非常に好例と言えるのではないでしょうか。また、2020年度の5月の統計を見ると、スーパーチャットを使って売り上げを伸ばしているクリエイターTOP10の内、驚くことに7つまでが日本のクリエイターです。この結果を見ても分かるように、日本のクリエイターが非常にイノベイティブであり、広告以外の収益、スーパーチャット、スーパースティッカー、メンバーシップといった新たな手法で多くの収益を生み出しています。また、米国ですでに提供している「グッズ販売機能」も、日本でもリリースできるよう準備しています。
――YouTube内でクリエイターたちが独自に成長を見せている好例ですね。海外と比較してみて日本のYouTubeの特異な点はありますか?
ロバート・キンセル 日本におけるトレンドとして見られるのが、これまでの伝統的なメディアで活躍する有名人とYouTuberによるコラボレーションというものが挙げられます。例えばヒカキンさんと小嶋陽菜さん、こちらは2週間で約620万再生を記録し、SHOWケースとしても非常に秀逸でしたね。また、ヒカキンさんやフィッシャーズさんはYouTube発ですが、テレビなどの伝統的なメディアにも出演するなど相乗効果が見られます。同様の流れは世界に目を向けても、日本が最も加速度が高いと言えるでしょう。
――確かに、人気YouTuberたちがテレビやラジオなどのテレビやラジオなど伝統的メディアで活躍する姿も、よく見る光景としてすっかり定着しましたね。
ロバート・キンセル YouTubeには非常に多様なコンテンツがあるということも、日本人クリエイターの成功の一因だと考えています。単に“楽しむ”ということだけでなく、様々なことを“学ぶ”という視点のコンテンツの増加もこの流れに拍車をかけたと言えるでしょう。例えば、1年間で150万登録者数を獲得した竹脇まりな(宅トレ系クリエイター)さんも非常に興味深いクリエイターです。彼女の話題が挙がると、自然と笑顔になってしまいます(笑)。あとは教育系クリエイターで「とある男が授業をしてみた」を運営する葉一さんも素晴らしい! 世界の見本となるクリエイターアプローチだと思います。その他にも漁師さん、農業従事者さん、それから大工さんなど、様々なクリエイターたちがYouTubeを使って、自身の職人技を多くの人に教えることが出来るのは素晴らしいことではないでしょうか。