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「映画ポスター」はときに作品を超える芸術に…巨匠たち支えたデザイナーが語る“1枚絵”へのこだわりとギャラ事情

だれでもPCでデザインを作れる時代、ギャラはデフレ傾向

――小笠原さんのような専業の映画ポスターデザイナーは多いのでしょうか。
小笠原さん映画が好きで専業で手がけている人もいますが、多くはデザインの仕事のひとつとしてやっているのではないでしょうか。デザインを勉強して、PCでイラストレーターの仕事ができれば誰でも作れる時代です。逆にいうと、そこで差別化したデザインを作り上げて、専業で仕事にしていくのは難しくなっていると思います。

――業界での待遇はどうですか。
小笠原さんどうでしょうね(笑)。今はそんなにいい待遇は得られていないんじゃないですか。一番仕事が多かった時代は、70年代から80年代のバブル期。あの頃と比べると大変なんじゃないかな。誰でも参入できるとなると、どこからがプロの仕事になって、ギャランティの問題にも関わってきます。映画の場合は、興行の大小による予算規模で経費のかけ方がまったく変わってきますから、ギャラの金額的な差が大きいんです。規模が小さい作品だと、僕なんか「敷居が高いから」って断られることも。そんなやりにくさもあります。

――若手の育成は考えられますか?

小笠原さんそれはありますね。数年前までワークショップを続けていたんですけど、多くの人が来てくれて、現場で活躍している方もいました。映画祭などのトークショーに出たときも、若い方たちがたくさん質問してくれました。専業の仕事として成立させるのはなかなか難しいのも現実ですが、職業として興味をもっている若い世代は多いと感じるので期待しています。
(文/武井保之)
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小笠原正勝
1942年、東京都生まれ。武蔵野美術短期大学を卒業後、東宝アートビューロー(現・TOHOマーケティング)入社。映画、演劇ポスターや広告のデザインを担当する。76 年以降はフリーランスとして活動。ATG(日本アート・シアター・ギルド)の映画ポスターを制作し、『股旅』(市川崑監督)が『カンヌ国際映画祭 第1回ポスターコンクール』でグランプリを受賞。岩波ホールのエキプ・ド・シネマや、フランス映画社のBOWシリーズのアートワークに携わるほか、歌舞伎をはじめとする演劇ポスターも数多く制作。現在、映画と映画館の本『ジャックと豆の木』(シネマ・ジャック&ベティ発行)の企画・責任編集も務める。

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