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『おかあさんといっしょ』育児番組を超えた親にとっての“戦友”感 SNS世代との深まる絆
うたのお兄さん・お姉さんの出演期間“長期化”も育児の共有化を後押し
逆に言えば、長期間務めたからこそ親近感も湧き、卒業したときの“喪失感(ロス)”も大きくなる。視聴者にしてみれば、自らの子育て経験や子どもの成長と重ね合わせて、お兄さん・お姉さんの“卒業”にも感情移入し、子育てを共有した“戦友”を失うような気持ちがあるのだろう。
60年間変わらぬ不変性 楽しさもうれしさも、時には悲しさ寂しさも共有できる場
実際、放送開始60年ともなると、「親子3代で見てます」というパターンも珍しくない。もはや子育てを経験する誰もが“通る道”である『おかあさんといっしょ』だが、一方では通常の番組放送枠から飛び出していく“変化”もあった。
2013年以降、さいたまスーパーアリーナなどの大型施設のスペシャルステージや、全国のシネコンで公演を生中継するパブリックビューイングなどを開催。ライブを楽しんだり、現地に行けなくてもリアルタイムでステージに参加することができるようになった。
2018年9月には、初の映画『映画おかあさんといっしょ はじめての大冒険』が公開され、同年末の紅白歌合戦では「夢のキッズショー」と銘打ち、『おかあさんといっしょ』のメンバー(人形たちも含む)が登場してお茶の間を盛り上げた。60年を経た今も、“おかあさんといっしょワールド”はますますの広がりを見せているのである。
出演者=戦友という信頼関係 リアルタイムの子育てをSNS世代が拡散
もちろん、『おかあさんといっしょ』の人気はうたのお兄さん・お姉さんだけに支えられてきたわけではなく、小林よしひさによる幼児も参加するダンスコーナー『ブンバ・ボーン』は番組後半の最大の見せ場であったし、上原りさの『パント!』も各コーナーをつなぐ重要な役割を果たしていた。
さらにTwitterのタイムラインなどでは、今回の新しい体操のお兄さん・お姉さんへの「まことお兄さん(福尾誠)の上腕二頭筋最高」、「お兄さんお姉さんに新コーナーできた!」などの応援メッセージも多く、こうした新メンバーに対する期待感も、先人たちが視聴者とともに培った(子育てを共にこなした)“戦友”としての信頼関係があるからこそだ。
また、先日、小林よしひさが自身のブログとTwitterアカウントを開設したことが話題になったが、現役当時は子どもたちの夢を壊さないようにするため個人のSNSの発信は許されておらず、民放番組への出演も制限されていたことは事実。だから本来は、『おかあさんといっしょ』はSNSとの親和性は決して高いとは言えない。しかし、世代が移り変わっても基本的に“子育て”の苦労は同じ中、番組の“変わらない”内容やスタンスは、いつの時代の“親”や“子ども”たちにも同じように響くのであり、SNS全盛の今だからこその“共有感”も拡散されていく。
実際、子育ての中で夫(もしくは妻)がいない時間帯、『おかあさんといっしょ』を見ながら子どもも楽しく踊っていることもあれば、グズっているときもある。そうした時間をいつも共有してくれるのは番組に出ているお兄さん・お姉さんであり、SNS上の“同志”なのだ。『ブンバ・ボーン』に参加しても人見知りしてポツンとしている子どもを見れば、(ウチの子もこんな感じかもな…)と思ったり、後になってもお兄さん、お姉さんの歌や踊りに触れると、当時の子育ての苦労が思い出されたりもする。
『おかあさんといっしょ』はこれからも変わらず、そんな親たちの思いを乗せながら次の世代へと引き継がれていくのだろう。