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広がる“犬の介護”問題、専門誌語る「シニア犬との愛ある生活」

 いつの時代も人間を癒してくれるペット。特に昔から人間と暮らしてきた犬は変わらず人気のペットだ。SNSでは人気ユーザーなどによる幸せな投稿で日々盛り上がっているが、近年は人と犬の距離が近づいたからこそ「介護」の問題も。シニア犬とは一般的に6〜7歳から呼ばれ、日本の飼い犬たちの半数を占める。そんなシニア犬情報を専門としたフリーペーパー『ぐらんわん!』の編集長・中村真弓さんに、「シニア犬介護」の意識変化や、シニア犬の魅力、そして今月、東京・用賀にオープンした実店舗『meet ぐらんわん!』で実現したいことなどを聞いた。

創刊当時は「商品にシニアのイメージつけたくない」とメーカーに広告を断られ…

――『ぐらんわん!』を創刊されるまではどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
中村真弓 本業はグラフィックデザイナーです。15年前に会社を辞めて自分でデザイン会社を立ち上げました。その時に、せっかく独立したんだったら好きなことを、と思い、野球も好きなので、最初は野球と犬のフリーマガジンを作っていました。

――そこから『ぐらんわん!』の創刊に至るきっかけは?
中村真弓 学生時代に飼い始めたシーズーの子が実家にいたのですが、自分の事務所を構えた時にずっと一緒にいられるからと14歳だった子を東京に呼び寄せました。そうしたら生活面において沢山の不具合が出てきて。シニアだからということで色んなことを断られるんです。シャンプーやトリミングも断られたり、ペットホテルにも預けられなかったり。動物病院も「こんなシニアの子いきなりは見られないから、今まで行ってた病院に戻ったらどうですか」なんて言われて。

――中村さんご自身がシニア犬と暮らすときに不便なことがあったんですね。
中村真弓 はい。調べても全然情報が出てこなくて。結局、個人の飼い主さんのブログに行き着きました。今でこそシニア犬に関しても情報過多な世の中ですが、当時はみんな困っていて、互いに情報交換しながら助け合っていたんです。犬の雑誌も子犬や、若いわんちゃんとの遊び方が多くて、老犬のページっていうのは1冊の本の中で2ページくらい。じゃあ自分がやろうかなと思ったのが、『ぐらんわん!』を立ち上げたきっかけですね。
――創刊は2008年。当時と比べて、今のシニア犬を取り巻く環境はいかがでしょうか?
中村真弓 すごく変わりましたね。フリーペーパーなので、主に広告で運営をしているのですが、立ち上げの時はメーカーさんに「うちの商品にシニアのイメージつけたくないんだよね」と断られることもあったんです。ところが、創刊から5年くらい経つと、ちょっとずつ変わってきて。最初に変わったのはフードメーカーさんでした。だんだん犬の半数以上がシニアだということが認知され始め、一斉に細かくライフステージを分けて商品を出すようになったんです。そこから急速に色んなメーカーさんがシニア犬に注目して、異業種の参入が増えたという感じですね。

――異業種の参入というと?
中村真弓 例えば学生服のトンボさんが歴史ある製法技術と生地で、老犬用のハーネスを作ったんです。後ろ足が弱くなった子用になど、トンボさんの技術で作ってくれるので、やはり評判が良くて。今のシニア市場が盛り上がったのは、異業種の参入が増えてきたおかげですね。今までは本当に、暗い老犬生活っていう表現が多かったんです。本とかも、とても痛々しい写真をいっぱい載せて、飼い主が希望を持てない内容が多かった。でもそうじゃなくて明るい未来があるよっていうのが、近年はかなり認知されていると思います。

「介護ではなく介助を」 今日できたことを、明日も自分でできるよう手助けする

――『ぐらんわん!』内では“犬の介護ゼロプロジェクト”という言葉も出てきていました。改めてどんなプロジェクトなんでしょうか?
中村真弓 犬も年を取ったら介護が絶対必要なんだ、と世の中で認知されてしまっていますが、そうじゃなくて「介護しなくてもいい状態にしてあげるっていうのが本来の務めなんじゃないか」という所から生まれたのが“犬の介護ゼロプロジェクト”です。介護を上手にできるようにするより、介護しなくていい育て方、暮らし方をしていきましょう、というプロジェクトです。

――介護ではなく、介助ということでしょうか?
中村真弓 そうです。介助はするけれど、できるだけ老犬扱いせずに、介護ゼロである状態を作っていきましょう、と。そして、介助しながらワンちゃん自身の力を生かしてあげる。例えば首が曲がらなくても、水を飲ませてあげるのではなく台を高くしてあげて自分の力で飲む行為を続けさせてあげる。足腰が弱ってきてちょっとフラフラしても、それに付き合ってお散歩ゆっくりしてあげるとか。
――人間の介護でもできることを続けるのは大切だと聞きます。
中村真弓 そうですね。私自身、人間のホームヘルパーの資格も持っていますが、人間のサポートも犬のサポートもマインド的にはあまり変わりがないように思います。今日ワンちゃんができたことを、明日もワンちゃん自身でできるようにしてあげる。それが”介護ゼロプロジェクト”です。

――飼い主さんの意識を変えていくことが大事だと。
中村真弓 はい。「介護をしない、助けない」ということでは無く、飼い主さんの意識の違いですよね。また、飼い主さんの中には添い遂げていく中で少しずつ気持ちの整理ができて、お別れの覚悟と準備ができるという方が多くいます。あとは19歳や20歳くらいのワンちゃんを失くした方もやり切った感があって、ペットロスになりにくいみたいなんです。そういった意味でも介護ゼロで、ワンちゃんの生きる力を最後まで支えてあげるっていうのはペットロス予防としても必要だと思っています。

フォトコンテストの選考基準は「お手本にしたいような年の取り方をしている子」

――また、毎年開催されている『イキイキ犬賞』はどのような思いでスタートしたのでしょうか。
中村真弓 敬老の日に『頑張ったね!』と、ワンちゃんにも表彰状で伝えようという企画です。JKCが発行する長寿犬への表彰状など他にもあったりするのですが、それは血統書が必要だったりして。この企画を始めてから「うちの子が初めて表彰状をもらった!」と、読者さんにすごく喜んで貰えて毎年開催しています。

――選考する際に大切にしていることや基準は何ですか?
中村真弓 お手本にしたいような年の取り方をしている子というのを基準にしています。それはもちろん飼い主さんのサポートあっての事なので。また、シニアは一般的に小型で7歳、大型だと6歳からと言われています。人間で言うと小型犬で40歳くらい。昔は初老と言われていましたが、今は人間でも60歳では若いじゃないですか(笑)。なので、応募基準は11歳以上にしています。

――今までの応募写真や表示を飾ってきたワンちゃんたちの幸せそうな表情も印象的です。
中村真弓 カメラ向けると、笑う子もいるんです。飼い主さんが「スマイル!」って言うと、ニコ〜っと口角が上がって、「幸せだ〜!」っていう表情をしたり。やっぱり飼い主さんとの暮らし方、接し方が犬の表情に全部表れてくるんですよね。

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