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ネットスラングによって語彙力は喪失している? 過半数以上が「いいえ」と回答

 SNSなどのネット上で、自分の好きな対象に対しての“感情”を伝える手段として、「待って」「無理」「しんどい」といった用語が多用されている。古くは「萌え」が印象的な“愛情表現”を示すネットスラングは変遷を遂げ、今では「(文字数)」「(語彙力)」など、“もう自身の言葉ではその魅力を伝えきれない!”といった意味の言葉にまで広がりを見せている。最近は「SNSが原因で語彙力が喪失しているのでは?」と、テレビのニュース番組に取り上げられることもあるネットスラング。はたして本当に、“語彙力の喪失”と関係しているのだろうか? ORICON NEWSでは、その背景を探るために10代〜50代の男女1000人に「ネットスラング」をテーマにアンケート調査を実施した。

10〜20代に浸透するネットスラング「文章を面白くするために使う」の声も

 「萌え」や「www」といった言葉は、これまで“ネットスラング”としてSNSなどインターネット上で使用されてきたが、ただ単に“略語”的な意味合いを持つだけではないようにも思える。

 まず、「ネットスラングを知っている」と回答したのは全体の76.4%。そのうち実際に「知っていて、使用している」のは33.2%(グラフ1)。10代と20代では半数以上が使用しているのに対し、30代以降になると2〜3割程度に下がることから、若い世代を中心として使用されている言葉であることが伺える。

 では、ネットスラングは、どんなときにどういった理由で使われているものなのか。アンケート(複数回答)によると、「ぴったり合う言葉が見つからない、表現できないとき」(72.3%)、「対象者や対象物への賛辞を送りたいとき」(36.4%)、「感情をぶつけたいが、どうしていいかわからず困惑しているとき」(17.8%)に使用するという回答が得られた(グラフ2)。

 一方で、10代と20代からは、「その場のノリ」(男性10代/神奈川県)、「考えて使っていない。自然と出てくる」(20代女性/三重県)、「顔の見えない相手とのコミュニケーションにおいて、楽しんでいることを伝えるため」(20代男性/神奈川県)、「文章を面白くするため」(10代男性/神奈川県)といった意見も見られた。ネットスラングには、その場の“ノリ”に合わせて、発言自体が重くならないようにしたいという意図もあるようだ。若い世代の間では、深い意味合いを持つ言葉としては捉えられておらず、会話を盛り上げるコミュニケーションの一手段として、ネットスラングが存在している。

「無理」「しんどい」「(語彙力)」…ネットスラングは「ノリと映えの世界」

 最近、特にその種類が増えてきているのが、その対象を褒めるときや愛情を表現するときに使用するネットスラング。「尊い」「わかりみ」「顔がいい」「沸いた」「(語彙力)」「文字数」「しんどい」「無理」「待って」「助けて」「†┏┛墓┗┓†」…など、挙げればキリがない。

 例えば、俳優・田中圭が出演している現在放送中のドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)では、田中圭の年下男子としてのあざとい演技が注目を集めた。番宣やドラマで彼の映像が映る度に、SNS上では「田中圭、尊すぎてしんどい」「無理だ…これは…もう…無理だ…(かわいい)#田中圭」「田中圭かわいい…(語彙力)」などといったつぶやきが多く見受けられる。このように、アイドル、俳優、声優、アニメ・漫画のキャラクターなど、ジャンルを問わず何かしらの“推し”を持つ人々の間で使用される共通言語にもなりつつある。

 また、ネットスラングの印象については、「ネット用語はノリと字面の映え」(50代女性/東京都)といった意見も見られた。「すぐに知らせたい!」と思ったときの気持ちの高ぶりを即時的に表す“ノリ”や、「これはどういう意味?」と発言自体に目を向けさせる“映え”の要素がネットスラングにはあり、滝のように数多の発言が流れるSNSにおいて重要な役割を担っていることは確かだともいえる。

“語彙力喪失”ではなく、「適切な表現を探すからこそ、“語彙力”が身につく」

 ネットスラングについて、「好まない」「使用したくない」という声も挙げられていた。「ネット用語が好きではないから」(30代男性/埼玉県)、「使う自分を想像すると恥ずかしいから」(40代女性/大阪府)、「普通に文字を打つ方が楽。自分が読んでいて理解できない言葉だから」(30代女性/京都府)、「若い人に無理して合わせているみたいな気がする」(40代男性/宮城県)など、30代以降の人たちの意見が多数を占めた(表1)。

 しかし、「『(語彙力)』や『(文字数)』などのネットスラングを使用することで、語彙力が乏しくなると感じるか?」という質問には、「はい」(46.7%)、「いいえ」(53.3%)と、「いいえ」が上回る結果となっている(グラフ3)。

 その理由としては、「同じ趣味趣向を持った仲間内で使用するなど、使用するシーンをきちんと使い分けるようにしているから」(55.3%)、「様々なネットスラングが増えたことで、逆に表現の選択肢が増えていると感じるから」(32.2%)、「SNS では瞬発性が大事。ネットスラングは枕詞として使用していて、本当に伝えたいことは自分の言葉で伝えている」(23.3%)、「飽くまで、高ぶった自分の気持ちを一度整理するために使っているから」(19.9%)という回答となった(グラフ4)。
 加えて、「言葉というのは変化するもの。必要に応じて使われているのだからそれも文化。否定する必要はない」(50代女性/埼玉県)、「そういう表現であり、その場面ではその表現が適切だと思うから」(20代男性/東京都)、「語彙力が足りなくて表現できない、と言ったあとにはどうしたら伝わるかな?など言葉の表現を探しているような気がする。結果、語彙力がつく」(40代女性/兵庫県)という意見も寄せられていた(表2)。

 これらの回答から、「待って」「しんどい」「無理」といったSNS用語を使うことで、一度自分の心の中をきちんと冷静に整理することができる。整理した上で落ち着いてから、「なぜその発言をしようと思ったか」を言語化することで、発言の意図がより深く伝わるという側面も見えてくる。

 語彙力の喪失とネットスラングの使用を安易に結びつけるのではなく、その使用方法や意図をひとつの“文化”として理解する。そうしていくことができれば、今後のSNSでのコミュニケーション文化はさらに発展を遂げるのではないだろうか。
(文:山田周平)

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