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『きかんしゃトーマス』原作75周年で女児機関車が続々登場 “鉄道好きは男子のみ”を覆す施策

乗り物に身近な日本の子どもたち、世界が成功事例として注目

――ここ5年ほどで、トーマスの国内市場は伸びてきているそうです。

西岡さん以前と比較すると20〜30%ほど伸びました。理由はいくつかあって、まず2012年からNHK地上波でのレギュラー放映が始まったり、2014年に静岡県の大井川鉄道でリアルなトーマス号が走り始めたりしました。さらに2015年に70周年アニバーサリーに絡めたメディア露出があり、その結果右肩上がりの成長につながっていったのだと思います。
当然、商品のバリエーションも増え続けていますし、各種の体験型イベントや、ミュージカル化、また富士急ハイランド園内の屋外型テーマパーク『トーマスランド』や、全国の商業施設5ヶ所にある屋内アトラクション『トーマスタウン』といった、リアルな場も常設されていることも影響しているでしょう。マテル社はじめ海外からも、日本のいわゆる360度ビジネスはひとつの成功例として注目されているようで、視察に訪れるケースも増えています。

――とはいえ、本来は4月3日公開予定だった最新トーマス映画に合わせた関連イベントなどは、新型コロナの影響で軒並み中止・延期に追い込まれています。

西岡さん集客イベントの開催が難しいのは、正直いってかなりの痛手です。ただ一方では、Netflixはじめ、メジャーな動画配信プラットフォームにほとんどラインナップされていることもあって、そちらの視聴はかなり伸びているようです。またYouTubeの公式チャンネルでは、映画の予告編や歌のシーンだけを切り出した動画や、商品の購入につながる短尺動画、それこそSDGsとのコラボ映像などもアップしていますが、そちらも伸びています。子どもたちが最初のアクセスするテレビ放映に加え、動画コンテンツの視聴環境が劇的に良くなっていることも、この5年間の市場拡大には寄与しているのかもしれません。

失敗やケンカばかりの物語には教育の効果も…?

――そもそも電車や機関車といった“乗りもの”系は、とくに男の子からの反応が良好なイメージがあります。女の子の機関車がクローズアップされたことで、女の子からの反応はいかがですか。

西岡さんイベント参加の割合だと、女の子は以前は2割を切っていたのですが、最近は多いときで35%、少なくとも20%という比率になってきています。トーマスというコンテンツの基本的なボリュームゾーンは2〜4歳くらいなのですが、ミュージカルなど世界観を楽しめるようなコンテンツだと、6〜7歳くらいの女の子からも人気を集めていますね。ちなみに、アンケートの結果などを見ると、男の子は乗りもの自体が好き、ということが確認できるのですが、女の子は、多彩なキャラクターがたくさんいる世界観そのものが好きだという傾向もあるようです。
――御社は、大学や専門家とトーマスを研究するプロジェクトを立ち上げています。どんな研究ですか。

西岡さん2018年より、東京学芸大学や東京学芸大こども未来研究所の専門家たちと、トーマスを中心としたキャラクターのもたらす教育的効果をアカデミックに調査・研究するプロジェクトです。「非認知能力」という、IQなどでは計測できない内面的な能力全般について、あるコンテンツのストーリーやキャラクターがどんな影響をもたらすか、という内容です。

――他人とのコミュニケーション能力や、自分で考える力を持つ、といった能力ですね。

西岡さんはい。そもそもトーマスの世界には敵が存在しなくて、日常の小さな出来事の物語です。それなのになぜ人気があるのか不思議だったのですが、結果としては、トーマスのストーリーを疑似体験することで、非認知能力の成長にもつながっているのではないか、という一定の知見が得られました。主役のトーマスは、失敗しては反省して、ケンカしては仲直りする。それはそのまま子どもたちの日常でもあって、誰でも失敗する。でも反省してまた明日がんばる、そういう“学び”も得られている、という結論です。物語を通して、友だちを大切に思う気持ちや、物事にポジティブに取り組む意欲、「今日はこれを頑張ってみよう」という目標意識や、最後まであきらめずに頑張り抜く力などを育む効果が期待できると思います。

――ちなみに、現在のターゲットは子どもたちですが、ティーンの女性など別の世代へのアプローチは考えていますか。

西岡さんもちろん方法はいくつか考えられますが、今は考えていません。というのも、トーマスは基本的に小学校に入ると男の子でもファンのほとんどが“卒業”してしまうんです…。ですから、現在のコア層がより満足してくれるような仕掛けを、もっともっと充実させていくほうに注力していきます。
(文/及川望)

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