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“獄”デザインやキティコラボも…”刑務所”作業製品に変化、背景に大型家具の需要減
住宅環境の変化で主力の大型家具が伸び悩み…刑務所作業製品の売上高が減少
一方、近年刑務所作業製品などの売上高が減少しているという。2018年の売上高は約46億円で、20年前に比べ3分の1以下となっており、年々右肩下がりの傾向が続いている。要因について、同局の事務官の杉本美紀氏はこう語る。
「刑務所作業製品といえば、昔はタンスなどの大型家具が主力製品でした。しかし近年、マンションなどの集合住宅の増加で住宅環境が変化したこともあり、大型家具の販売数が減少しているんです。さらに近年は高齢受刑者が増加しているのもあり、大型製品の製造に携わる受刑者の確保が困難となっていることも一因と考えています」(杉本氏)
前掛けやトートバッグなど100種類以上展開 刑務所作業製品から初の商標登録も
栃木県の黒羽刑務所(22年春閉鎖)では、サンリオとコラボレーションした『ハローキティ貯金だるま』を発売。ハンドメイドのため製品ごとに風合いは異なるが、赤やピンク、黄色といったカラフルな色使いで人気を集めている。
また神奈川県の横須賀刑務支所は、洗濯用石けん『ブルースティック』を発売。キャッチフレーズの“汚れおとしのスーパースター”にもあるように、洗浄力の高さに定評があり、かつ手ごろな値段から売り上げを伸ばしているという。
生地は丈夫で長持ちする「中厚帆布」や「厚帆布」を使用。これまでに前掛けやトートバッグを始め、スマホなどを収納できる小物入れやブックカバー、ショルダーバッグと、100種類以上の製品を展開。また価格帯も600円からと安価なため、老若男女問わず幅広い世代から人気を集めているという。
開発した経緯について、同刑務所の法務事務官の平澤禎紀氏は「ラーメン店の前掛けがきっかけ」と明かす。
「函館少年刑務所の法務技官の川村成昭氏が、受刑者たちの洋裁作業で何か新しい物を製作できないかと考えておりまして。その時、たまたまテレビでラーメン店の前掛けを見かけて『これだ!』と思い、2006年、『マル獄』の前掛けを開発しました」(平澤氏)
刑務所作業製品の中で初めて商標登録もされた『マル獄シリーズ』。好調な売れ行きに対し、平澤氏はこう語る。
「函館少年刑務所では、『マル獄』の生地の選定からデザイン、縫製と全ての工程を行っています。受刑者がデザインの企画や提案をすることもあるんです。製品が売れることにより、受刑者の作業も増えるので、よりいろいろな経験を積ませることができる。出所後の追跡調査は難しいのですが、もしかしたら、函館少年刑務所で学んだ技術を活かして、洋裁を仕事にしている人もいるかもしれない。受刑者には『マル獄』を作ることで、忍耐力や集中力、継続して物を製作する楽しさを身に付けて出所してくれたらうれしいですね。受刑者の更生の手助けの一つとして、これからも『マル獄』製品に注目していただけたらと思います」