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ORICON NEWS
僧侶がPC操る『オンライン法事』話題、築地本願寺の危機感「今こそ資質が問われる」
ネット環境、参拝者の減少、誤情報の拡散… オンラインならではの懸念も
「またご高齢の方ですと、接続作業から苦労される方も多くいらっしゃいます。若い人に接続してもらったという声も多い。さらには、ネット環境によっては読経の声がとぎれとぎれになることも。音声がしっかり届いているかどうか、通信の安定についての心配もあります。そのため、法要の30分前には接続方法の説明をさせていただいております」
昨今は、築地本願寺に限らずYouTubeチャンネルを開設する寺院が相次いでおり、Zoomを活用したオンライン祈祷、オンライン座禅、オンライン写経等、あらゆる行事がWeb上で行われる時代になった。
進化論で有名な自然科学者チャールズ・ダーウィンの“適者生存”とは、「進化の過程で生き残っていくのは、強い“種”ではなく、変化に適応していった“種”」という概念だ。つまり、いかにお寺であっても、伝統だけにしがみついていたのでは生き残ることは出来ない。社会環境の変化によって、お寺も変化していかなければ未来はないと、東森氏は語る。
「昔は、ロウソクなど火の灯りだけを堂内に使用していました。ですから、電気が導入された時にも当然議論はあったと思うのです。マイクもそうですよね。元々、しっかりと通る響き渡る声で読経や法話をしなければいけないという伝統との葛藤があったと思います。ですが、仏教を広めるためにはその時代その時代に何が良いか考え、人々に寄り添ってきたからこそ、今日の私たちがあるのではないかと考えております」
檀家の3割は不満を抱えている実態「今こそ僧侶1人1人の資質が問われている」
「だからこそ、しっかりと伝えるためにも、僧侶としてあるべき姿を逸脱してはならないと思っています。浄土真宗の連合団体でのアンケート調査では、一般生活者や檀家の方々の僧侶への不満は、潜在的に約30%の方が持っているという結果が出ています。その内訳は、上から目線、檀家への感謝の念がない、お経が下手、法話の内容が分かりにくいなどです。今後、ますます僧侶1人1人の資質が問われており、襟を正していかなければいけないとも思っています」
疫病や災害があると、おのずと“死”について考える機会が増える。それに加えて、コロナ禍では家族や友人に会えない日々が続き、心の拠り所を求めていた人は多かっただろう。東森氏も、それを強く感じたという。
「今までの日常がいかに“有り難かった”か。“有り難い”は、“有”ることが“難”しいと書きます。つまり、日常とは実は“有り難い”ものなのです。当たり前だと思って過ごす日々に、感謝の気持ちを持って生きていくことが大切と思います」
足早に進化していく現代、我々もただ手をこまねいて流されるだけではなく、『オンライン法事』のように進化していく必要があるのかもしれない。Withコロナに適応しながら、これまでの“当たり前”を“有り難い”と感謝する。それが我々が今後も生き残っていく道なのかもしれない。
(文=衣輪晋一)