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「平熱より少し高い」タレントのレギュラー番組“欠席”が増加、芸能界も“無理をしない選択”へ

  • 「平熱より少し高い」と『ひるおび!』(TBS系)を欠席したTBSの江藤愛アナウンサー(撮影:近藤誠司) (C)oricon ME inc.

    「平熱より少し高い」と『ひるおび!』(TBS系)を欠席したTBSの江藤愛アナウンサー(撮影:近藤誠司) (C)oricon ME inc.

 4月27日放送の『news zero』(日本テレビ系)で、月曜キャスターの櫻井翔が番組冒頭に電話出演し、毎日行っている検温で「平熱よりも少し高かった」と番組欠席を告げたことが“勇気ある欠席”として話題になった。コロナ禍のなか、他にも芸能界では「平熱より高い」を基準としてレギュラー番組を欠席するケースが見られている。近年はインフルエンザで欠席するケースも増加していたが、「穴をあけない」ことが何よりも重要視されてきた芸能界。今回の新型コロナウイルス流行は、そんな芸能界における“働き方改革”、そして“新しい生活様式”に一石を投じたと言える。

「その選択をしてくれてありがとう」共演者も当事者の判断を称賛、啓蒙活動の一環にも

 この櫻井の番組欠席だが、番組冒頭で毎日行っている検温が「平熱よりも少し高かった」からと、欠席の理由を説明。体調は全く変化がないと話し「今から向かいたいところではある」と本音を漏らしながらも、スタジオの有働アナも「その選択をしてくださってありがとうございます」とコメント。この櫻井の「無理をするよりも大事をとる判断」に、SNSでは「自分より他人を思いやる姿勢が素晴らしい」といった称賛の声が集まった。これは報道番組である『news zero』だからこそできた、ひとつの啓蒙活動ともいえるのではないだろうか。

 他にも『ひるおび!』(TBS系)に出演するTBSの江藤愛アナウンサーも、体温が平熱よりも高いとして4月24、27、28日と番組を欠席。お笑いタレントのビビる大木は、37度の発熱で4月19日の『追跡LIVE!SPORTSウォッチャー』(テレビ東京ほか)を欠席。所属するワタナベエンタテイメントは、番組出演へ独自のルールを決定しており、多くの企業が基準にしている37.5度以上ではなく、より厳格な37度以上を基準としていたからこその判断だったという。

 また、タレントのミッツ・マングローブも発熱と味覚障害があるとして、自主的に番組出演を自粛・自宅隔離したり、三代目 J SOUL BROTHERSの山下健二郎も平熱を上回る発熱のため冠ラジオ出演見合わせ。お笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜は、発熱はなく、気圧や寒暖差の変化による頭痛や小麦アレルギーのような症状が出ているため大事をとって『スッキリ!』(日本テレビ系)を欠席している。こういった欠席に関しては、おおむね世間的にも好意的に捉えられているといえるだろう。

過去のスターたちの武勇伝がある種の基準に…「穴をあけない」が芸能界の掟

 そしてこの芸能人たちの欠席がクローズアップされるのは、かつての「病気・怪我は何のその。ステージに穴をあけないのが真のスター」といった風習があったからこそ。特に昭和のスターはその色が濃く、例えばピンク・レディーの増田恵子は3月に放送された『有吉反省会』(日本テレビ系)で、全盛期、手術後に傷が開いたままステージに立ったことを告白して周囲を驚かせた。

 他にもドラマ『寺内貫太郎一家』(TBS系)では、長男の周平を演じた故・西城秀樹さんが、父・貫太郎と親子げんかをするお決まりのシーンで勢いよく投げ飛ばされて腕を骨折。実際には入院していたものの、放送では次のシーンから腕にギプスが巻かれた状態で出演していた。これも今となっては伝説として語られている。

 平成に入ってからも、こういった「芸能人は無理してナンボ」的な風習は継続。病気や怪我は「悟られないもの」であり、「何事もなかったかのように」振る舞うのが芸能界の掟だった。伝えるとしても「実は怪我・病気を押しての出演だった」的な事後報告というのが通例であり、美学ともされてきた。

 近年はインフルエンザなどで欠席も増えていたものの、「代わりがいない」責任感や、「代わりはいくらでもいる」恐怖感の狭間で揺れるタレントが大多数の芸能界で、「多少の無理」は付き物と言えるだろう。芸能人ではないが、メインキャスターを務める『報道ステーション』への出演を見合わせ、4日に復帰する富川悠太アナウンサーも上記のマインドだったと言えるだろう。

コロナ禍で加速? 芸能界の“働き方改革”

 そして今回の新型コロナウイルス。「平熱より高い」という出演するか否かの判断の浸透は、ひとつの時代が変わるきっかけとも言えるのではないだろうか。出欠の判断だけでなく、各局のドラマの撮影延期や、バラエティ番組でのリモート出演にしても、視聴者の反応も「なんで収録しないんだ」「無理をすることがカッコいい」ではなく、無理をしない選択をした方が善=「無理をしないことがカッコいい」となっている。その上で趣向を凝らしたものが称賛されている。

 例えば『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)では、「生のナンチャンはどっち!?」という、左右2分割された画面で、かつての映像の南原清隆とリモート中継中の南原を同時に流し、どっちが生放送なのかを当てるクイズをして評判となった。またドラマでは、『警視庁・捜査一課長2020』(テレビ朝日系)が、過去のドラマシリーズの再放送に「テレワーク捜査会議」というミニドラマを加えた特別編を2回放送し、どちらも視聴率10%超えして話題になっている。

 今回はウイルスを広めないことが何よりも求められ、たとえメディアであっても逆行する行動は、SNSユーザーをはじめバッシングの対象となることから、より慎重になっている…という面もあるだろう。だが、無理をせずに感染防止策を行い、工夫して番組を継続している成功例が生まれているのは事実なのだ。

 緊急事態宣言は解除されたが、第2波・第3波への不安も抱える日本。そしてコロナ以前の生活に100%戻ることは不可能ともされているが、芸能界も“働き方改革”を進めていかなければならないし、“新しいテレビ様式”にも慣れていかなければならないのだろう。

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