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「ウミウシを探さない理由がある?」海の生き物コレクターが語る“自然との付き合い方”

 この色鮮やかな生き物が何かわかるだろうか? これらは磯に棲む“ウミウシ”で、撮影したのは高知県在住の会社員・ゆうじさん(@sea_slug_0509)だ。ある日、ゆうじさんがウミウシを探していたときに海水浴客や釣り人から「仕事なのか」「金になるのか」など何気なく質問されたエピソードをTwitterに投稿。すると「磯でウミウシを探さない理由がある? こんなに美しい生き物が磯には満ち溢れてるのに!」というコメントが多くの共感を呼んだ。さらに他のユーザーが単語を変えて別ジャンルについて投稿するほどの盛り上がりも。そんな反響を集めたゆうじさんに、海の生き物の採集・撮影方法や、地元の方々との交流、また、生き物との付き合い方について聞いた。

現地でストロボを炊いて撮影、終了後は「生き物をもといた場所に返しています」

――まず「この鮮やかな写真はどうやって撮影しているんだろう?」というのが最初の感想でした。白い背景に鮮やかな生き物たちが神秘的ですよね。
ゆうじさん デジタル一眼レフカメラにマクロレンズを付けてストロボを焚き、生き物以外の余計なものを光で飛ばしています。海の生き物の場合、海水をはった白いお皿の中に採集した生き物を入れて撮影します。採集した生き物は一時的にクーラーボックスに入れておき、その場でまとめて撮影しますので、撮影機材一式を海に持っていっています。

――目で見たときの自然な色は、写真でどのくらい表現できるものなのでしょうか。
ゆうじさん 色の再現はなかなか難しいもので、私も苦労しています。種類によっては写真にしてしまうと実際の色とはまったく違う雰囲気になってしまうものもいます。撮影しながら実物と見比べ、条件を変えてうまく表現できるようにしています。カメラやレンズ、ストロボなどは既製品を使用するだけなのですが、ディフューザー(ストロボの光を和らげる機材)は自作なのでSNSなどを見ていると様々な形状や様々な素材で人それぞれ工夫がありとても面白いです。これがないと全く上手に撮れないため非常に重要なものです。

――納得いくまで撮ると、どれくらいの枚数になるのでしょうか。
ゆうじさん 1匹の生き物に対し裏側から撮ったりいろいろなアングルから撮るため何十枚も撮影します。一度磯に行くとだいたい500枚〜700枚程度撮影していますね。

――ちなみに、撮影後は生き物たちは…?
ゆうじさん 私は飼育したり標本にしたりすることはないので撮影後は生き物をもといた場所に返しています。

地元の方々との交流も投稿「強面の漁師さんが包丁片手に無言で近付いて…」!?

――では、磯の生き物はどのような場所で採集されているのでしょうか?
ゆうじさん 春から秋にかけてはウェットスーツにシュノーケルをつけ、タイドプールや磯の比較的浅い場所を泳ぎながら岩礁上を見て回ったり、海の底に転がっている石(転石)を一つ一つひっくり返したりしながら生き物を探します。小魚などは網で掬って採集しています。冬場は流石に寒いため潜ることはありませんが、冬は夜に潮の引いたタイドプール(海水の残ったくぼみ)などで生き物を探します。昼間とはまた違った生き物を観察することができるためこの夜磯採集は冬場、潜れない時の楽しみです。

――潮の満ち引きや天候には気を遣いそうですね。
ゆうじさん 基本的に週末の仕事が休みの日に出かけます。ベストなのは潮が大きく引く大潮の日ですが、大潮がうまく週末と重ならなかったり、天気や海況が悪かったりする場合も多いのである程度妥協が必要です。

――そして、Twitterの投稿では出向いた先の地元の方々との交流も印象的です。
ゆうじさん 磯で生き物を採集したら近くの漁港の邪魔にならないところで撮影をしています。生き物を採集していて一番怖いのが地元の漁師さんとトラブルになることなので、漁港の周辺で漁師さんとできるだけ話をするようにしています。

――友好な関係を築けてこそ、ですね。
ゆうじさん はい。きっと漁を生業にしている漁師さんたちにとっては、たとえ趣味でも他人が好き勝手なことをしていたら気分が良くないものです。自分が漁業権を侵すような種類の採集を行っていないこと、趣味で写真を撮っているだけなので地域コミュニティーに対する害意はないことをとにかくわかってもらわなければいけません。最近では同じ漁港に通っているため徐々に顔見知りになり、声をかけてくれるようになりました。ところがある時、漁港の片隅で写真を撮っていたら強面の漁師さんが包丁片手に無言で近付いてきたのでギョッとしたことがあって。

――えっ!? 何があったのでしょうか…。
ゆうじさん それが船のスクリューに海藻が絡まって困っているので、ちょうどウェットスーツを着ていた私に海に潜ってこの包丁で切ってきてくれないかとのことでした。お礼に魚をもらいましたが最初は刺されるのかと思いました。

――刺激的な交流でしたね(笑)。他にもTwitterには、ゆうじさんがアドバイスを求められるコメントや、ゆうじさんが質問をする投稿など、様々な交流が見受けられます。
ゆうじさん SNSの面白いところはどんな人でも気軽に情報発信ができるため、自分から情報を出すこともできるし、また逆に情報を受け取ることもできます。Twitterに画像を投稿して質問してみると、どんな分野にもそれぞれやたら詳しい人がいて、あっという間に答えがわかってしまう時もあり本当にありがたいです。逆にたまたま自分も知っている種類が質問されていた時には「これは○○ですよ」と教えてあげることもできます。

――地域の違いも楽しめそうですね。
ゆうじさん そうですね。私は主に高知県で生き物を探していますが、SNS上では北海道から沖縄まで、日本の各地で同じように海の生き物を探している方がたくさんいます。たまに目もくらむような珍しい生き物の写真が自慢げに上がっていたりして羨ましく、刺激になります。

元々は昆虫採集が趣味「大学でも昆虫学研究室に所属し、新種の虫を発見したことも」

――虫の写真も投稿されていますが、元々は30年ほどずっと昆虫採集をされていたそうですね。
ゆうじさん 虫にハマったきっかけはよく覚えていません。物心ついた時にはすでにひたすら虫を採っていました。虫の魅力はやはりその種類の多様さではないでしょうか。海の生き物の場合もやはり魅力は生き物の多様性ですが、とにかく色々な種類が色々な場所で様々な生態で生活していて、調べても調べてもきりがありません。虫は好きが高じて大学でも昆虫学研究室に所属し、昆虫の研究を行なっていました。東南アジアのジャングルで新種の虫を発見したこともあります。

――新種も!
ゆうじさん それでも自分の専門外の虫のことはまだまだ知らないことも多いです。今は磯の生き物探しにハマっていますが、昆虫採集も一生楽しめる趣味だと思います。
――そして、3年前に“「海にも色々な生き物いる」という事実に気がつきました”。どのようなきっかけがありましたか?
ゆうじさん 子どもの頃からあれほど山や川に行っていたのに不思議と海で生き物を探す機会は大人になるまでありませんでした。そんな時、海の生き物を撮影するきっかけになったのは奥さんと二人で高知県西部に海水浴に行った際、岩礁上でたまたまウミウシを見つけたことです。この時見つけたのはクチナシイロウミウシという種類で、その名前の通り、綺麗なクチナシ色をしたイロウミウシ科(Chromodorididae)の仲間です。

――どんな事がふとしたきっかけになるのか、わからないものですね。
ゆうじさん はい。それまでウミウシというのはもっとダイビングなどで海の深い場所に行かないと見ることのできない珍しい生き物だと思っていたため、こんな海水浴場の片隅で見つけたのはとても新鮮でした。まだ見ぬ虫を求めて東南アジアのジャングルやアフリカに行った私ですが、それまで自分がまったく知らなかった面白い世界が、すぐ目の前の海にあったことに驚きました。

虫や魚が苦手でも「無理に好きになる必要はない」「関わらないように逃げればいいだけ」

――最近は虫が嫌い、魚が触れないなど、子どもも大人も自然に触れあうことが苦手な人が増えていると話題になります。ずっと自然と関わってきたゆうじさんにとって、自然と上手に付き合うというのはどのようなことだと思いますか?
ゆうじさん 個人的には無理に虫や魚を好きになる必要はないと思います。私も生き物全般好きですが、唯一ヘビだけは死ぬほど嫌いですし。ただ、当たり前ですが道端でヘビを見つけても駆除しようとは思いません。ヘビがいたら関わらないように逃げればいいだけです。またSNS上でもヘビが好きな人から写真がよく投稿されているのですが、それらに対して「気持ちが悪いので投稿をやめてほしい」と思うこともありません。自分が苦手なものや嫌いなものを排除していくと世の中どんどん狭くなってしまうので、苦手なら苦手でも良いので見ないようにし、上手に付き合っていく必要があります。

――距離感を保ちながらも、苦手なりに尊重することが大切、と…。
ゆうじさん はい。それまで興味のなかったものにある日突然、何かのきっかけで興味が出てくることもあります。私も海の生き物がちょうどそんな感じでした。なので私も将来的には突然ヘビが大好きになったらきっと新しい世界が開けるんだろうなあと思います。今の所好きになる予定はありませんが…。

――(笑)。普段は会社員としてお勤めだそうですが、生き物の知識が役立つこともあるそうですね。
ゆうじさん 衛生管理の会社で技術営業として働いています。お客様の食品工場や製紙工場に出向いて衛生管理上の問題点の指摘やコンサルティング、改善提案の営業を行っています。海の生き物とは関係ありませんが、これらの製造現場では製品に害虫が混入してしまうと大きな問題になるため、異物対策として適切な衛生管理が重要になります。私はもともと昆虫の研究をしていた関係で虫の知識がとても役に立っています。

――今後も変わらず、お仕事と両立されながら生き物採集を続けていくのでしょうか。
ゆうじさん はい。高知の豊かな海とそこに住む多様な生き物をたくさんの人に紹介していけたらいいなあと思います。
【Information】
◆ゆうじさんTwitter

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