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ハンドメイド地位向上に一役の『minne』 一方、“楽して稼げる”イメージには危惧も…

 ハンドメイド市場が広がりを見せている。特にクリエイターや作家から好評なのが、ハンドメイド通販サイト『minne(ミンネ)』だ。2012年にサービスを開始し、現在、登録作家数は53万人を突破。983万点以上の作品を販売・展示するなど、ハンドメイド市場拡大に一役買ってきた。一方、近年テレビの情報番組では「楽して稼げるハンドメイド」といった取り上げ方をされることもあり、SNS上では「安さばかり強調されて本当の価値が伝わらない」という声が上がっている。このような現状に対し、『minne』はどのように捉えているのだろうか。サイトを運営するGMOぺパボ『minne』事業部・副部長の阿部雅幸さんに話を聞いた。

2015年に大規模投資 今年、サービス開始後初の黒字に

 そもそも『minne』は、GMOペパボ内での新規事業から始まった。ハンドメイド雑貨好きだった阿部氏は「作家の作品がもっと多くの人に広がり、作家とユーザーが交わるサイトを作りたい」と『minne』を発案。2012年にサービスを開始し、同年にはアプリもリリースした。

 阿部氏が力を入れたのは、作家と購入者が共に使いやすいサイト作りだ。「とにかく“シンプルで分かりやすい”を心掛けました。特に作家さんは、作品づくりに費やす時間が大きい。そのため、出品時の手間が少しでも省けるよう、ブログを更新するような感覚で、作品を登録できるサイトを構築しました」(阿部氏)
 さらに作家支援を強化するため、東京・世田谷、神戸市、福岡市に「minne LAB(ミンネラボ)」を設立。価格設定や作品の撮影方法などを伝授する勉強会を実施している。「カメラアプリなどで作品を撮影すると簡単に加工ができますが、フィルターは罠。作品が購入者に届いたときに、色の違いが出てしまう。作品は売り物なので、自然光で撮影するのが一番です」(阿部氏)

 また同社は15年、ハンドメイド市場の拡大を図るため、大規模な投資を遂行。大々的にテレビCMを打ったため赤字幅は広がったが、阿部氏は「『minne』がハンドメイド市場を引っ張っていくんだという気概のもと、積極的な先行投資として行った。結果、市場を大きく広げることにつながった」と振り返る。

東京・世田谷にある「minne LAB(ミンネラボ)」

東京・世田谷にある「minne LAB(ミンネラボ)」

 現に数字にも表れ始めている。15年以降、『minne』の流通額は順調に推移しており、18年の年間流通額は過去最大の120億円を突破。19年の第1四半期では、サービス開始後、初めの黒字となった。

 「現在、『minne』の収益の大部分は販売手数料の売り上げです。作品が売れると10%(税抜)が『minne』に入る仕組みですが、今後は企業と作家さんを繋ぐ役目として、企業のマーケティング支援やコラボ商品を展開するなど、収益の多層化を進めたい」(阿部氏)

テレビ番組の「楽して稼げる」で問われるハンドメイドの価値、価格破壊の危険性も

 一方、近年テレビの情報番組では、ハンドメイドに特化した企画が多く放送されるようになった。誰でも気軽に始めやすいと取り上げる反面、材料費の安さを強調するものも多く、番組内では「副業で稼ぎまくる主婦」、「ハンドメイド通販で月100万稼ぐ」といったフレーズがピックアップされていた。

 それに対し、作家らは「ハンドメイドが全部簡単に儲かると思われる」、「デザインの価値を無視してお金のことばっかり」などとSNS上に相次いで投稿。実際、販売イベントで「原価いくらなの? 安いんでしょ?」、「材料安いんだから値下げできない?」と言われ困惑した作家もいるという。
 こうした現状に阿部氏は、良質な作家活動を支援してきた立場から警鐘を鳴らす。

 「ハンドメイドは安いという価値観が広がってしまうことは、作家活動に良い影響を及ぼさない。たとえ材料費を抑えられたとしても、アイデアを生み出し、形にするまでの月日や、作家さんの作業時間代なども価格には含まれる。その旨を考えず安価で販売してしまうと、ハンドメイド市場の中で価格破壊が起き、マーケットが縮小する危険性もある」(阿部氏)
 現に、ハンドメイド作家から「楽して成功した」という話は聞かない。

 パンモチーフの帽子で人気の『KENT HAT』のデザイナー・KENTさんは、もともと『アバター』を制作するイラストレーターだった。しかしブーム終焉とともに担当していたサービスが終了。退職後、帽子専門教室で2年間基礎を学んでから、“パン帽子”の販売を開始。帽子の売り上げだけで生計が立てられるようになるまで、数年の月日がかかったという。

 ミニチュアフードのアクセサリーで話題の主婦作家の『すまいる*工房』さんは、子どもの頃から食品サンプル好きで、家事の合間に制作を始めた。自宅作業のため、時間の融通はきくものの、子どもの学校行事が多く、合間をぬって制作するなど多忙な日々を送っているという。
 同社によると、18年の『minne』のハンドメイド作品の注文単価は3024円で、相場は年々上昇している。阿部氏は「ハンドメイド作品には、作家さんが培ってきた技術が結集されている。また市販品にはない、自分好みのピンポイントな物に出合えるのもハンドメイドの魅力でもある。多少高くても、ハンドメイド作品の良さが分かる方は、納得して購入している」と説明する。

目標は『Amazon』 気軽に買い物に来てもらえるサイトに

 昨今、『minne』のようなハンドメイドに特化した電子商取引(EC)サイトは急増している。経済産業省が5月に発表した「電子商取引に関する市場調査」においても、ECサイトにおける個人間取引(CtoC)は急速に拡大するとみられている。

 ライバルのECサイトが増える中、阿部氏は「『minne』は売れるマーケットであることが重要」と指摘する。

 「『minne』がスタートする前も後も、作家さんにとって販売方法はいろいろあった。店舗に卸して売る人もいれば、複数のECサイトに出品して売る人もいる。その選択肢を狭めることは、僕らにはできない。ただ僕らができることは『minne』が売れるマーケットであり続けるために努力すること。多くの人にハンドメイドの魅力を知ってもらい、『ここで買い物したい』と思ってもらえるサイトになることが重要ですね」(阿部氏)

 目標は『Amazon』や『ZOZOTOWN』のような、男女問わず利用するECサイトだ。阿部氏は、「『minne』の作家さんは、それぞれ一つのブランドのように成長し始めている。『Amazon』のように、誰もが気軽に買い物しに来るサイトになることが『minne』の目標です。『minne』を通して、好きな作品、そして作家さんに出会ってほしい」と語っている。
【Information】
◆『yucoco cafe
◆『KENT HAT
◆『すまいる*工房

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