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“アバター職人”がブーム終焉で“帽子作家”に転身、「パンみたいな帽子」作る理由
現実に形に残る物を作りたい
KENTさん イラストレーターとして、キャラクターデザイン会社に9年間勤めていました。そこでは『アバター』というweb上で自分の分身を作り、洋服などを着せ替えるサービスの企画、制作を担当していました。ただブームが終わるにつれて、自分が担当していたサービスも終了。今まで取り組んできた作品が全て消えてしまうという経験をしました。そこから仮想空間だけで存在するデジタル作品ではなく、現実に形に残る物を作りたいと強く思うようになりました。
――そうだったのですね。そこからなぜ帽子職人に?
KENTさん もともと帽子が好きでして。『アバター』の制作経験からトータルコーディネートを学び、もっと帽子の楽しさを広めたいと思うようになりました。そこでSNSを通して、帽子を取り入れたコーディネートを発信し始めたところ、サイズ展開が少ないなどの理由で「かぶりたいのに、かぶれない人」が多いことが分かりました。そんな方に向けて、僕が帽子を作ることができたら…と思い、デザイン会社を辞めて、帽子の世界に飛び込みました。
KENTさん 30歳ですね。
――帽子作りは、どこで学ばれたのでしょうか?
KENTさん 代々木にある帽子専門教室『サロン・ド・シャポー学院』で、2年間基礎を学びました。アトリエも併設されていたため、独立に向けて何が必要かをイメージすることができました。
毎日パンを食べるように、毎日帽子をかぶってもらいたい
KENTさん 昔ながらの帽子も大好きです。ただ帽子の形は、ある程度フォーマットが決まったものしかないので、「あえて今、これまでと同じような帽子を作る必要性や意味があるのか?」と考えるようになりました。帽子に興味のない人たちに注目してもらえるような斬新さが必要だなと。また制作する自分自身も、ワクワク楽しい気持ちになることも大切と実感しまして。考えた末、“おいしそうなデザインでかぶっても楽しい、お部屋に飾ってもかわいい帽子”を制作することにしました。衣食住の繋がりが出せるような帽子なら、多くの方に気に入ってもらえるのではと思いました。
KENTさん 僕自身、パンも大好きでして。毎日パンを食べるように、毎日帽子をかぶってもらいたいと思い、パンモチーフで制作しています。またコロンとしたフォルムは、頭の形に落とし込みやすく、ブラウンやベージュ系のやさしい色合いも洋服になじみやすいと考え、取り入れました。
――素材は何を使っていますか?
KENTさん 主に、羊毛フェルトを使っています。
海外の方が見ても認識してもらえるような帽子に
KENTさん モチーフを明確にした帽子作り、ですね。海外の方にも一目で“○○の帽子だ!”と認識してもらえるような、説明のいらない帽子作りを心掛けています。
――なるほど。制作する上で難しい点はありますか?
KENTさん かぶったときにコスプレ風に見えたり、ギャグっぽくならない帽子を制作することですね。ファッションアイテムとして機能するように、デザインの段階から重視して描いています。
KENTさん 『メロンパンハット』を初めてInstagramに投稿した時は、本物のメロンパンと勘違いされる方もいて、SNS上で反響がありましたね。またテレビや雑誌など、メディアで取り上げていただくきっかけとなった帽子でもあります。
――自身のお気に入りの帽子は何ですか?
KENTさん 個人的には『アップルパイハット』ですね。一番コーディネートに合わせやすく、良くかぶっています。
――購入者の多くは女性でしょうか?
KENTさん 30代の女性が中心ですが、最近では男性がプレゼント用に購入されるケースも増えています。
――購入者からの反応は?
KENTさん 「初めて購入した帽子が『KENT HAT』でした」とおっしゃってくださる方が多いですね。またSNS上でコーディネートを投稿してくださったり、お部屋のインテリアとして飾っていただいている写真を送ってくださったりと、作り手として、日々とても励みになっています。
ジャンルにとらわれず、帽子の魅力を発信していきたい
KENTさん 『KENT HAT』のオンラインショップや、ハンドメイドマーケットサイト『minne(ミンネ)』などで取り扱っております。なお全て受注生産で制作しております。
――今後、制作してみたい帽子は?
KENTさん 動物や植物モチーフなども、制作してみたいですね。
KENTさん 異業種の作家さんとコラボレーションをしていきたいと考えています。現在、福岡県のアクセサリー作家の『@ChouChou』さんとハットピンを、兵庫県の革作家の『Grande uomo』さんと『メロンパンハット』モチーフの革小物を制作中です。ジャンルにとらわれず、帽子の魅力を発信していければと思います。