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幅広い世代から賛否の声 『わたし、定時で帰ります。』“働き方”へのメッセージ

火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(C)TBS

火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(C)TBS

 吉高由里子主演の『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)がクライマックスを迎える。話数を重ねるごとにドラマバリュー満足度ポイントを伸ばしてきている本作は、現代の日本の職場で起こっているさまざまな労働問題を通して「働くことの意味」を見つめ直すお仕事ドラマ。時代を捉える本企画を、TBSスパークルの新井順子プロデューサーに振り返ってもらった。

テレビが『これが正解』と断言するのは危険なこと

 主人公の東山結衣(吉高)は、過去のトラウマから仕事よりも人生を大切にし、効率よく仕事をすることで「残業ゼロ」を貫く、昨今叫ばれるワーク・ライフ・バランスを象徴するような女性だ。

 ドラマ後半にかけては、結婚を控えていた結衣が、ブラック上司の無理難題により、ついに「定時で帰る」というモットーが崩されてしまう。さらには、同棲によって浮き彫りになる恋人(中丸雄一)との価値観のスレ違い。そして、仕事の多忙さとともに図らずも縮まっていく、同僚で元婚約者(向井理)との微妙な距離感。果たして職場環境は改善されるのか? そして結衣の恋の行方は? 最終回にかけては見逃せない要素が満載だ。

 原作は主人公と同世代の20〜30代女性に共感を集める同名小説。ただし、ドラマでは主人公を原作よりも「控えめなキャラクター」に微調整したという。

「ドラマが始まる前は『もっと自己主張が強い主人公の話だと思っていた』という声が多かったんです。『定時で帰ります』という言葉も、人によっては我が強すぎる印象を与えるのかもしれません。だけど、仕事観も人生観もこれだけ多様化しているいま、テレビが『これが正解です』と断言するのはとても危険なことなのかなと。本作でも『結衣の働き方だけが正しい』という描き方にはならないように気を付けています。また、吉高さんも見事に役をつかんでくれました。自分とは考えの違う相手に意見するような言葉でも、押し付けがましくならず、むしろ癒しに聞こえるのは、彼女の絶妙に柔らかい口調やセリフ回しのおかげだと思います」

その人にとって満足のいく人生であればいい

 台本を作るにあたっては数百人におよぶさまざまな立場、環境、キャリアのビジネスパーソンにアンケートやヒアリングを実施。仕事が生きがいで休日返上も辞さない派もいれば、仕事への思い入れがとくにないプライベート優先のタイプも少なくなかった。

 ドラマの舞台である職場でも、家に帰ってもやることがないと会社に住み着く非効率男(柄本時生)、融通の利かない皆勤賞女(シシド・カフカ)、何かあるとすぐに仕事を辞めたがる新人(泉澤祐希)、出産後すぐに職場復帰するキャリア志向のワーキングマザー(内田有紀)など、さまざまな仕事観を持った人々がチームとして働いている。

「仕事への向き合い方に正解はなく、その人にとって満足のいく人生であればいいのではないか、というのがこのドラマで伝わるといいなと思いました。だからどんな仕事観であっても、それによって歪みが生じない限り、否定的には描かないように心がけました。そのせいか、ときにはお怒りの意見もありました。思い通りに仕事をこなせない新人が、フォローしようとしてくれた先輩に感情をぶつけるシーンがあって。結衣は新人に「私たちは敵じゃない、チームなんだよ」と言葉を投げかけるのですが、その姿に『甘やかせ過ぎだ』といった声をたくさんいただきました。だけど、一方で『あんな上司だったらがんばれる』という声も少なくなかったんです。おそらく世代によって見え方がかなり違うエピソードであり、意外と幅広い世代に観ていただけているんだなと実感した回でもありました」

 なお、この新人社員のエピソードには、実在のモデルがいるという。綿密なヒアリングから吸い上げた出来事を盛り込んだリアリティあふれるドラマに、「自分のことを見ているようだ」といった共感の声も多い。

「ヒアリングをしたワーキングマザーのなかには、時短勤務をせざるを得ないことに後ろめたさを感じている方が少なからずいました。ということは、たぶん職場に『迷惑だ』という空気が多少なりともあるんだろうなと……。だけどワーママに限らず、価値観や立場の違いで対立するよりも、お互いがお互いの違いを理解してフォローし合えたら、もっと誰もが働きやすくなるんじゃないかな、という願望もこのドラマには込めています」

 この4月に働き方改革関連法が施行されたものの、「残業は仕方がない」という意識や風潮はいまだ日本の職場から消え去らない。そんな現代社会において、対立するよりも相手を理解すること。そして自分の生き方を大切にすること。そんな結衣の控えめながらも芯の強いメッセージに、自らの働き方を振り返った人も多いはず。職場環境の成熟が求められる令和の始まりにふさわしいドラマの最終話が、どのように着地するのか注目したい。
(文/児玉澄子)
新井順子氏
TBSスパークル エンタテインメント本部 ドラマ映画部
プロデューサー
大阪出身。08年に『ラブレター』で連続ドラマ初プロデュース。以降、湊かなえ氏原作の『夜行観覧車』(13年)『Nのために』(14年)『リバース』(17年)をはじめ、『アンナチュラル』(18年)『中学聖日記』(18年)など多数の話題作を手がける。『リバース』と『アンナチュラル』で、「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」作品賞を受賞している。

提供元: コンフィデンス

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